1983年、11月25日生まれ、千葉県出身。97年に長尾直樹監督の『鉄塔武蔵野線』で映画初主演を果たす。子役時代から現在に至るまで、映画やドラマなどで幅広い役柄を演じ続けている実力派。15年に公開された『映画 ビリギャル』にて第39回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。ほか主な出演作に『独立少年合唱団』(00年)、『海猿』(04年)、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12年)、『ボクは坊さん』(15年)、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16年)などがある。今後は『今宵、ほろ酔い酒場で』(6月10日公開)、『一茶』(2017年)などが公開予定。
累計2000万ダウンロードを突破した人気アプリが『ねこあつめの家』として映画になり4月8日に公開される。エサやグッズを置いた庭先にやってくる猫を眺めるというユルゲーの映画化に、発表当初は「どこをどうやって映画にするの?」との声も上がったが、主演に伊藤淳史を迎えて、人生に立ち止まった小説家が猫や人との触れ合いを通じて、新たな一歩を踏み出すまでの温かな人間ドラマに仕上がった。
主人公で筆が止まってしまった小説家・佐久本を演じた伊藤は、猫とここまで触れ合ったのは初めてとのこと。シナモン(「CHOYA梅酒」CM)やドロップ(『先生と迷い猫』)など、スター猫がこれでもかと登場する本作を振り返り、猫への思いも語る。
伊藤:ありがとうございます。
伊藤:想像がつかなかったですね。どういうお話なんだろう、どういう風になっていくんだろうって。それから台本を読ませていただいたんですが、おっしゃっていただいたように、人間ドラマなんです。もちろん猫の癒しの映画でもあるんですけど、ひとりの人間が関わる存在として猫が登場してくる。登場人物それぞれがしっかり描かれていて、すごく心が温まる映画だと感じました。
伊藤:そう思っていただけるのはすごく嬉しいです。その思いとか期待にちゃんと応えられるようにしたいし、裏切らないお話になってるんじゃないかと思います。ぜひ見て確認していただきたいです。
伊藤:東京にいるときの、仕事に対する絶望感の表現をしっかりしようと思いました。時間的には短いパートですが、そこを大事に。佐久本は東京から千葉県の多古町に引っ越しをするのですが、あとは、そこで暮らすようになって、少しずつだけど、確実に変わってきているというか、少しずつ光が差してきている感じを出したいと思いました。
伊藤:僕にはものを書く能力はありませんが、芸術の分野で、自分と向き合って勝負していくという部分で感じるものはありました。仕事で困ったり苦しんだりしているとき、いろんな人からアドバイスをもらったとしても、自分自身である程度の道すじを見つけないとダメなんですよね。そうした状態のときに佐久本のようになってしまうのは共感できる。小説家の役をやるからといって、そのこと自体に難しいハードルは感じなかったです。
伊藤:たとえばあれがスタジオのセットだったら感じられないものがあったと思います。あの場所で、周りに家が建っていて、自然がいっぱいあって……。撮影の合間も気持ちがそのまま入っているというか、東京で撮影しているときとは違った感覚で臨めたのは大きかったです。
伊藤:前にもご一緒させていただいていますが、自分をちゃんと持っている本当にステキな人です。よく話してくれるし、よく笑うし。多古町に行ってからは、あの一軒家での撮影が長くて控室もなかったので、待ち時間もずっと一緒でした。だから本当にいろんな話をしたり、猫もいるから一緒に遊んだりして、すごくいい時間を過ごさせていただきました。
伊藤:これまであまり接する機会はありませんでした。猫は人間とちょっと距離を置く存在というか、一緒に生活していてもパーソナルスペースを大切にしているイメージを持っていて。家に帰ってきてもニャンニャンニャン!って近づいてくる感じはないですよね。犬だったらワンワンワン!って近づいてくるけど。だからちょっと距離を感じてたんです。でも、今回の作品では佐久本と猫の距離が近かったので、台本を読んだときは、こんな風にできるのかなと思っていて。でも、この作品に出演している猫たちは、本当に人懐こくて、優秀で、みんないい子で可愛い。猫のイメージが全く変わりました。
──こんな風にできるのかなとおっしゃいましたが、本編で、猫ちゃんが佐久本に身体を寄せてニオイを擦り付けてくるシーンがあります。しかも、前段階として、木村多江さん演じるペットショップのオーナーが、「もっと慣れてきたらニオイを擦り付けてくるよ」というセリフがあった上でのシーンです。あれはどうやって撮影したのでしょう。
伊藤:僕も台本を読んで、こんなにうまくいかないよって思ってたんです。でも実際の撮影になったら、1回でパッと来てくれたんですよ! おー、すごい!と思っていたら、もう1度戻ってきて、さらに体を擦り付けてきたんです。これが本編で使われています。ビックリしましたね。役柄的にも驚きと喜びが混ざり合うシーンですが、自分的にも同じ気持ちになりました。猫とのシーンは、ちょっとドキュメンタリーっぽい感覚でしたね。
伊藤:一番思ったのは、猫も近づいてきてくれるんだってことですね。想像してなかったので。ほぼ順撮りでの撮影だったので、佐久本が猫のことを知ってだんだん好きになっていく感じがうまくリンクして、リアルな感じが出てるんじゃないですかね。
伊藤:まず猫が可愛いです。そして素晴らしい。演技してるわけではないはずなのに、そこになにか気持ちが見えたりもするし。それにあんなに数多くの猫たちが、ひとつの画面に収まっているという奇跡的な感じがすごいです。それがあくまでも佐久本の人生の中でのひとつの要素というか、ちゃんと人間ドラマもしっかりと描けているので、バランスのとれた、ほっこりする映画になっていると思います。
(text&photo:望月ふみ)
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