1953年生まれ。喜劇王チャールズ・チャップリンの四男でレコーディングエンジニア。
喜劇王チャップリンの遺体が「誘拐」された!? 1978年に実際に起きた嘘のような事件を映画化した『チャップリンからの贈りもの』は、人生についていないドジな2人組のマヌケな「犯行」を描いた作品だ。
『黄金狂時代』『街の灯』『ライムライト』など往年の名画名曲名シーンを散りばめた人生賛歌で、チャップリン一家がまさかの全面協力しているのも見どころのひとつ。出演もしているチャップリンの四男ユージーン・チャップリンが映画について、そして愛する父親について語ってくれた。
ユージーン:兄弟姉妹誰もが少し懐疑的でした。あの事件を蒸し返されたくはない、という気分でした。私も反対でした。この話を聞いてまた同じことをやろうとする人間が出てくるんじゃないかと危惧し、蒸し返して欲しくなかったんです。でも、グザヴィエ・ボーヴォワ監督に会うと、実はストーリーは表向きの口実でしかなくて、チャーリー・チャプリンにオマージュを捧げるというアイデアが根底にはあると説明されました。というわけで説得されてしまったんですね。
ユージーン:危険は感じていましたね。というのも、当時は誘拐事件が多発していましたから。それから、誰がやったんだ、なぜなんだ、という疑問が浮かび、暗然たる思いでした。私としては、母を思うと気分が悪くなる心地でした。夫を亡くしたばかりなのに、こんな事件が発生して、その決断は母がしなくてはならなかったわけですからね。つらかったです。
母は身代金の支払には反対していました。しかも遺体に対してですからね。その理屈に母は納得できなかったようです。もちろん、警察は支払うよう働きかけていました。少なくとも、払うふりをした方がいいと。そうすれば犯人を捕まえられるというわけです。警察は、もし払わなかったら、事件は迷宮入りすると思ったんです。
どちらにしても、私たち家族は身代金を払うつもりなど毛頭ありませんでした。身代金要求の後、捜査が停滞する時期があったんです。6ヵ月です。そのあいだに、誘拐犯の方もルーティーンになっていて、いつも同じ公衆電話から電話をしていました。私たちの自宅から20キロのローザンヌの町からです。警察がそのことを察知して、ローザンヌのすべての公衆電話に警官をひとりずつ張り込ませたんです。誘拐犯が電話をしてきた時をめがけて、警官が彼らを逮捕したんです。
ユージーン:誘拐犯が父の遺体を埋めた場所を明かして、母がその場所に行ったわけですが、その一角はまるで楽園のような場所だったんです。森に囲まれ、そばに小川が流れる麦畑に父の遺体は埋められていたんです。全くもって素晴らしい場所でした。
母は、「見つかってしまって残念だわ。彼にとってはお墓よりもここの方がずっと良かったのに」という反応でした。
ユージーン:(住んでいた)スイスにはサーカス団がたくさんあって、毎年1回、私たちの住む街にやって来ます。招待されていた父は、家族全員を連れてくれました。大きなお祭に行く気分でした。(サーカス団には)とてもよくしてもらいましたし、終演後は父がアーティスト全員を自宅に招待していました。当時は動物がたくさんいたんです。覚えているのは熊を連れたロシア人調教師。ある年はワニもいました。子どもの私たちは楽しくて目を丸くしていました。
ユージーン:説明するのは難しいんですよ。というのもごく普通の父でしたから。
父親として当然の関心ごとですが、子どもがしっかり勉強するのを期待する教育熱心な父でした。子どもたちに多くの時間を割いてくれました。昼間は仕事をしていましたが、毎晩、一緒に夕食のテーブルを囲みました。父はいつも「今日は何をしたんだい」「良い点をとったんだってな」点数が悪いと「お父さんは気にくわないな」などと言うんです。家族の時間をけっこう作ってくれていましたね。庭でサッカーを一緒にしたのも覚えてますし、手品をしてくれたりね。私には普通のお父さんという感じでした。
ユージーン:本作は私の父への非常に美しいオマージュになっていて、ぜひ映画館で見ていただきたい作品です。コメディとしても味わい深いですし、チャプリンの映画を今まで見たことがない人でも、きっとチャプリンの映画も見てみたくなるんじゃないでしょうか。そうなれば嬉しいですね。
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