987年6月25日生まれ、神奈川県出身。2011年にKis-My-Ft2のメンバーとして「Everybody Go」でCDデビュー。グループ活動の他に、『A-Studio+』、『キスマイ超BUSAIKU!? 』、『10万円でできるかな』など多くのバラエティ番組やCMで幅広く活躍している。役者としてもドラマ・映画・舞台に多数出演しており、近年の主な出演作はドラマ『ミラー・ツインズ』(19年)、『やめるときも、すこやかなるときも』(20年)、『華麗なる一族』(21年)、Webドラマ『ConneXion』(21年)、映画『MARS〜ただ、君を愛してる』(16年)など。ドラマ『ハマる男に蹴りたい女』が1月14日より放送スタート。
『そして僕は途方に暮れる』藤ヶ谷太輔インタビュー
恋人から、親友から、家族から逃げる男を命がけで演じた
この映画を経て、自分のキャパを知ることができました
『娼年』『愛の渦』などの三浦大輔監督が、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔を主演に迎えた『そして僕は途方に暮れる』。2018年の同名舞台で組んだ2人が、映画として新たに世界を作り上げた。
自堕落に毎日を過ごすフリーターの菅原裕一は些細なことで相手と気まずくなると、向き合うことなく逃げ去る。恋人に、親友に、家族に対してそれを繰り返し、ついにはスマホの電源さえも切って放置するに至った彼の行き着く先とは?
舞台と映画で2度、裕一を演じた藤ヶ谷本人は、記者たちをジョークで笑わせながら、作品のテーマや魅力をしっかり伝える。だが、そつなくこなすのではなく、ときには驚くほど率直に心の内も語る。作品について、“逃げる”ということについて、そしてアイドルとしての自身についても語ってもらった。
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藤ヶ谷:映画化の話をいただいた時は、「また、裕一ができるんだ」とまず思いました。同じ役をまたできるのはそんなにないことなので、そこに一瞬の喜びはありましたけど、舞台であれだけしんどかったから、この三浦組が映像となった時に……と想像して(笑)。死にに行くような覚悟が要ると思って、めちゃめちゃテンション下がったのは覚えてます(笑)。でも、この作品で僕のお芝居を初めて見る方もいらっしゃると思うと、すごく楽しみです。どう受け取ってくださるのかと思って。だから絶対見てほしいですね。
藤ヶ谷:舞台の時にできていなかったところも、大きく見ればあると思いますけど、不思議とその後悔が残ってたわけじゃなくて。毎日120%以上の思いでやっていましたから。
今回は、舞台の千秋楽よりはいい状態からスタートして、さらに良くしようということでした。撮影初日はやっぱり、舞台から3年空いたので、裕一を取り戻すまでに最初のシーンをかなりの回数で演じて、「あ、来たな」というところからのスタートでした。
自分は現場で映像チェックしないんですが、完成作を見たら、逃げれば逃げるほどやつれて疲弊していく感じが、役作りで計算して出したというよりは、三浦組を経験したから出ちゃったというか(笑)。それはすごく良かったです。
藤ヶ谷:めちゃめちゃ出ましたよ。
藤ヶ谷:言える範囲で(笑)。まず、コロナ禍だったので打ち上げがなくて。それまでは当たり前に打ち上げがあって、そこでなんとなく演じた役からの解放もあったんですが、それ(解放感)もなく、次のスケジュールも決まっていてリフレッシュすることもなく翌日から、Kis-My-Ft2のライブのリハーサルが始まりました。
撮影期間中の1ヵ月半くらいはあまり寝てなかったんです。現場はやはり戦場なので。裕一という役は逃げまくるわりに、現場では一切逃がしてくれなくて(笑)。裕一、いいなって何度思ったことか(笑)。「ちょっと車の中で休憩します」と言って、移動車の鍵もらって車運転しちゃおうかな、と思ったりしました。そんな感覚は今までなかったんですが、撮影が終わってそこから次の仕事があったとき、なんだか心が動かなくなっちゃっていた。それだけ役に向き合えたんだと、自分ではプラスにとらえてますけど、メンバーやファンの皆様にはすごくご迷惑おかけしたと思っています。
映画は約2年前に撮ったんですが、すぐに情報が発表されたら、ファンの皆様も「あ、このドラマか」と分かるけど、そうではなかったので。俺はネットを一切見ないから、どう思われていたかも知らないですけど、とにかく心からお詫びしたいです。できない状態だったのに、タイミング的に「映画を撮ってました」とも言えなかった。グループ活動できないなら、ソロ活動やるなよ、というのが答えだと思います。この映画を経て、自分のキャパを知ることができました。グループ活動に支障が出る量のソロ活動はしない、とマネージャーにも伝えました。
だから、支障は出ちゃいました。出さないのが1番良かったですけど、出てしまいましたね。
藤ヶ谷:そうですね。それで気づけたことがある、とプラスに取りたいです。たぶん年齢もあるし、キャリアもあるし、そういう時期だったのかなとも思います。
藤ヶ谷:どうですかね。でも半年ぐらい、なんかおかしいなって思っていました。
自分で言うのも変ですけど、もっと優しいはずなのになって。もっとコミュニケーション取れるのにな、とか、もっと人が好きなはずなのになって、終わってから半年ぐらいそういう感覚がありました。俺ってこんな人だったかな、なんか冷たい。こんな温もりのない人だったかな、と。でも、なぜこうなっているのかわからない。余裕がないと、きっとそうなっちゃう。心の中に余白の部分と遊び心みたいなのは常にないと、自分はダメなんだなと思いました。
藤ヶ谷:相手がいるお芝居はやっぱり、自分1人で台本を読んでいる時よりも幅がとにかく広がります。相手のお芝居で自分も変わる面白さがあるんです。1人じゃ絶対できないものを、ほかの人との出会いとか縁で、知らなかった自分を引き出してもらえる。その逆もありきです。救われるっていうのもあるし、そういう面白さ、知らない自分に会える面白さはある。……(少し考えて)でもきっと、それだけじゃダメで。「現場で楽しかったです」だけではダメで、それを見てもらって判断していただく。その難しさと面白さですね。
藤ヶ谷:要は、答えを出さないでほしいということなんですよね。例えば、成長したとか、この状況を楽しんでるとか、かっこよくなったとか。そういう答えを出さないでほしいと言われて、そこは自分もわかっていました。でも真顔で向くと、意味が出すぎちゃう。無の表情で振り向くと、「答えがないですよ」を提示しすぎちゃう。その時に三浦さんに「イメージとして日本語の辞書に書いてない感じがいいんだよね」と言われて。そもそも辞書読んでないし(笑)、本当にタイトル通り、途方に暮れるんだろうなと思って。何回目のテイクかわからないですが、急にOKが出て。ずっと「もう1回」と言われたらリセットして作り直すのを繰り返した挙句、自分でも何がOKだかわからなかったけど、きっとその時の感覚を三浦監督は引き出してくれたんだと思います。だから、もう1回同じことやれと言われたらできないです。
命をかけて撮影した2ヵ月を一言でまとめるのは難しい
藤ヶ谷:ないです(笑)。2発も多分ない。4からぐらいじゃないですか。風景から撮る場合なら。人物が入っちゃうと絶対ダメ(笑)。
藤ヶ谷:1発目は1発目の良さがあるんですよね。新鮮さと爆発みたいな。2発目の方が俳優もちょっと落ち着いてコントロールできるけど、新鮮さは1発目よりはない。それを10回繰り返して、これがラストと言われると、1発目より良くなる人もいるし。
ワンテイク目を使ったシーンもあって、監督の中では120点出たと言われました。あの時は珍しく、「もう1回」が聞こえなくて、カットがかかって、なんかシーンとなったんです。「カット」の後に間があいて、三浦さんが来て「120点が出た」とすごく喜んでくれて。で、俺は「あ、ついにワンテイク目オッケー出たか!」って思ったら、「よし、あと8回頑張ろう」って言われて(笑)。血の気がひく感覚はそれまであんまりわからなかったんですけど、わかったというか。150%以上の力を出したつもりだし、引き出してもらった気もしたのに、「あと8回」って言われて、スーッと倒れそうになったことを覚えてます(笑)。あれは監督の中ではイメージが違ったらしいですけど、監督が自分のイメージと違うのを曲げてOKにしたのは初めてだと言っていました。あれだけこだわってきた監督が「藤ヶ谷くんの考えたこっちだな」とあのテイクを選んでくれたのは嬉しいですよね。
藤ヶ谷:めちゃめちゃありますね。僕はアイドルですけど、お芝居をやらせていただいて、見ていただきます。言い方が難しいですが、観客の大半の方はお芝居をされた経験はないけれど、いろいろ見ている方です。そこにしっかり届けないといけない。その方々の心を動かさなきゃいけない。それぐらいの芝居をしなきゃいけない難しさはありますけど、演じる側として僕は、例えば数字(視聴率や興行収入など)が低いことは気になってなくて。これは極端な話ですが、数字はめちゃめちゃいいけど、中身がぐちゃぐちゃしてるチームより、数字は悪かったけど、出会って良かったとか、この現場は楽しかったと思えることが個人的には大事です。でも、作品を続けてくためには数字も取らなきゃいけないですが、ちゃんと気持ちを込めてやったものが、結果的に良ければいい。今回はもう本当に命を削ってチームでやったので、今はより多くの方に見ていただけるように、そこまでが自分の仕事だと思ってます。
藤ヶ谷:本当ですか? それは嬉しいです。客観的にテレビや雑誌を見ていて、この映画の魅力を一言で、みたいなことがありますが、出ている方としてはそれを一言でまとめるのは難しいですよね。命をかけて撮影した2ヵ月を例えば10文字で、というのは難しいけど、書いていただきやすいように話すことは、ジャニーズ事務所で学んだ感じはありますね。ただ、自分もサービス精神で言いすぎてポップになりすぎちゃうことはあります。サービスで言ったものの方を取り上げていただけることが多くて、失敗したな(笑)みたいのはあります。
藤ヶ谷:舞台の時も全然わからなくて。クズっぽくやればいいのかなと思っても、コメディじゃないんで、「クズっぽくやってま〜す」じゃなくて。本当のクズじゃないといけないんです。彼なりに一所懸命真摯に生きているのが、周りから見たらクズで滑稽に見えて、笑ってもらわないといけないのがすごく難しくて。舞台の時はなかなかつかめずにいました。なんでこんなできないのかな、と思っていた時に、三浦さんをやってみようかなと思って。そうしたら裕一に近づくんじゃないかなと思って。そこから三浦さんを観察して、三浦さんになってみたんですよ。そしたら、ある日「あ、なんか掴んできたね」と言われて。「クズっぷりがいい感じになってきた」と言われたから、俺は「ありがとうございます」と言いながら、内心、あ、やっぱり三浦さんってクズなんだなって(笑)、冗談ですが。
でも、全てじゃないですけど、「菅原裕一は僕のような人だ」と本人もおっしゃっていたから、三浦さんになってみようと思ったら、なんとか行けました。
藤ヶ谷:現場でも逃げたかったですけど(笑)。裕一だったら逃げてるだろうな、と何回も思ったんですよ。でも逃げたとして……やっぱり瞬時に色々考えるじゃないですか。本当に現場から逃げたら、大変なことになる。グループにもどうやって説明すればいいかわからないし、途中で改心して戻ろうとしても、戻り方の表情や言葉って、めちゃめちゃハードル高いなと思って(笑)。きっと誰もがそれを考えてるから、みんな逃げないだけであって。「逃げたい」「行きたくない」なんて願望は誰でもあるけど、裕一はそうなったらそう動いてしまうかっこよさがありましたね。結局俺は逃げられなかった人なんで、それで終わりだけど、逃げた人には逃げた人のストーリーや世界がある。裕一のことは面白い人だなって思う。ちょっと友だちになってみたい感じありますけどね。飯に誘っても、まあ来ないっていうのを前提に誘うみたいな(笑)。来ないからって、怒んないし、来たら来たで、毎回出席するやつよりありがたみがあって。人間の不思議なところですよね。毎回来るとか平均的にできるやつのありがたみはみんなないくせに、たまに来たら「おお?」とかって、そっちをフィーチャーするじゃないですか。なんかあの感じ、いやですね(笑)。クズの方が評価される(笑)。頑張ってる人の方が評価されないっていう(笑)。
藤ヶ谷:やっぱりグループ活動が基本的に自分の中であって、グループに還元したいんです。例えばこの作品を見て、「あ、この人、キスマイってグループの人なんだ。じゃあ見てみようかな」となってほしいという思いはあります。
以前は「バラエティやる時間あるんだったら、お芝居やりたい」と思っていたんです。でも、自分はジャニーズにいるならば、ある程度のクオリティは全てに於いてクリアしていないといけないと思うようになりました。
何か突出してる人の方が、何でも器用にこなすより可愛げがあるふうに見えるのも理解できますが、納得いかない部分があるというか。僕は必死に全部を上げようと努力しているので。MCのお仕事やミュージカルなどもいろいろやらせていただいている今は“表現をする”という1つの大きな括りにしています。例えば、お芝居がすごくうまいとされる俳優さんにはできないリズムが、バラエティをやっている自分にはもしかしてできるのかな、とか。MCをやっていれば、聞く力はお芝居に活かせるのかな、とか。知っていただくチャンスというのは細いけど、いっぱいあると思っているので、全てを大事にして表現する。そうすると、MCもバラエティもやってる自分ができる芝居というのが、きっと、死ぬ前ぐらいに見つかんじゃないかなって。「やってて、よかった。全部手放さずにやっていて、よかった。自分にしかこれができないんだ」と言って、死ねたらいいな、と。今は模索中ですね。
・三浦大輔の過去作予告編はコチラ→[動画]松坂桃李が女性たちの欲望に極限まで挑む『娼年』特報
(text:冨永由紀)
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