『アルバート氏の人生』グレン・クローズ インタビュー

19世紀のアイルランド、高級ホテルのウエイターとして働いてきたアルバート氏には、決して明かせない秘密を抱えていた。その秘密とは、女であること。

14歳のときに男になりすましてホテルの職を得、以来、誰にも関わらないようひっそりと生きてきた「男」が、心の奥深くにしまい込んでいた「女」を解き放つ様子を描いた『アルバート氏の人生』は、名女優グレン・クローズが映画化を熱望、自らがプロデューサーとなり奔走した末に完成したユーモラスな感動作だ。

主演も兼務したクローズに、本作に注いだ情熱について語ってもらった。

──1982年に舞台でアルバート役を演じて以来、映画化に情熱を傾けてきたそうですが、この作品の何がそこまで魅力的だったのですか？

クローズ：舞台で演じていたとき、この作品は、人生を理解しようとしている主人公のとてもシンプルなストーリーだと感じたの。そういうシンプルなストーリーには、どこかとても感情的なパワフルさがあるの。だから、正しく映画化すれば、この物語はもっとパワフルでエモーショナルで、心が満たされる作品になると信じ続けてきたの。

クローズ：私は「彼女」にとても感動したわ。基本的に物事を知らず、自分を哀れんだりもせず、夢を持っている。そういうキャラクターはどこかとてもパワフルで感動的よ。それに、「きっと何かが起きる」と思えるストーリーで、驚きがあるわ。そういった部分が素晴らしいと思うの。

クローズ：30年間、演技の技術を学んできたわ。ええ、本当に。だって、とても難しい役だから。それから、クローズアップがいかにパワフルかを学んできたの。30年という月日は私にとって、アルバート役を演じるのに必要な時間だったと思うわ。

『アルバート氏の人生』
(C) Morrion Films

──念願が叶った感想は？

クローズ：とても良い気分（笑）。確か5年前だったと思うけれど、プロデューサーのボニー・カーティスにあったときにすべてが変わったの。私は彼女に脚本を渡して「死ぬ前にこの役を（映画で）演じたいの」と言い、映画作りが動き始めたの。それまでに私はすべてのインディペンデント映画の会社に当たっていたんだけど、彼女はどこからお金を引っ張ってくるかということについて型にはまらない発想ができるの。最終的に制作費を集めることができたのは、ボニーの独創性と、ちょっとしたヒラメキのおかげ。
　結局、製作費はハリウッドからはまったく出ていないんだけど、今は、私たちがやっていることに興味をもつ人たちがもっと増えていると思うわ。
　この映画を作ろうと思ったとき、私は決して諦めないと決心したの。まず、女優であることは信じられないくらい厳しいことで、すごくたくさん拒絶される。自分がやりたいと思うことをいつもできるわけではないし。でも、将来「ああ、あの映画ができていたらステキだったでしょうに。素晴らしい映画になったと思うわ」なんて言いたくなかったの。

『アルバート氏の人生』
(C) Morrion Films

クローズ：彼らは素晴らしかったわ。最初、ミアは内気なところがあったの。一方でアーロンは積極的だった。リハーサルでは、彼は彼女をつかんでキスしたわ。ミアは戸惑っていたけれど、あのリハーサルはとても役立ったわ。なぜなら、同時期に脚本の手直しをしていたから。
　とにかく2人にはとても感心したわ。普通、注目若手俳優の事務所は、彼らに『アルバート氏の人生』みたいな映画はやらせたくないものなの。もっとお金を払ってくれる映画に出させたいからね。でもミアとアーロンは、この映画に出るために大作を断ったの。それはとても珍しいことね。でも、彼らがどれほど演技力を磨くことに真剣かを示しているわ。だから私は2人をとても尊敬しているし、彼らが仕事しているところを見るのが大好きだったわ。

クローズ：面白いと思える役とストーリーを見つけ続けたいわ。そして、自分でも書きたいの。自分で書きたい脚本があるのよ。私が子どものときに聞いたストーリーを基にしたものなんだけどね。

『アルバート氏の人生』
(C) Morrion Films

──日本人、特に女性に向けてのメッセージをお願いします。

クローズ：この映画は女性が何の権利も持っていない時代を舞台にしていて、女性と、社会での女性の立場について描いたかなり意味深い作品だと思います。当時の女性たちは、夫か、使えている家主の持ち物だと考えられていたの。この映画は、人々が生き残るためにどこまでやるのかを描いています。だから、日本のすべての女性がこの映画を見てくれることを願っているわ。自分たちの夫と一緒にね（笑）。