2009年生まれ、イギリス出身。2015 年にTVドラマ「法医学捜査班 silent witnessシーズン 18」にて俳優デビュー。ドラマ『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』(17年)、『トロイ伝説:ある都市の陥落』(18年)、『風の勇士 ポルダーク シリーズ5』などに出演したほか、ベネディクト・カンバーバッチ主演作『エジソンズ・ゲーム』(19年)では主人公の息子役を演じた。本作のジェシー役では英国アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたほか、ロンドン映画批評家協会の若手イギリス/アイルランド人俳優賞、ワシントンDC映画批評家協会賞のベスト・ユース演技賞を受賞。今後はアンドレ・ウーヴレダル監督作『Last Voyage of the Demeter(原題)』、サミュエル・ボーディン監督作『Cobweb(原題)』の公開が控える。画像/(C) Maggie Shannon
ホアキンから「真の役者になれた」と言ってもらえました
「バットマン」シリーズに登場する最悪のヴィラン“ジョーカー”の誕生秘話を描いた『ジョーカー』で主人公を演じ、その狂気の演技でアワードを席巻したホアキン・フェニックス。徹底的な役作りで知られ、ソリッドな役柄の印象のある彼が『ジョーカー』の次に選んだ作品が、マイク・ミルズ監督とA24がタッグを組んだヒューマンドラマ『カモン カモン』(4月22日公開)だ。
ホアキンが演じるジョニーは、NYを拠点にして活動するラジオジャーナリストで、アメリカ各地に出かけ、子どもたちにインタビューをして回っている。LAに住む妹とは母親の介護問題がもとで疎遠になっていたが、やむを得ない事情で妹の1人息子である9歳のジェシーの面倒を見ることに。数日ながら初めての子育ては驚きと発見の連続で、ジョニーはジェシーとかけがえのない時間を過ごし、自分を見つめ直すきっかけをもらう。ミルズ監督自身の子育て経験から生まれたこの物語では、デトロイト、ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオリンズの四都市をめぐるジョニーの旅が美しいモノクロ映像でつづられる。
あのホアキンにして「いろんな意味で僕のガイドになってくれた」と言わしめたのが、ジェシーを演じたウディ・ノーマン。監督、主演男優ともに唸らせる天才ぶりをみせた彼に、撮影について振り返ってもらった。
・ホアキン・フェニックスが全米各地の子どもたちに台本なしインタビュー!?
ノーマン:役をもらえると思っていなかったので、最高に嬉しかったです。アメリカに渡るためのビザを取得するのに3ヵ月くらいかかりましたが、その時間が長く感じられました。
ノーマン:ジェシーはすごく内向的だけれどカリスマ性があって、大人のような子供だと思います。年齢よりも知性がずっと高い少年なんです。演じる上で意識したのはまず声ですね。声のトーンをできるだけ抑えて話すようにしました、ジェシーはそういう少年だと思っていたので。その一方でエネルギッシュな部分もあるので、感情が高まった時には声を張り上げて出すとか。そんなことを念頭に置いて演じるようにしました。
ノーマン:一番大切なのはキャラクターになりきることです。それはオーディションだったり脚本を読んだりして訓練していくことだと思うんですけれど、感情をどう表現するかで難しいシーンももちろんあります。そういう時は母親と一緒に外に出て観察したり、話し合ったりして、現実の世界をいかにそのシーンに当てはめていくかということを考えながら演じるようにしています。
ノーマン:薬局のシーンですね。歯ブラシを買うシーンなんですけれど、日常で友人に対してとか演技でも“声を荒げる”ということにもともと抵抗があって。5テイクぐらい撮ってやっとあの“怒り”を表現することができたんです。それでOKが出た後に、ホアキンから役者として一皮むけたなと。「真の役者になれた」と言ってもらえました。
ノーマン:僕自身も変な癖だなとは思うんですけど 、でもジェシーとしてあのシーンを演じたのはとても面白かったですし、彼がいかに存在な特別であるかを示す意味でキャラクターの人間性をよく表しているのかなというふうには思います。
ノーマン:マイクは素晴らしい監督です。彼は人の話をよく聞いてくれるのですが、 キャラクターについて変えたい時はそれがシーンの流れに合っていればOKしてくれますし、「ジェシーならこうするだろう」と言えばそれを取り入れてくれたりもします。役者であれば一度はマイク・ミルズと仕事をするべきだと思いますね。
ノーマン:ちょうど『ジョーカー』が公開されていた頃だったのでホアキンのことは分かっていましたし、『グラディエーター』なども知っていました。当時は彼だと認識してはいませんでしたが、彼の映画で見たのは5歳の時の『ブラザー・ベア』だけですね。 “大スターと仕事をしているんだ”と圧倒されないように、今回の撮影中も母から過去作を見るのは禁じられていました。ホアキンとは監督のスタジオで初めて会いましたが、その時に彼はパジャマを着て出てきて、それがすごく面白かったです(笑)。
奢ることなく “ちょっと幸運に恵まれた役者”という気持ちを持ち続けたい
ノーマン:出演はできなかったんですけれど数年前に別の役のためにアメリカ英語のアクセントを練習したことがありました。その時にベースはできていたものの今回は慣れるのに時間がかかりましたし壁にもぶつかったんですが、繰り返し練習するうちに第二の母国語のように話すことができるようになりました。ホアキンとの初対面では最初にアメリカ英語で話し、途中からイギリス英語に切り替えたらすごく驚かれて(笑)。監督もイギリス在住のアメリカ人だと思っていたらしく、とても衝撃を受けたそうです。
ノーマン:目標にしているのはティモシー・シャラメです。作品選びが上手だと思うし、彼が出演している映画を見て僕自身がっかりした覚えがないので。将来像としては「自分は誰よりも偉いんだ」と思っているような人物にはなりたくないですね。イギリス出身の“ちょっと幸運に恵まれた役者”という気持ちを忘れずに持ち続けていきたいと思います。
ノーマン:自分自身とても情熱を傾けて作った作品です。それがやっとこうして完成して、人々に見てもらえることは驚くべきことですし、自分が大画面に写っているのを見た時は感激しました。皆さんに本当に楽しんでもらいたい作品ですし、監督と俳優が作品に込めた想いをぜひ感じてもらえたらと思います。
(text:足立美由紀)
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