1980年12月3日、秋田県出身。グラビアモデルとして芸能活動を始め、『私の奴隷になりなさい』(12年)で女優デビュー。主な出演作に、ドラマ『半沢直樹』、『ホリデイラブ』、映画『食べる女』(18年)、『星めぐりの町』(18年)など。女優業のほかに、バラエティ、情報番組等への出演、ラジオMCや雑誌などでの執筆活動も行う。
17歳の夏に隣家の男に拉致監禁され陵辱された後、男を殺害して生還するという壮絶な過去を背負った女性・奈緒子。多感な時期のトラウマから抜け出せず、美貌の女医に成長したあとも、夜はM嬢として働く彼女の過去と現在が浸食し合う様を、過激に濃厚に描いたのがエロティックホラー『甘い鞭』だ。
不妊治療専門医として活躍する主人公の現在を壇蜜が、17歳の頃を間宮夕貴が体当たりで演じ、話題を呼んでいる。
セクシーなグラビアアイドルとして人気を博す一方、最近ではバラエティからドラマまで幅広いテレビ番組に出演。お茶の間でも愛されている壇に、本作について話を聞いた。
壇:原作小説は既に読んでいたのですが、渡された脚本は原作と異なるポイントが多く戸惑いました。自分が考えていた原作の世界観と台本の間に感じたギャップをうまく解消させることが出来るのか、最初は心配でしたが、映画を作ってくださる方々のなかに身を投じるだけだと思っていたので、原作者の大石圭先生と石井隆監督の持つ世界観と、スタッフの方一人ひとりが作り上げてくれた世界に入れていただける貴重な経験をさせていただき、とても光栄でした。
壇:現場では自分が人見知りで愛情表現が下手だということをすごく感じました。男性女性問わず積極的に自分から仲良くなるタイプではなく、壁を作りがちなので、17歳の奈緒子を演じた間宮夕貴さんが正直すごく羨ましかったです。社交的で、若くて、自分が持ってないものをすべて持っているような気がして、自分だけ輪の外にいるような感覚がありました。でも、逆にそれが奈緒子という女性が抱える闇を表現する上でのバネになったのだと思います。
壇:まず、何かに捉われている闇の部分や、自分が望んでもいないのに味合わされた辛い感情をずっと引きずってしまう女性だと思いました。ただそれは彼女が愚かなのではなく、彼女が本当にピュアだからこそ、それに捉われた人生を送ってしまったんだと思うんです。事件をきっかけに奈緒子の家族の歯車が狂ってしまったけれども、両親が彼女を愛していなかったわけじゃなく、愛情を1つの事件で違えてしまったために、みんなが寂しい道を歩んでしまった。“なんとかしてあげたい”という気持ちが最初に浮んできましたね。出せるものなら手を、手伝えるものなら何か助けを……という。闇の部分が勝ってしまった奈緒子の人生に対し、自分なりに一筋の光を表現できたら。とても複雑な気持ちでした。
壇:必要であるからこそ描写されたものだと思っていたので、それは見せ場のひとつとして捉えていました。きっと、実生活で恋人にお願いされてするのとは違う感情なんだろうと思っていました。恥ずかしいと思う気持ちも少なからずはあったと思うんですけど、打ち消すことで得るものもあるし、時々感じることで得るものもある。M字開脚とか、普段見せないものを見せているのが恥ずかしいとか、色んな人に見られていることでいつもと違う感情になっていくのもまた大事でしょうし、蝋燭で攻められることも、そこで起きているハプニングに対して身を任せる気持ちの方が強かった。恥ずかしいも、苦しいも、辛いも、全部あったんでしょうね。
壇:幸せになりすぎないことだと思います。そうあるために私も、“幸せな壇蜜”よりも普通の“齋藤支靜加(本名)”に戻ることを大事にしています。
今も自転車でドン・キホーテに行ったり、電車に乗ったり、スーパーに行ったりして、齋藤支靜加に戻るようにしています。本来の立場でいたほうが見えるものってすごく多いんですよね。私、「キラキラしたい」と言っている人が1番嫌いなんですよ。「見てみろ、私はサビだらけだぞ」と言ってギシギシした私自身を見せるほうが、みなさんもきっと惹かれてくれるんじゃないかなと思うんです。だって綺麗なものを見て「ああ、綺麗ね」って思ってもらえることは誰にでもできるけど、錆びついた鉄の棒を見た時って、人によっていろんな捉え方があるじゃないですか。「お酢で磨いてあげればもっと綺麗になるのに」って思ってもらえたら、そのお酢の分だけ好きになってもらえてることだからすごく嬉しいですよね。結局、私は運命的に他人に生かされている。それを忘れてはダメだと思います。
壇:奈緒子の黒い闇の感情のなかに、ほんの一瞬でもいいから美しいものが見えたら、それはとても光栄なことだと思います。人はみな、隠しておきたい闇の部分ってあると思うんです。そこを隠し通すのではなく、気を遣って可愛がってあげることで、女性ってもしかしたら厚みが出て、“魔性”ではないですけど、身に纏うものに何かを加えられるんじゃないかな。
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