1985年11月10日生まれ、東京都出身。『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(10年)で俳優デビュー、同作で第35回報知映画賞新人賞、第34回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後も数多くの映画、ドラマに出演、若手実力派の地位を確立。近年の主な映画出演作に『サムライフ』(15年)、『進撃の巨人』シリーズ(15年)、『ローリング』(15年)、『マンガ肉と僕』(16年)、『怒り』(16年)、『追憶』(17年)、『四月の永い夢』(18年)、『のみとり侍』(18年)、『栞』(18年)、『ダンスウィズミー』(19年)など。今後の待機作に『初恋』(20年2月28日公開)、『大綱引きの恋』(21年公開予定)などがある。
世界四大映画祭のひとつモスクワ国際映画祭で、邦画史上初となるダブル受賞を果たした『四月の永い夢』がいよいよ日本公開される。メガホンをとったのは世界的に注目される新鋭・中川龍太郎監督。恋人を亡くしたひとりの女性が喪失感や、心の棘から解放されていく姿を詩的に描き出している。
主人公・初海を透明感あるたたずまいでみずみずしく演じるのは『かぐや姫の物語』の朝倉あき。初海に恋する朴訥で誠実な青年・志熊を演じるのは数多くの映画・テレビドラマに出演する三浦貴大。2人が織りなす空気感はとても穏やかで、それでいて胸に迫るものとなっている。そんな彼らに話を聞いた。
朝倉:やはり共演が2回目ともなると、すごく安心感があります。三浦さんは親しみやすい空気を作ってくださる方なので、私もリラックスできたというか。最初にお会いした時から壁を作らないで、フランクに接してくださったので、すごく楽しかったという記憶しかありません。
朝倉:基本的に撮影中はあまり喋らなかったように思います。別にそういう風にしようと思ったわけではないんですが、喋らずに皆さんと同じ空気を一緒に味わっていたいなと思っていて。
三浦:そうですね。それと僕が演じた志熊という役がそうだったので、とにかくそんな朝倉さんがかわいいなと思いながら見ていました(笑)。
朝倉:(照れながら)ありがたいですね。
朝倉:監督がすごくナチュラルなお芝居を求めてくださって。撮影中はカメラで撮られているという感覚があまりなかったですね。私もカメラを意識しないようにしていたというか、途中からどんどん忘れてしまったくらいで。実際、カメラをあまり意識しないところが何シーンか使われていて。映画を見るとこういう風になっていたんだなとか、こんな歩き方をしていたんだなと感じるところも多かったですね。
三浦:僕はどうしてもカメラを意識してしまうクセがあるのですが、おそらく中川監督が思い描いているものはそういう小芝居ではないんだろうなと思っていました。ただ、そういうカメラが気にならないような雰囲気作りを、監督やスタッフさんが作ってくれたので。無理に、意識からカメラを消そうということは考えずに撮影ができたかなと思います。それから、完成した映画を見てびっくりしたことといえば、「みんな芝居上手いなぁ」ということ(笑)。この人たちの中に入って、俺は大丈夫かね、と思っていました。
朝倉:三浦さんがそういうことを言うなんて!
三浦:もちろん技量というのもあると思いますが、それと同時にキャスティングの妙というか。あの空間にすごくマッチした人たちだったからかもしれませんが、一人ひとりが中川監督の世界観を感じて、芝居をしているのが単純にすごいなと思ったんですよね。
朝倉:なんておっしゃいますけど(笑)、本当に三浦さんはこのままなんですよ。このまま現場に入ってきて、いつも肩の力が抜けていて。現場では誰よりもナチュラルだったんです(笑)。以前、ご一緒した時から、なんて理想的なお芝居のアプローチなんだろうと思っていましたし、私もこんな風にできたらいいのにとずっと思っていました。
三浦:僕が生まれ育った国立という街で撮影ができてすごくしあわせでしたね。ただ、国立というのは僕にとっては住んでいた場所だったので、そこに朝倉さんや撮影クルーがいたというのは不思議な感覚でもありました。あの街はすごくいい街ですし、僕の地元だったので、何の役作りもせず自然に入れたなというのが良かったですね。
朝倉:今回、改めて国立の街の中にたくさん居させてもらって、地元の人たちの愛情がたくさん詰まっている町だなと感じました。今回の映画でも、お蕎麦屋さんや帽子屋さんなど、いろいろな場所が出てくるんですけど、そういう地元の方が愛して一緒に暮らしてきたような親しみのあるお店がたくさんあって。高い建物が少なくて、のんびり歩ける道もたくさんありましたし、撮影時期が夏だったこともあって、日当たりの良い町だったというか、気持ちのいい場所だなという印象が残りました。
三浦:監督は僕より3つぐらい歳が下なのかな。頭の中はすごく文学的なんですけど、映画の組み立て自体はすごく計算して作っている方だと思いました。こんな静かな映画を作る方ですけど、映画に対する熱はものすごくあって。ずっと映画のことを熱く語ってくれるんですよ。ご自身もいろんな経験をされていらっしゃると思いますし、そういう自分の経験を映画につぎ込んでいるんだろうなと思いますね。
朝倉:いろんなことに対して興味を持たれていて。あらゆることを吸収して、それを全部映画に活かそうと。自分なりの答えをいつも考えているのかなと感じました。小道具やロケ場所に関しても、スタッフさんがものすごくこだわって選んでくださっているんですけども、中川さんのそういった熱がスタッフさんを動かしているんだな、というのを感じました。
三浦:先に映像の資料を頂いて勉強をしました。後は実際に撮影の時に染物工場に行って、実際の職人さんに手順を教えてもらいました。ただ、手順を覚えるのはもちろんなんですが、それと同時にほかの職人さんが工場でどのようにしているのかを観察しました。どうやって入り口から入るのか、どんな顔をしているのか、普段はどこに座っているのかとか。撮影の時以外はスタッフさんに発見されないくらいにしたいなと思って。職人さんになじむことができたらベストかなと思ったんです。
朝倉:中川さんの映画はほとんどそうだと思うんですが、この作品については特に万人に共通するものがあるというか。誰しもが持っているような停滞や後悔、何も解決しないままになっているような思いにスポットを当てているんで、そういうところは多くの人に共感を持ってもらえるものなんだろうなと思いました。セリフではなく、ふとした仕草だったり、シンプルなセリフだけで心情を表しているので、そういったところで受け止めてもらえるのかなと思います。
三浦:僕はこれまで海外の人とそれほど多く関わってきたわけではなかったので、こういった日本の小さな話が海外の方にも共感してもらえるんだ、ということが素直に驚きでした。この映画で描かれている生と死というテーマは、国が変わっても変わらないんだなということを感じて嬉しかったですね。ちょっと外国の方と友だちになってみたいなと思いました(笑)。
三浦:セリフもシンプルですし、とても大きな事件がある映画でもないですけれども、見てくださった方それぞれに感じるところがある映画だと思います。観た瞬間に感じた気持ちを大事にしてもらいたいような映画になったと思っているので、たくさんの人に見てもらいたいですね。
朝倉:私もほとんど三浦さんと同じような気持ちなんですけれども、すごくシンプルに登場人物たちの表情や言葉に耳をすませて聞いていただけたらと思っています。特に美しい国立の街並み、温かさとか、富山の自然の豊かさであったりとか、そういった手触りが豊かに感じられる映画になったなと思います。ぜひ劇場で味わっていただけたらと思います。
(text&photo:壬生智裕)
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