1971年7月21日生まれ。父は歌手セルジュ・ゲンズブール、母は女優ジェーン・バーキン。初主演作『なまいきシャルロット』(85年)でセザール賞有望若手女優賞を史上最年少で受賞。ラース・フォン・トリアー監督の問題作『アンチクライスト』(09年)では衝撃的なヌードシーンを披露しカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。その他の出演作は『小さな泥棒』(88年)、『太陽は夜も輝く』(90年)、『愛を止めないで』(91年)、『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』(01年)、『21グラム』(03年)、『恋愛睡眠のすすめ』(06年)、『パパの木』(10年)、『メランコリア』(11年)など。
『ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2』シャルロット・ゲンズブール インタビュー
女性のセクシャリティに挑んだ鬼才監督問題作で赤裸々シーンに挑んだ仏映画トップ女優
ビョークを主演に迎えカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00年)。世界中に旋風を巻き起こしたこの作品を手がけたラース・フォン・トリアー監督が、女性のセクシャリティに挑んだ問題作が『ニンフォマニアック』だ。タイトルは“色情狂”を意味し、文字通り色情狂を自認する女性ジョーの波乱に満ちた半生を、時に青春映画のように、時にファンタジーのように変幻自在な語り口で綴っていく。
8章から成り全部で4時間という長尺の作品で、『Vol.1』(10月11日公開)と『Vol.2』(11月1日公開)の2部構成で上映される。赤裸々に描かれるセックス描写は衝撃的だが、「ポルノか、アートか」という論争さえも超越した“喜劇”に、誰もが度肝を抜かれるに違いない。
主人公ジョーの成人後を演じるのはシャルロット・ゲンズブール。歌手の故セルジュ・ゲンズブールと女優ジェーン・バーキンの間に生まれ、若くから女優・歌手として活躍。トリアー監督とは『アンチクライスト』(09年)、『メランコリア』(11年)でも組んだ、監督のミューズだ。大胆なベッドシーンも演じた彼女に、本作について、そして鬼才監督について話を聞いた。
ゲンズブール:最初は監督がカンヌで話すのを聞いただけなの。その時は冗談かと思ったわ。『メランコリア』でキルステン・ダンストと一緒にインタビューを受けているときだった。監督が「僕の次の映画はこの2人と一緒のポルノ映画だ」と言ったの。私は茶化しているのかと思ったわ! とてもおかしくて。それからだいぶ後になって脚本を読んだの。
ゲンズブール:興奮したし驚いたわ。どんな脚本か予想していなかったから本当に驚いたの。それにもちろん、怖気づいたわ。ジョーを2人の女優が演じる(*)のは分かっていたけれど、私の出番がいつかわからなかった。とても大きなプロジェクトだったわ。いろいろな面で不安があり自信も持てなかったけど、でもそこが面白いと思ったの。とても豊かで、強烈な脚本だった。どう言えばいいかしら……とても怖くて、エキサイティングで、同時に楽しくもある。この映画を見たときにそう感じたわ。
*少女時代のジョーを新人女優ステイシー・マーティンが演じている。
ゲンズブール:彼女に同意するわけじゃないけれど、彼女のことがとても好きだわ。彼女は人の心を動かす。映画のなかで自分自身を見るのは奇妙だし、こんなふうに話すのも奇妙だけど、彼女をかばってあげたくなるの。それから彼女は人間に対してあまり楽観的じゃないわね。
ゲンズブール:(観客の)思い込みが心配だったわ。いくつかの映像だけを見て、映画全体がそうだと思い込んでしまうことがあるでしょ? そういう狭い了見が怖かった。映画全体を見れば何も問題ない。それどころか、セックスは映画の一部だと思うし、この映画の美しさでもある。これは肉体とセックスの残酷さを描いた映画なの。上品ぶって隠すなんてナンセンスの極みだわ。あるとき、(監督の)ラースが私に尋ねたの。私がセックスしていると人々が信じたとして、私自身の道徳観の限界はどこにあるのかと。私は問題ないと思った。自分がしたことをちゃんと分かってさえいればね。
ゲンズブール:1番奇妙だったのは、“傷”を描いたときね。確か、朝の5時だったわ。傷を描くのに2時間かかった。私はただ立っていたの。係の男性が私の脚の間で作業したわ。とても奇妙だった。私たちはできる限り慎重に作業したわ。私は隠すことができたし、自分で貼り付けることもできた。そうすれば彼に見て欲しくないものを見せずにすむから。でも彼がそこに顔を近づけて、私に色付けしていたことに変わりはないの。あれが1番奇妙だったわ。
ゲンズブール:出会ったときの彼はとても具合が悪そうだった。でも今はずっと良くなったみたい。彼はとてもミステリアスだし、それを保てるなんてステキだわ。彼は私の全てを知っていると思う。肉体的にね。それに私の頭のなかも。開いた本のように私の考えを読んでいる。でも私は彼を読めないの。でも私たちの関係を気に入っているわ。彼にとても感動するの。
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