8年ぶりに再共演の2人が、当時の印象や四苦八苦した中田監督の撮影スタイルまでざっくばらんに語り合う！
『クロユリ団地』の中田秀夫監督がメガホンをとり、山田孝之と藤原竜也という日本映画界をけん引するふたりが初共演を果たしたサスペンス・アクション『MONSTERZ モンスターズ』。すべての人々を目で操る“男”（藤原）と、唯一操られない終一（山田）が出会ったとき、生死を懸けた壮絶な戦いが始まる！
周囲の人々を守るため“男”との対決を決意する終一に扮した山田と、終一と惹かれあうヒロイン叶絵に扮した石原さとみにインタビュー！ 8年ぶりの再共演を果たしたふたりが、中田監督、独特の本番スタートの声掛けについてや、互いの魅力をざっくばらんに語り合った。
──ドラマ『H2 〜君といた日々』以来、約8年ぶりの共演ですね。
山田：8年ですかぁ。
石原：覚えてますか？
山田：覚えてはいますよ、なんとなく。ビンタされたなとか。
石原：ビンタ!?
山田：芝居で、ですよ。
石原：ありましたっけ、そんなシーン。
山田：遊園地でおんぶしたなとか。
石原：あ、ありましたね！ よく覚えてますね。
山田：俺のほうが覚えてる。石原さん、全然覚えてないじゃん。
石原：私は夏の設定の撮影を12月にやっていたので、みんなノースリーブに短パンとかすごい格好で、息が白くならないように氷を食べながら撮影したのを覚えてますね。懐かしい。
石原：当時？ なんだか、手が乾燥してるなって。
山田：（苦笑）
石原：お話しするのは緊張していたのか、手ばかり見ていたんですよ。でも、今回久しぶりにお会いしたら潤ってました（笑）。
石原：してないですね。
山田：そうですね。
石原：明るい物語だったらまた別かもしれませんが、中田組ですし。
山田：集中力を要するので、空き時間といってもボケっとしているよりは、みんなその次のシーンに向けて気持ちを作ったりしているので。石原さんの演じた叶絵なんてしょっぱなからヒドイことさせられてますからね。（藤原）竜也くん演じる“男”に操られて。そういうシーンをずっと撮っているわけですから、「久しぶり〜！」とかって言えないですよ。しかも昔もそんなに喋ったわけでもないですし。
石原：そうですよね（笑）。
山田：今日が一番、話してますね。
石原：監督はとてもお茶目な方なんですけど、気合の入り方は独特なんです。タオルを頭に巻いて、「本番！ ヨーイ！」って言ってから、その役柄の気持ちをとうとうと話してから、スタートをかける監督です。
山田：やりづらくてしょうがなかったですよ（笑）。
石原：わたしは『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』に続いて2作目だったので。
山田：俺も打開策を見つけて演じました。
石原：打開策って!?
山田：最初、きつかったんです。「それじゃ本番行きます！」って言ってから、終一がそれまでにされたことや感情を全部説明されて、そこから、「こうやって“男”と対峙して、はい今の気持ちです、じゃあ、もっと力入れて、目開いて、はい、スタート！」みたいな。その過程って、俳優はみんな全部やってきていることなので（苦笑）。
石原：そうなんです（笑）。
山田：ヨーイって言われて弓を引いているような瞬間に監督が喋り出すから、こっちは弓を引きっぱなしで疲れてきちゃって。どうしようかなと悩んで、監督に言ったんです。きついんですけど、あれは止めていただくわけにはいかないんでしょうかって。
石原：言ったんだ！
山田：そしたら「いや〜、あれは山田くんにというよりは、自分を高めるためにやってるんですよ」って言われて。それでこういう言い方ではないですが、「僕のスタイルだから」というようなことを言われてしまったので、だったらどうしようと考えて上手く利用することにしたんです。
監督が話す一連の流れ、気持ちを終一として聞こうと。自分がツライ状態にあることを、なんで赤の他人にまた言われなきゃいけないんだ！って余計にツライ気持ちにもっていって、どんどん膨らませていったら上手くできましたね。
石原：なるほど〜。
山田：俺、すげーなって思いましたよ（笑）。
石原：監督は泣くシーンのときは、その説明をやらないんです。
山田：あー、確かに。
石原：私、泣くシーンが多かったんですね。だから今回はあまりなかったです。あと明るいシーンでもされないですね。うわ〜って気持ちを込めるシーンで、ぶわ〜って気持ちが盛り上がってお話しになるんでしょうね。なので、私の場合は『インシテミル〜』のときのほうが多かったです。
山田：『インシテミル〜』のときはどうしてたんですか？
石原：私の場合は、前のストロークをやります。その人物の前の動き。あと今回の場合は、iPadで映像を見るシーン。泣くシーンだったので、それほど長い説明はありませんでしたけど、見たところの前の映像から再生してもらったりして。前倒ししてやってます（笑）。
石原：そうですね。“男”と対峙するシーン以外は。その状況に流されて、振り回され、巻きこまれてという役なので。
山田：はい。単純に、仕事を選ぶときには前後1年くらいでどういう作品、どういう役をやったかバランスを見て仕事を選んでいるので、いま“男”の役のオファーが来ていたら、タイミング的に違うなと感じたと思います。
山田：ホント、マジで俺には止めてって言います。あと、やられちゃうだろうから海外に行くなり地方に行くなり、“男”から離れますね。何されるか分からないというか、何やらされてるか分からないですからね。いやですよ。ホント止めてっていいます。
石原：私は後ろに入るかな。
山田：ずっと？
石原：ずっと（笑）。どうにかして目を合わせないように。
──操るといえば、役者さんには人を惹きつけるオーラがあります。おふたりで、お互いにこういうところが魅力的だと評価してもらえますか？
石原：えー、恥ずかしい。なにこれ。どうしよう。
山田：守らなきゃいけない感じとか。だから叶絵の役も合うんじゃないですかね。芯は強いんだけど、身体的にはあんまり強そうじゃないというか。
石原：ちょっと！
山田：明らかに身体的にも強そうっていう人もいるじゃないですか。でも石原さんは、生命力があまり強くなさそうというか……。
石原：えー！ それって、褒められてるのか、けなされてるのか分からない！
山田：いや、芯はあるんだけどさ。でもひとりで離島とかに行ったらたぶんすぐ死ぬだろうなって。
石原：死なないよ！
山田：俺、魚とか取らなきゃいけないだろうなって。
石原：まだまだ私のこと、知らないですね〜。
山田：そりゃ、知らないけど（笑）。
石原：山田さんの舞台「フル・モンティ」を見ても思ったんですけど。
山田：来てくれたんですよ。
石原：なんだか人生を自分のやり方で豊かにしている感じがします。役柄を選ぶにしても、お仕事を選ぶにしても。役柄のなかの人物にしてもそうなんですが、常に豊かな感じがします。楽しんでるなって。
山田：楽しんでますよ。
──最後に本作の楽しみ方、魅力を教えてください。
山田：後半は対決シーンもあって、表情も芝居もすべてが大きくなっていくんですが、緊迫しているのに笑っちゃうところもあるんです。でもそれでもいいと思っていて。特殊能力で操られる人間と、操られない人間がいて、人が死んでいくんですけど笑っちゃうところがある。
この撮影に入る前に『スパイダーマン』とか『HEROES／ヒーローズ』を見たんですけど、覚醒するとそれからの展開はなんでもできちゃう（苦笑）。で、やっぱり笑っちゃった。でも、それでいい。だからこの映画も、そういう感覚で見てもらっていいと思うんです。なぜ、この人はこうなったんだとか、深い真理を追究する必要はない。気楽に見て欲しいです。
石原：山田さんは身体能力が高いので、普通だったら格好良くしてしまうだろうアクションを、人間味のあるものにしていて圧倒されました。それとは逆に藤原さんの冷たい感じ、ちょっと異世界な感じもすごいです。こういう作品は映画館で見てほしいですね。バトルをハラハラしながら見てほしい。自分と照らし合わせてとか共感とかではなく、ただこの世界を堪能してもらいたい。そのためにも映画館で見てほしいです。
（text＆photo＝望月ふみ）
1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。1999年に俳優デビューし、『WATER BOYS』でTVドラマ初主演。その後、映画『電車男』で主演を務め、『白夜行』『世界の中心で、愛をさけぶ』などのTVドラマ、『闇金ウシジマくん』シリーズ、『勇者ヨシヒコ』シリーズなどに出演。映画は『クローズ ZERO』シリーズ（07、09）、『凶悪』（13）、『映画 山田孝之3D』（17）、『50回目のファーストキス』『ハード・コア』（18）などに出演し、19年には主演作「全裸監督」がNetflixで世界配信された。「モンティ・パイソンのSPAMALOT」など舞台でも活躍。18年にドラマ「聖☆おにいさん」で製作総指揮、19年に映画『デイアンドナイト』でプロデューサーを務める。21年、映画『ゾッキ』を竹中直人、斎藤工と共同監督。
1986年12月24日生まれ。東京都出身。第27回ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞。03年、東陽一監督の『わたしのグランパ』（03年）でデビューを飾り、数々の新人賞に輝く。幅広い分野で活躍を続け、今年はテレビドラマ『失恋ショコラティエ』（14年）の好演で話題を集めた。ほか主な映画出演作に『包帯クラブ』（07年）、『インシテミル7日間のデス・ゲーム』（10年）、『貞子3D』『カラスの親指』（共に12年）など。
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