1991年7月18日生まれ、福岡県出身。2009年、高校3年生の時に第1回「東京スーパーモデルコンテスト」でグランプリを受賞し、雑誌「CanCam」の専属モデルとしてデビュー。2011年にドラマ『幸せになろうよ』で女優活動をスタートし、翌年に『桐島、部活やめるってよ』で映画デビュー、注目を集める。そのほか多数のCMやドラマ『64』(15年)、『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』(16年)などに出演。現在、ドラマ『バスケも恋も、していたい』(16年)ではヒロインを演じた。今年公開作の『貞子vs伽倻子』でも主演。17年に『ピーチガール』が公開予定。
「人が死ぬ瞬間を見てみたい」。家庭にも学校にも居場所がなく、心に闇を抱えた女子高生の由紀と敦子。親友でありながら、ある出来事をきっかけに気持ちがすれ違い、それぞれ異なる理由から“死”に惹きつけられた2人の夏休みを描く『少女』。
『告白』『白ゆき姫殺人事件』など映画化作もヒットした湊かなえの同名小説を、『繕い裁つ人』の三島有紀子監督が映画化した。2人のヒロインを演じるのは本田翼と山本美月。ドラマやCMでおなじみのキュートで明るい表情を封印し、重いテーマに挑戦した2人に話を聞いた。
山本:私たち、共演4回目なんですけど、2度目の時に私、覚えられてなかったんです(笑)。
本田:それが第一印象(笑)?
山本:そうそう。最初は翼が主演のドラマに、ちょっと出たんです。まだ芝居始めたぐらいの時なんですけど。すごく疲れてるんだって思ったのが第一印象。
本田:もう目の下クマだらけみたいになってた時に会ったんだよね(笑)。私のみっちゃんの第一印象は『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』なんだよね。どんな子だろう。真面目な子かなって思ってました。
山本:あんまり絡みもなかったしね。
本田:そうなんです。今回、4回目でやっとこれだけ一緒にお芝居ができて嬉しかったです。
山本:大きく変わったというのはないんですけど、「初めまして」の微妙な空気感がなかったぶん、仲良くなりやすい環境だったと思います。ちゃんとしゃべったことはなかったけど、本当に正直で素直で、なんでも言ってくれるので、こっちも変な壁というか、女同士の独特な距離感みたいなものは一切なく。不安に思ってること、嫌だなと思ってることも全部言うし、私も言うしっていう感じで楽でした。
本田:私は、演じた由紀に対して、わりと自分と近いものを感じてましたね。高校生の時、結構一匹狼だったので。由紀の、別に孤立しようとしてしてるわけではないけど孤立してるあの感じとか、結構分かるというか。そういうところは共感できましたし、死について知りたいと思ったことは私はないですけど、何か知りたいと思ったら動き出してしまうあの感じも共感できましたし。大切な親友を思う気持ちも、やっぱり理解できますね。
山本:私も。人から一目置かれるような役も結構多いんですけど、。逆にそっちのほうが遠くて。敦子のほうが自分に近いです。高校時代に仲のいい友だちに執着していた部分もあるし。周りの目を気にしていた部分も……それは今もなんですけど、あったので、敦子のほうが近いような気がしますよね。
本田:触発というよりかは、助け合う感じです。
山本:一緒に頑張ろうね、みたいな感覚が多かった気がします。お互いを、この演技はすごい!とか、技術的な部分で見てはいなかった思うんです。
本田:ですね。ない(笑)。でも、敦子が泣いているのを見て、こっちもつられて、助かった部分はあります。相手のお芝居に助けられてることのほうが多いかもしれないですね。
本田:どこ……?(と考え込む)
山本:好きなシーンは、本当に全編通して好きではあるんです。私の場合は、剣道とか潜水とか、技術的な役づくりはいっぱいありました。精神面でいうと敦子はすごく感情の起伏が激しい子です。最初に感情を強く出す保健室でのシーンを撮った時は不安で、監督に寄り添ってもらって、なんとかやり遂げました。由紀が書く小説「ヨルの綱渡り」を初めて読むシーンも時間をかけて、稲垣(吾郎)さんにも付き合っていただいて、じっくり撮っていただきました。
本田:私はモデルルームのシーン。そこで男の人の足を洗ってからの怒濤の流れが。もう今後一生経験することないんじゃないかなっていうような。本当に鳥肌立ってたもん。もう本当に嫌だ、このシーンと思いながら。
山本:際どいシーン多かったね。
本田:そう。ラブホテルとか。私、場所が印象に残るところが多くて。由紀がボランティア活動に行く病院のシーンもそうです。
山本:撮影しかすることがないしね。
本田:そうそう。苦しかったよね。お互い。
山本:うん。いじめられる場面があるんですが、それを由紀に見られてるっていうことが何よりも屈辱というか。
山本:安心できる存在ですね。
本田:うん。救い。
山本:撮影合間にね。
本田:あんまり他の方と絡む機会はなかったかな。
山本:うん。なかったね。
本田:だから、本当に「今日はみっちゃんがいるな」と姿を見るだけで安心できました。
山本:今日はこんなことあったんだよ、とか全部報告してたよね。
山本:本当にこの映画は“女性の監督が作った”っていうそのものですよね。監督はすごく隣に寄り添ってくれる。もう体が触れ合うぐらいそばで、催眠術を掛けるようにいろいろ話してくれて。でも、その距離感って女性ならではなんです。
衣装でも、男の監督だと、妙にふわっとしたのを着せたりとか(笑)。
本田:分かるよ。文字のプリントが入ったTシャツね。
山本:そうそう。17歳の高校生はこんな感じ、と男の人が想像する女の子を作る部分があるんですけど、三島監督は衣装もすごくリアルで。
本田:全部現実的。こちらも共感できるようなものが多くて、説得力があると思います。
山本:うん。リアリティーがあるよね。いじめの仕方とかもちゃんと調査して。
本田:そうそう。ねちねちやっていくあの感じとか、しゃべり方とか、もう全部リアルだったよね。
本田:私はもう仕事を始めていましたけど、まだモデルしかやってなかったです。
山本:17歳って、心はだいぶ大人になってたんじゃないのかな。でもやっぱり未成年だから、できることは制限されているっていうのがあったりとか。制服着てるだけで人の目が気になってしまったりとか、そういう変な時期ですよね。なんとも言えない。
本田:うん。ちょっと独特なんですね。よく分からないけどいらいらしたり、不満を持ったり。何かに「マジむかつく!」とか言ってたり。不思議ですよね。言葉遣いもそうだけど。
山本:事務所には入っていたんですけど、お仕事を始めたのは高校3年生の夏からなので、17歳の時は福岡で、映画と同じく規律が厳しい女子校に通ってました。朝同じ時間に起きて、テレビの占い見て学校行って、遅刻して先生に怒られて。授業受けて、放課後に部活行って帰ってっていう毎日の同じ決まったサイクルがすごく窮屈だと思っていました。
山本:今回に限っては本当にそうだったと思います。本当に17歳だったら、あの狭い空間は表現できないかもしれないです。世界の広さを知らなくて、自分のいるそこが全てと思っちゃってる。その状態では、あの最後のセリフは言えなかったと思います。
本田:そうだよね。やっぱり客観的に自分の17歳だった頃を思い出せて。かつ、それを自分の役に投影できるのは、やっぱり今ならではだったのかなと思いますね。
(text:冨永由紀/photo:中村好伸)
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