1973年12月8日生まれ、北海道出身。1996年に学生時代の演劇研究会の仲間とTEAM NACSを結成。チームとして活動を続けるかたわら、個人でもさまざまな映画やドラマなど映像作品にも出演し、個性派俳優として映像界になくてはならない存在として活躍している。
家族で散歩しているときに、地面が割れてしまったとしたら…
第149回直木賞を受賞した桜木紫乃の原作を、映画『百円の恋』などの武正晴監督が映画化した『ホテルローヤル』。本作で、波瑠演じる雅代の父親・大吉役を演じたのが、俳優の安田顕だ。
安田と言えば、優しいお父さんから、キレキレの狂人まで、非常に幅広い役柄を演じる俳優だが、本作では哀愁漂うなか「おかしみ」をにじませる父親を好演した。「集中することが現場に対する感謝」と役者としての流儀を語った安田の真意に迫る。
安田:原作を拝読したあと、脚本を読ませていただき、早くこの作品を見てみたいなと思いました。大吉という役は父親として決して立派ではないのですが、憎めないキャラクターだなと感じました。
安田:言葉にするのは難しいですが、作品を見たときにも強く感じました。例えば、夏川結衣さん演じる妻・るり子が若い男と出て行ってしまうとき、たどたどしく追いかけていくシーンなどは、なかなか憎めないなと思いました。
安田:特殊メイクなど、周囲の方々が見た目をしっかり作ってくださったので、すんなり役柄には入っていけました。あとは設定が北海道だったので、イントネーションなども苦労せずに取り組むことができたのもありがたかったですね。
安田:波瑠さん演じる雅代や、松山ケンイチさん扮する宮川聡史など、いろいろな登場人物が、陰の部分を含めてすごく輝いているんです。それぞれの関係性も、言葉ではなく、ほんの数コマで匂い立つように感じられる。そこがステキな映画だなと思いました。
安田:そこまで撮影に長く参加していたわけではないので、深いことを言える立場ではありませんが、シーンによると思います。この作品の魅力の一つになっている時代が変わるときの場転換のやり方などは、しっかりと演出されていたと思いますが、役者同士の芝居に任せようというシーンもあったと思います。
安田:いろいろありましたが、例えば大吉が、心臓が苦しくて倒れる場面で、武監督は自分の親父さんが心臓が苦しかったときの思い出があったようで、それに基づいて細かく演出してくださいました。とは言っても「このセリフをこのぐらいのイントネーションで」というような細かさではなく、佇まいとして「こういう感じで」という演出でした。
安田:どうでしょうね(笑)。例えば家族で散歩しているときに、地面が割れてしまったとしますよね。そのとき、割れた地面の端と端を手と足で掴んで、家族に「渡れ」と言えるような夫ですかね。そんなのが理想です。砂漠にいて、最後の一滴を奥さんと子どもに与えられる旦那……でも自分はそうなれるのかという不安はありますね。
観客にきっちりと嘘をついて騙さなければいけないのが、僕らの仕事
安田:きちんと役として現場に立ってらっしゃいました。素敵な女優さんだなと思いました。俳優っていろいろなアプローチ方法があると思いますが、結局は僕らの仕事って見ている方にきっちりと嘘をついて騙さなければいけないのですが、波瑠さんはプロフェッショナルだなと感じました。
安田:僕は集中することが現場に対する感謝だと思っています。現場に入ったときから役としてずっといることもあれば、そうじゃないときもある。作品によってやり方は違いますが、俳優部だけではなく、照明部、演出部……すべての持ち場で、一つの作品を作るためにみんなが集中している。みんながいまその瞬間を切り取るために努力しているんだということを背負えば、それがパワーになると思うんです。
安田:僕が感じたのは、登場人物の感情の豊かさ。喜怒哀楽と表現されますが、そのなかでもいろいろな色がある。それでいいんじゃない?って思える映画だなと。スーパーマンは出てきませんが、こういう映画を見られる環境が日本映画界にあってほしい。映画鑑賞料で豊かな2時間を買っていただきたいです。
(text&photo:磯部正和)
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