1992年9月30日生まれ、アメリカ、ニュージャージー州出身。『Afterschool』(08年/日本未公開)に主演し俳優デビュー。『アナザー・ハッピー・デイ』(11年)ではエレン・バーキン、デミ・ムーアらと共演。その存在感と演技力で脚光を浴びた。『少年は残酷な弓を射る』(11年)で、ブロードキャスト映画批評家協会賞の若手俳優賞などにノミネートされるなど多方面から高い評価を得ている。
心のかみ合わない母と息子の壮絶な日々を描いた衝撃作『少年は残酷な弓を射る』。このなかで、父親や他人には天使のような笑顔を見せるものの、母親にはすさまじいほどの反抗心を見せる息子を演じたのがエズラ・ミラーだ。
傍目には、妖しいほどに美しく賢い完璧な息子。だが母親にとっては悪魔のような存在であるケヴィンを見事に演じきったミラーは、母親役を演じた名女優ティルダ・スウィントンを相手に圧倒的な存在感を発揮し、高い評価を得た。そんなミラーに話を聞いた。
ミラー:ケヴィンはとても頭が良く、赤ちゃんのときから周囲を認知する能力が人並み外れて高かったから、両親と自分の力学にも気づいてしまうんです。母親の自分に対する行動が心からのものではなく虚構なのだと気づき、母親に“いい母親”であるふりをさせません。彼は誠実な母親の愛情が欲しかったんだと思います。
ミラー:ケヴィンの“悪”の部分を追求するようにしましたが、単純な悪魔的存在になってしまうことは避けたかった。そうなると、伝わるものも伝わらなくなってしまうので。僕自身は母とはとてもいい関係で何でも話します。でも、ケヴィンを演じているときに幼い頃のことを思い出したんです。それは幼稚園のころで、車で迎えに来てくれた母が「今日、幼稚園はどうだった?」と聞くので、一所懸命、幼稚園でのできごとを話していたのですが、ふと母を見たら、僕の話を聞いていませんでした。そのとき僕は激怒したんです。母は振り付け師で3人の子を持つワーキングマザーだし運転もしていたから大変だったんでしょう。子育てが苦労の連続だということが、今は分かります。
ケヴィンの場合は、本当は無視されて愛されていないのに、母親は見せかけの母性愛で接していたらどうなんだろうと考えながら演じていました。愛している振りはしているけれど、実は捨てられたも同然だと怒るでしょう。人間は本能的に愛されるものだと思っているので、親の関心が自分に向けられていないと感じる子どもは、どんな怒りを持つでしょうか……。親に注目されずに育った子は、何をしてでも注目を浴びたいと思うのではないでしょうか。ケヴィンもそれは同じなんだと思います。
ミラー:最初は、コロンバイン高校など、近年起こった事件を調べたりしましたが、そういうことではないなと思い、1人でじっと、ケヴィンの生まれたときから今までの人生を考えました。
ミラー:もちろん、ケヴィンがああなったのは、母親と同じくらい父親にも原因があります。みんな、悪いことが起きたときには母親にすべての罪を着せようとしますが、本当にそうなのでしょうか? 他の人には責任がないのでしょうか? この映画の場合、父親にも原因がありますよね。母親は息子の悪いところしか見えない。一方、父親は、息子を愛しすぎ、いい子であってほしいと願うあまり、現実が見えない。愛で盲目になっている父親は、ケヴィンと母親の戦いのなかではちっぽけな道具にすぎなかったんだと思います。
ミラー:最後に2人が抱き合うシーンで、母が身体を揺らして泣いていました。そんな姿を見たのは最初で最後でしたね。
ミラー:僕自身の反抗期は13歳のときだと思います。すべてのことが一瞬で嫌いになって、周りから何か言われると、すべて上から目線に感じてしまうんです。「何言ってるんだ! クソッ!」っていう感じになってしまう、パンクが好きな共産主義者でした。僕は3人姉弟の末っ子で、2人の姉の反抗期を経験している両親には、姉たちよりもハードルを上げないと反抗していると認知されないと思ったので、結構強く反抗しました。
ミラー:あんなにスゴイ演技をする人なのに、実際はすごく温かくて愛情深い女性です。感受性が鋭くて常にオープンで、今まで共演したどんな人よりも大きい人でした。演技中は、その場でどれだけ振り切れるかが重要だと思いますが、ティルダは「用意スタート!」と言われたとたん、パッと役に入る集中力がスゴイんです。僕はメソッドタイプの俳優だったので、この役を演じる間は、オフのときでもティルダと険悪でなければいけないと思っていたのですが、彼女は違ったし、僕を信じてくれた。とても勉強になりました。
ミラー:世間は俳優をセレブと一緒にしてしまうところがありますよね。でも僕は、映画は多くの人が関わって作り上げるものだから、俳優もスタッフの一部に過ぎないと思っています。たまたま顔が出ているから代表しているかのように目立ってしまい、人々は俳優をセレブのように賛美してしまうのかなと思います。でも、自分の本質ではなく表面でジャッジされるのはつらいですね。特に子ども時代は、周りからイメージを押しつけられ、そのイメージに合わせないといけないんだと思っていました。それが怖いですね。そういうことに影響されてしまいそうなときは、顔を知られているということには何も意味がないんだと自分に言い聞かせていました。今は、他人が自分をどう思うかということは気にしていません。
ミラー:音楽も演技も自己表現。映画も演劇も、同じ自己表現です。
ミラー:将来のことは秘密です(笑)。僕がインディペンデントな映画に向いているのは確かだと思うけど、インディペンデントでも質の悪い作品には出たくないし、メジャースタジオだからやらないというわけでもありません。クオリティで選んでいきたいですね。
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