1974年11月9日生まれ。神奈川県出身。00年に映画『五条霊戦記』で映画デビューを果たすと、『ハチミツとクローバー』(06年)、『それでもボクはやってない』(07年)、『重力ピエロ』(09年)、『アウトレイジ』(10年)など国内の話題作ばかりでなく、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(06年)、ミシェル・ゴンドリー監督の『TOKYO! インテリア・デザイン』(08年)、『永遠の僕たち』(11年)など海外の名匠の作品にも意欲的に参加している。
『二十四の瞳』(54年)や『楢山節考』(58年)など数々の名作を世に送り出してきた名監督・木下恵介。彼の生誕100年を記念して制作された映画が『はじまりのみち』だ。
実話を元に、木下監督の映画作りの原点となったものは何だったのかを見つめなおした本作で、木下自身を演じた人気実力派俳優の加瀬亮が、偉大な人物を演じる上で感じたことや、作品に込めた思いなどを語った。
加瀬:今回の話をいただくまで、いくつかの作品は見ていましたが、それほど詳しく監督のことは存じ上げてなかったので、僕自身も今回の作品を通して、監督のことや監督の作品を知っていったという感じでした。だから、よく「プレッシャーはありませんでしたか?」と聞かれることがあるのですが、プレッシャーを感じるほど知らなかったというのが正直なところです。
加瀬:資料を読んだときに、たくさんの面がある方だなって感じました。過激であると思いましたし、純粋であるとも思いました……。原恵一監督と、その都度話をしながら進めていったのですが、撮影をしていくうちに、すごく強い人なんだなと思うようになりました。
加瀬:映画に対する思いももちろんですが、清濁併せ呑むような生き方をされている部分ですかね。覚悟と言っていいのかもしれません。
加瀬:一見すると美談になってしまうような話で、単純に好青年と捉えられてしまうキャラクターだったので、そのあたりは意識しました。監督も「美談にはしたくない」と仰られていたので、ちゃんと立体感のある人物像にしようと話をしました。
加瀬:ありがとうございます。わりと長い距離を長回しで撮っていました。大変そうに見えますが、撮影中は4人(加瀬、濱田岳、ユースケ・サンタマリア、田中裕子)でいることが多く、ユースケさんが中心になって和ませてくれる、とても楽しい雰囲気の現場でした。
加瀬:色々あります。好きな作品は何度も見ます。例えば『スタンド・バイ・ミー』とか(笑)。昔も感動しましたし、見るたびに違った感情がわいてくる作品。映画は変わっていないので、自分の視点が変わっていっているのでしょうね。
加瀬:「映画とはこうだ」と定義したことはありませんが、自分のなかでは切り離せない存在です。漠然と思うのは、普段、人はみんなどんなことを考えて生きているんだろうってことですね。映画は、ある世界なわけで、人がどんなことを考えているんだろうとか、色々垣間見えますね。
加瀬:自分がすごく感動したのは、最後、暗闇のトンネルに向かって歩いていくシーンです。普通、映画のラストは光に向かって歩いていくことが多いのに、今作は暗闇に向かっていったということが、僕にとって良い力となって響いてきました。何も吹っ切れていない、割り切っていない、でも歩き続けることを選んだ。晩年の木下監督は、映画制作に使命感を感じると仰っていましたが、そういう片鱗を見た気がしました。
加瀬:役者は声を掛けてもらって成立する仕事なので、自分がこういう役をやりたいというより、お客さんを含め、人との出会いのなかで、進む道が生まれていくのだと思っています。「明日は明日の風が吹く」じゃないですけれど、流れるままにって感じですね。そういう意味では、今まではとても良い出会いに恵まれていると思っています。また、上手い下手とかは関係なく、その年齢にしかできない役柄はあると思うので、これから年を重ねるによって得られる未知な部分は楽しみにしています。
加瀬:優しそうなポスターなのですが、意外とそうじゃない部分もある映画です。構成もそうですが、これまで見たことのないような過激な部分もある映画になっています。その部分を楽しんで欲しいのと、キャッチフレーズにもありますが、この作品は、ちょっと立ち止まった人の背中を押してくれる映画でもあるような気がします。元気をもらいたいなと思った人にもぜひ見て欲しいですね。
(text&photo=磯部正和)
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