『王の涙 イ・サンの決断』(14年)の脚本を担当し高い評価を得、本作で監督デビューした。
2000年初頭に日本で始まった「第1次韓流ブーム」以来、息の長い人気を誇るイ・ビョンホンが主演した『それだけが、僕の世界』。落ちぶれた元プロボクサーが、断絶していた母、そして、生まれて初めて会うサヴァン症候群の弟と共に暮らし始め、徐々に家族になっていく様子をユーモラスに描いた作品だ。
ハリウッドで成功したトップスターのクールなイメージを覆すようなビョンホンの演技力にも話題が集まった本作について、チェ・ソンヒョン監督に話を聞いた。
監督:あたたかく愉快で、すべての人に共感してもらえる映画。頭よりもハートが先に反応するような映画を作りたいと思いました。自分たちの周りでも見かけるような身近な人々の物語、そして様々な関係の中で少しずつ変わっていく人物たちの物語を描きたいと思いました。『国際市場で逢いましょう』のユン・ジェギュン監督が私の書いたシナリオを読んで、すぐに製作を決めてくれ、監督にも初挑戦することになりました。
監督:人間関係において、とても些細なことが一番重要だと考えます。些細なことから怒りがこみあげてきたり、些細なことによって愛情が芽生えたりもします。ジョハとジンテが一緒にラーメンを食べて一緒にビラ配りをして、一緒にゲームをして、一緒に寝る些細な部分が、2人の関係性の変化において最も重要な出来事です。日常的な出来事が積み重なって、2人の兄弟がより近くなってジョハがジンテの手を握るきっかけとなっていく。日常の中で起こる愉快な出来事にフォーカスをあて2人を描いていきたかったんです。
監督:演技の神のような人々でした。かねてよりファンだったイ・ビョンホンさん、そして韓国が誇る大女優のユン・ヨジョンさんは言うまでもなく、パク・ジョンミンさんも本当に新人とは思えないしっかりした演技で素晴らしかったです。カメラがまわって3人の役者の演技がはじまると、私が考えていたものよりもずっと良い画になりました。「これが本当の演技というものなのか。とても素晴らしい」と瞬間瞬間感じるほど3人の共演は素晴らしかったです。あとヨジョンさんは50年の女優人生の中で、初めて慶尚道の方言に挑戦されたんです。でも現場に来た時はその方言は完璧。そして驚くことにヨジョンさんは方言のセリフで一度もNGを出しませんでした。
映画に対する姿勢のすべてが素晴らしい方でした。監督として3人と一緒に仕事ができて最高に幸せだと思っています。
監督:撮影で最も力を入れたのが、美しいだけのアングルから脱して、人物と距離感を置いた画で構成することでした。ハンディカメラでの撮影と荒い感じの映像が、愉快で軽快な物語と適切なハーモニーを生み出しました。音楽においては劇中、ジョハのセリフのように“これ、どっかで聞いたことある音楽だな。”と思わせる曲を親しみやすさに重点を置いて選曲しました。美術に関しては、シナリオを完成させてから300枚余りのキーイメージを直接描きました。イメージそのままを作り出せるように、小道具ひとつひとつにもリアリティを高めようと繊細な努力をしました。
監督:弟ジンテとの出会いを通して、ジョハ(イ・ビョンホン)の心境の変化とジンテ(パク・ジョンミン)の純粋さと才能を、皆様に感じてもらえることを願いました。頭より心で感じてもらえたら嬉しいです。
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