1964年6月2日生まれ、ドイツ、バート・ナウハイム出身。1986年、ミュンヘンテレビ・映画大学でドキュメンタリー映画とテレビジャーナリズムを専攻し、ADおよび脚本家としてキャリアを重ねる。その後、1995年に聴覚障害者のカップルについての映画脚本の執筆に取りかかり、翌年『ビヨンド・サイレンス』で監督デビュー。アカデミー外国語映画賞にノミネートされたほか、各国の映画祭で賞を獲得し、国際的に知られるようになった。2001年には『名もなきアフリカの地で』で大きな商業的成功を収めるだけでなく、アカデミー外国語映画賞を受賞する。「THE BOY NEEDS SOME FRESH AIR」(18)では、370万人を超える動員を記録し、これまでで最大のヒット作になった。
『ヒトラーに盗られたうさぎ』カロリーヌ・リンク監督インタビュー
世界的絵本作家の知られざる激動の人生が、待望の映画化!
少女の視点でポジティブに描かれているのが本作の魅力
「おちゃのじかんにきたとら」など、シンプルなイラストで世界中の⼦供や⼤⼈を夢中にしてきた世界的絵本作家のジュディス・カー。惜しくも昨年5⽉に95歳でこの世を去ったが、彼女の⾃伝的⼩説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」を原作にした映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』が誕生した。ナチスが政権を握る直前、その迫害から逃れるために家族とともに故郷ドイツを出国、スイス、フランスを経て1936年にイギリスへと渡ったジュディス・カーの少女時代の体験が基になっている。
2019年のクリスマスシーズンに本国ドイツで公開された際には、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『アナと雪の女王2』『ジュマンジ/ネクストレベル』といったハリウッドの超⼤作がひしめくなかで、⼤ヒットを記録したという。そんな多くの人を魅了した感動作が、いよいよ日本でも公開を迎える。そこで、本作を手掛けたカロリーヌ・リンク監督にジュディス・カーとのエピソードや本作の魅力について語ってもらった。
監督:9歳の少女の視点から描かれた物語であるという点が特に好きですね。残酷でも恐ろしくもないので、子どもたちが恐怖を抱くような物語ではありません。政党が替わったことにより、アンナとその家族が突然故郷と富、そして母国語を失い憂鬱な状態に陥りますが、それでもポジティブな観点で描かれているのが好きな理由です。
監督:優しくてチャーミングなジュディスにとって、自作の映画化は大きな意味を持っているということ、そして私が監督した『名もなきアフリカの地で』(01)を観てくれていたことを教えてくれました。この作品もまたユダヤ人家族がナチ統治時代に外国へ放浪する物語であるので、ジュディスは自分たちの存在を愛し守ってくれた両親に感謝しきれないという当時の話もしてくれたんです。
観客の記憶にずっと残る作品になると確信している
監督:初稿を書いたアナ・ブリュッゲマンは素晴らしいアイデアを出してくれたので、いくつかは脚本に取り入れています。一方で、人間模様を描く際には、私自身のタッチでキャラクターを創り上げることを意識しました。
監督:まずは240ページの小説を90分のドラマに変換することですね。映画の観客は劇中の少女アンナと同じように、「この家族はもうベルリンの家には戻らないのだ」と徐々に感じるようになるので、緊張感を醸し出すことを意識しました。劇中のシーンに、家に帰れる日までカレンダーの日付に線を引く箇所がありますが、それは「もう戻れない」ということを表現したくて入れています。“線”を引いてるアンナ自身がそれに気がつくまでに少しかかりますが、あるとき「もう日付に線を引く必要はない。どうせもうベルリンには戻れないのだから」と理解するのです。これがドラマの核となっていると思います。
監督:完成した映画をジュディス・カーに見てもらえなくてとても残念です。きっとリーヴァ演じるアンナを好きになってくれたと思います。オリヴァー・マスッチが演じたアルトゥア・ケンパーも、少し乱暴な部分もあるけれど、それ以上に温かく愛される父親だと感じてくれるでしょう。
監督:本作が劇場上映の後も、ずっと記憶に残るものになると確信しています。感動的でかつテンポよく楽しめる映画を撮ることは私の目的のひとつでした。おそらく、そういう映画が後にクラシックとなり棚の中に収められるのだと思います。もしかしたらその隣にはあらゆる世代に愛されてきたジュディス・カーの本もあるかもしれませんね。
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