1975年11月生まれ、コネティカット州ノーウォーク出身。南カリフォルニア大学映画脚本課程卒業の48時間前に初めての脚本が売れて以来、脚本家として活躍。『閉ざされた森』(03年/製作も兼務)、『ゾディアック』(07年/製作も兼務)、『アメイジング・スパイダーマン』(12年)、『ホワイトハウス・ダウン』(13年/製作も兼務)などの脚本を担当。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(16年)にも参加している。本作が初監督作となる。
世界の趨勢を左右すると言っても過言ではない米大統領選挙。今年もドナルド・トランプ候補がまさかの躍進を果たすなどニュースが目白押しだが、実話を基に大統領選でのスクープ報道を描いた映画が『ニュースの真相』だ。
2004年、再選を目指すブッシュ大統領が、ベトナム戦争中に父親のコネをつかって兵役を回避したのではないかという軍歴詐称疑惑を、CBSの報道番組『60ミニッツ II』がすっぱ抜いたのだ。だがこの一大スクープは偽造の疑いをもたれ多方面から糾弾されることに…。
21世紀最大のメディア不祥事と呼ばれるこの事件の一部始終を描いた本作を監督したのは、ジェームズ・ヴァンダービルト。有名な鉄道王にして大富豪の子孫であり、『ゾディアック』(07年)や『アメイジング・スパイダーマン』(12年)の脚本家として知られる彼に、記念すべき初監督作について語ってもらった。
監督:もちろんだよ。こんなに素晴らしい、様々なタイプの役者と仕事が出来るなんてラッキーだった。 僕の初監督作品に出演してもらえたらと思っていたから、彼らが「やりたい」と言ってくれた時は信じられなかったよ。
でも、逆に緊張もしたね。彼らは本当に才能あるビッグスターたちだから。でも、ビクビクしていると感じさせてしまったら、彼らに失礼だよね? この映画を選んだこと、僕と一緒に仕事をすることを選んだことを後悔させることになる。だから、そういうことは考えないようにしていたんだ。もちろん、ものすごく緊張してはいたんだけどね。
監督:そういう意味での苦労はなかったよ。引き受けてくれる人を探さなくてはならないから、そこには時間がかかったけどね。
この映画は、ケイト(・ブランシェット)無しでは存在しなかった。 彼女が主演を引き受けてくれた時、実は資金の目処が立っていなかったけれど、彼女が資金調達に一役買ってくれたんだ。その後、ボブ(ロバート・レッドフォード)も参加してくれることになった。でも、ケイトがこの作品を支持して役を引き受けてくれなければ、この映画は存在しなかったと思う。だから、全ては、やりたいと言ってくれた彼女のお陰だよ。 ケイトとボブが参加してくれれば、「この映画は一体どうなるんだろう」と多少不安に思ったとしても、皆、彼らと一緒に作品を作りたいと思ってくれるはず。そうやって皆が、応援してくれたんだ。
監督:見る人に疑問を投げかけるような映画が好きなんだ。そういう作品は魅力的だし、映画好きな一個人としてもやっぱりそういう作品が好きだな。この映画は、CBSのニュース番組をプロデューサーとして長年手がけた女性、メアリー・メイプスの本が基となっているけど、読んだ時には既に映画にすることを考えていた。僕は、この一連の出来事があった時のことを、よく覚えている。アメリカでは大きな話題になったし、連日のように報道されていたからね。でも当時は、映画にしようとは考えていなかった。後に彼女の本を読んだ時に初めて映画にすることを考えたんだ。仕事で頂点を極めたパワフルな女性、そういう彼女の視点から見た出来事を描くことができれば、皆の心に訴える作品になると思った。
監督:実は、彼女とは、あの出来事があった1年後に会っていて、一緒に過ごす時間も多かった。当時の彼女は、まだ非常に傷ついていて、今にもうずくまりそうだったよ。それから9年の付き合いだけど、彼女は、その間に少しずつ立ち上がり、今は少し胸を張って少しずつ落ち着きを取り戻している。見ていて非常に嬉しかった。
監督:そうだね。興味深い出来事は、彼女が受けた批判にもあるからね。興味深いというのは適切な言葉ではないかもしれないけれども……。劇中、彼女がインターネットで自分に関するコメントを読むシーンがあるんだけど、あのコメントは全て本当に書かれていたことで、映画用に作ったものではないんだ。で、その中には、彼女の容姿や、 セクシャリティー、欲求、それから、いかに酷い女であるかということに言及したものがあったのは、彼女が女性だったからだと思う。
監督:希望は確実にあると思う。ジャーナリズムは本当に崇高な職業だと思っている。懸命に取り組み、話を組み立て、調査をし、そして、力を持つ人への疑問を投げかける、そういったことがジャーナリストの肩にかかっているからね。(この事件がきっかけで番組の降板に追い込まれた)ニュースキャスターのダン・ラザーに起きたことは、誰にでも起こる可能性があって、僕にも起こり得ることだ。ジャーナリストは、それでも勇敢に立ち向かい重要な問題を提起する。だから、希望があると思うんだ。しかしながらその立場は危ういものになってきていると思うよ。調査報道という立場が脅かされていることには、注意していかなくてはならないと考えている。
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