1987年12月18日生まれ。東京都出身。7歳のときに家族と共にカナダへ渡り、中学卒業後、単身アメリカのニューヨークに移り住む。その後、日本に帰国して慶應義塾大学の理工学部に進学、2009年にミスター慶應コンテストでグランプリに輝く。翌年には「キャンパスターH★50with メンズノンノ」で審査員特別賞を受賞して、芸能界デビュー。主な出演作は、ドラマ『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』(13年)、『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(15年)、『べっぴんさん』(17年)、映画『脳内ポイズンベリー』(15年)、『ライチ☆光クラブ』(16年)、『曇天に笑う』(18年)など。
良質なドラマを数多く輩出していることでも知られているWOWOWオリジナルドラマ。そのなかでも人気を博しているのが、2015年の『石の繭』、そして2016年の『水晶の鼓動』として映像化されている『殺人分析班』シリーズだ。これまでは、木村文乃演じる捜査一課の刑事である如月塔子が主人公として描かれていたが、そのなかでも圧倒的な存在感で話題となっていたのは、殺人鬼トレミー。シリーズでもアイコン的キャラクターと言われている。
そんななか、トレミーこと八木沼雅人を主人公に迎えたスピンオフドラマ『悪の波動 殺人分析班スピンオフ』が完成し、盛り上がりを見せている。そこで、シリーズを通してトレミーを演じ続けている実力派俳優の古川雄輝に、この役を演じるうえでの難しさや役者としての思いについて語ってもらった。
古川:WOWOWでは初主演でしたし、こういう形でスピンオフになるのは異例のことだと聞いたので、うれしかったですね。この役は『石の繭』の犯人役として好評だったため、続編の『水晶の鼓動』では原作に出ていないにもかかわらず、出られるように書き加えていただいたこともありました。実は、そのときの打ち上げで、「トレミーがどうしてこうなったのかのお話が作れますね」とか、冗談半分でいろいろと話していたんです。まさかそれがこうして実現するとは思っていなかったので、気合いも入りました。
古川:そうですね、同じ役を3回も演じられることはなかなかないですからね。トレミーはダークヒーローみたいなキャラクターでしたし、これまでとは違う役柄だったことも大きく、僕にとっては男性のファンが増えたきっかけにもなりました。殺人はもちろんダメだけど、彼には彼なりの正義やかわいそうな生い立ちがあったので、そういうところが視聴者の方に響いたのかもしれません。それだけに、彼をそうさせた背景を見たかった人も多かったんだと思います。
古川:もともと人物像があまり描かれていなかったので、今までは想像するしかありませんでしたが、この作品のおかげで点と点が線になっていくように感じました。たとえば、前作で好きだと言っていたハンバーグの話があったり、これまで着けていたガスマスクがさりげなく出てきたり、そういうのが繋がっていくのがおもしろいと思いました。
あと、彼の根底には復讐心がずっとありますが、今回はSUMIREさんが演じる吉佳と出会うことによって、普通の青年としての人間っぽさが出てくる瞬間も描かれているので、「もし誰かが手を差し伸べていたら殺人犯にはならなかったかも」と思える人物になっています。
古川:「もし自分が同じ立場だったら、こうなっちゃうのかな」という意味では感情移入できるところもありました。僕は、『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーに例えているんですが、彼も愛する人がいるのにうまくいかなくて、本当は悪い人じゃないのに結局ダークサイドに行ってしまいますよね。そういう感じと似ているんじゃないかなと思いました。
古川:難しかったのは、「どの瞬間に八木沼雅人が猟奇的な殺人犯トレミーになったのか」というポイントを決めなければいけなかったこと。そこは監督にもかなり相談したところです。あとは、とにかく人との触れ合いを避けてきたキャラクターなので、動作一つにしても意味合いを持ってしまいますし、そんな人が普通に人と会話するだけでも僕にとっては違和感でしかありませんでした。なので、前の作品と繋がるように逆算していくような形を取ることにしました。
古川:基本的にいつも10歳くらい若い役をやっているので、特に問題ありませんでした。むしろ、30代の役をやる方が僕には難しいですね(笑)。
古川:いつも年下に間違えられるので、もう慣れました。女性だと嬉しいかもしれませんが、男としては複雑な気持ちですよね。もっと大人の役をやりたい気持ちもあります。この前も、広瀬アリスさんの先輩役を演じましたが、スーツを着ても新人にしか見られなくて、実際は7歳も年上なのに、全然先輩に見えないと言われてしまいました(笑)。
古川:役を演じるうえで得することはあまりないかもしれないですね……。さすがに制服を着る役はなくなってきて、大学生やお兄ちゃんの役が増え、最近やっとOBまでたどり着きました。もう少ししたら年齢と相応になってくると思うので、それまでは大学生役を楽しみたいと思います(笑)。
古川:焦りはしないですけど、早く大人の役をやりたいですね。特に、僕は親も弟も医者ということもあって、お医者さんの役には自信があるので、オファーをお待ちしております(笑)。わからないことがあればすぐに聞けますからね。
古川:『ライチ☆光クラブ』のゼラ。僕自身、演じていてすごく楽しかったですしぜひやりたいです。あとは、『重要参考人探偵』のシモンもすごくテンションが高くて、普段あまりやらないタイプの役だったので、またできたら楽しいと思います。
古川:これまでの僕は、現場であまり共演者の方とはコミュニケーションを取るタイプじゃなかったんです。でも、今回はみんなとちゃんとコミュニケーションを取ろうと思って、自分から話しかけたり、一緒にご飯を食べに行ったりもしました。
古川:というよりも、自然とそうなりましたし、思い入れが強い役なので気合いの入り方も違ったんだと思います。3回目ということもあって、監督をすごく信頼していたというのもありましたが、チームとしての安心感もありました。本当に愛情のある素晴らしい組だと感じています。僕が牛タン好きなのを知って、クランクアップのときには牛タン弁当を用意してくれたりもしたんです(笑)。
古川:そうですね、作品が終わったときには必ず焼肉に行きます。というのも、子どものときから、うちの家族は外食というと焼肉ばかり行っていました。そのときは海外に住んでいたので、日本に一時帰国したときにだけ食べられるごちそうが焼肉。しかも父親が子どもに上牛タンを食べさせてくれていたので、それは好きになりますよね(笑)。ただ、大学生になって自分でお金を払うようになったら、高くてなかなか上牛タンにはたどり着けなくなってしまって……。そんなこともあり、いまだに牛タンが大好きで、自分へのご褒美でもあります。
古川:やっぱり出来上がった作品を見るのが一番の楽しみ。それは、自分がやってきたことの答え合わせをする瞬間でもあるので、終わったらすぐに見たいです。ただ、それ以外に息抜きも必要なので、そのときは趣味の麻雀をしに行きますね。
古川:麻雀は実力で勝負する世界でもあるので、その感じが面白いですし、あとは普段会わないようないろんなジャンルの人と仲良くなれるのも魅力だと思います。ずっと対戦したかった萩原聖人さんと最近打たせていただきました。1局しかできませんでしたが、その時は点数が僕の方が上でした! 嬉しかったです。1回始めると、7時間くらい続けていることが多いですかね。
古川:僕はボーっとして時間を無駄にするのが好きじゃないですし、何もしてない方がストレスに感じてしまうタイプ。いつも忙しくしていたいので、休みの日でも予定はパンパンに詰め込んでいますし、自分の趣味にそれだけ時間を費やせるのは楽しいことです。あと、家にいるときは、自炊をして体にいいものを食べるように心がけています。とはいえ、男の料理なので、15分くらいでサッと作ることが多いですね。
古川:ビビンそうめんです。そうめんって夏しか食べないので、どうしても余ってしまいますが、それをキムチやコチュジャンと合わせるとサッパリ辛くて食べやすいので、よく作っています。
古川:まだ演じたことのない役がたくさんあるので、そういうものに一つずつ挑戦していきたいですし、もっといろんな役者さんや監督さんとご一緒したいなと思います。僕が目標にしている方は、佐々木蔵之介さん。お芝居はもちろんですが、頭の回転が速くてアイディアも豊富ですし、人に対しての接し方にも影響を受けているので、蔵之介さんのような俳優になりたいです。誰と出会うかで役者人生も変わっていくものなので、これからもいい出会いと作品があればいいなと思っています。
(text:志村昌美/photo:小川拓洋)
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