1978年8月9日生まれ、フランス出身。幼い頃から女優を志し、96年にテレビ番組でデビュー。その後『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』(99年)で長編映画デビューし、セザール賞有望若手女優賞を受賞。大ヒット作『アメリ』(01年)で世界的にブレイクし、『ダ・ヴィンチ・コード』(06年)でハリウッドデビュー。主な出演作は『スパニッシュ・アパートメント』『堕天使のパスポート』(共に02年)、『ロング・エンゲージメント』(04年)、『ココ・アヴァン・シャネル』(09年)など。
肺のなかに睡蓮が咲くという不思議な病にかかった女性と、なんとかして彼女を救おうとする夫──『ムード・インディゴ 〜うたかたの日々〜』は、切なくも美しい幻想的なラブストーリーだ。
原作は、フランスで“永遠の青春小説”と呼ばれ愛され続けてきた故ボリス・ヴィアンの小説で、『エターナル・サンシャイン』(05年)のミシェル・ゴンドリー監督がポップでキュートな映像作品として映画化した。
夢のように儚いこの物語で愛する2人を演じるのは、フランスのトップ俳優、ロマン・デュリスとオドレイ・トトゥ。無垢な魂を持ちながらも病で衰弱していく女性クロエを演じたトトゥが、本作の魅力を語ってくれた。
トトゥ:自分が成長して大人になった気分だったわ。あの本のファンクラブのメンバーになったような感覚だった。あの本の魅力は、イマジネーション、自由、メタファーな世界で、そのポエティックでファンタスティックな側面は、思春期とか実人生の難しい局面の救いになるわ。
この物語は「人生は不当だ」と言っていて、若者はそこに共感を覚えるんだと思うの。ハッピーエンドなラブストーリーも人気があるけれど、(本作の)コランとクロエのカップルに皆が惹かれるとしたら、それは2人がスウィートでロマンティックで“ロミオとジュリェット”のような絶対的なカップルだからだわ。ただ、彼等の幸福、無頓着さ、希望は(あの病気によって)奪われる。幸せはずっと続いて欲しい。それなのに……だから人生は不当だと感じる。
トトゥ:撮影は大騒ぎで、考えている暇なんてなかったわ。ミシェルは10秒ごとに新しいアイデアを思いつき、役者はそれに応えて本能的に即興で演じる。予定通りに撮影は進まないから、あらかじめ役について考えたり演技の準備をするより、自分を投げ出して己を忘れ、失敗を恐れず状況に身を任せるしかない。その瞬間を生きる。その現実を生きる。それが大事だったの。
トトゥ:小説ではクロエも(夫の)コランももっと受け身で、彼等の描写はあまりないわ。2行くらい外見描写がある程度。シナリオでも2人の人物像は決定づけられていなかったけれど、あまり受動的で純情なキャラクターにならないようにした。原作より2人の年齢が上だから純情過ぎてはおかしいでしょ? 映画のコランとクロエはミシェル・ゴントリー監督と共に作り上げたの。
トトゥ:彼と最初に会ったのは、ポンピドゥーセンターで彼が開いたL’Usine de films amateurs(アマチュア映画工房)に招待されたとき。それから少しして彼が作ったアニメの小品が送られてきたんだけど、理由が分からなかった。映画を準備しているのを知らなかったし、彼のシュールレアリズムは私の理解を超えていたから(笑)。
撮影中はとっても自由にさせてくれたわ。彼はオープンで我々の提案に耳を傾けてくれ、もし失敗してもノープロブレム。子どもが遊んでいるような楽しさがあって、いい撮影だったわ。
トトゥ:そうね。まず、若いときと今回もう一度読み返したときの印象はすごく違ったわ。その違いと同じくらい、本の印象と映画の印象が違ったの。シナリオを読んだら、本を読んで映画化不可能と感じたイメージがそこにそのままあった。それをミッシェルはヴァーチャルエフェクトを使わずにメカニックで実現したいわけよね。もちろんCGを使えば何でもできるけど、ミシェルは使わないと言ってる。
出来上がった映画には沢山のことが豊富に詰め込まれていて驚いたわ。私の先入観を超える発見があって、もう一度見て見ないことには整理がつかないの。ひとつだけ言えるのは「ミシェル・ゴンドリーの脳内には住みたくない」ってこと。詩的であるのは確かだけど、とても疲れそうだから(笑)。
トトゥ:童話の要素、詩的な点、優しくてのん気な雰囲気がベースにあること、フレッシュさが共通しているわね。
『アメリ』を振り返って思うのは、文化の違いを超えて世界中の人に愛されたというのは一種の奇跡ね。あの映画は私にとっては贈り物だったの。衝撃的なことに、あの作品によって1日にして有名になったわ。なんの準備もしてなかったしそれを期待していたわけでもなかったのに、突然、人が私を見る目が変わった。その変化に戸惑ったわ。
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