オーストラリア・シドニー出身。ニューヨークの美術学校でグラフィックデザインや広告を学び、CM監督として数々の賞を受賞。『Mr.ウッドコック 史上最悪の体育教師』(07年)で映画監督デビューし、続くライアン・ゴズリング主演映画『ラースと、その彼女』(07年)で高い評価を受ける。その他の主な作品に『フライトナイト 恐怖の夜』(11年)、『ミリオンダラー・アーム』(14年)、『ザ・ブリザード』(16年)など。アメリカの実在のフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの波乱の半生を描いた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17年)では、主演のマーゴット・ロビーがアカデミー主演女優賞ノミネート、主人公の母を演じたアリソン・ジャネイが同助演女優賞を受賞した。
ヴィヴィアン・ウエストウッドやアレキサンダー・マックイーンを参考に
ディズニーが人気女優エマ・ストーンを主演に贈る、実写映画最新作。1961年に公開された名作アニメ『101匹わんちゃん』に登場する、ディズニー史上最も悪名高き “ヴィラン”(悪役)、クルエラ。デザイナーを夢見る少女はなぜヴィランへと変貌したのか?クルエラの誕生秘話が、過激かつスタイリッシュに明かされる。
パンクムーブメントが吹き荒れる1970年代のロンドン。親を亡くしたエステラは、反骨精神と独創的な才能を活かし、ファッション・デザイナーになることを決意。ロンドンで最も有名な百貨店リバティに潜り込む。ある日、カリスマ・デザイナーのバロネスと出会い、斬新な発想と才気あふれる創造力によって頭角を現すが、やがてこの二人の関係はファッション界のみならず社会全体を震撼させる大事件を引き起こす。そして、ある出来事をきっかけに、エステラは心の奥に隠していた自分の本当の声に従い、クルエラとして覚醒する。
メガホンを取ったクレイグ・ギレスピー監督に、70年代ファッションや音楽のこだわりを語ってもらった。
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監督:これは本当にアメージングな経験だったよ。ディズニーは僕のすばらしいパートナーだった。彼らは僕に「エマ・ストーンがクルエラを演じて、舞台は1970年代のロンドンなんだけど」と電話をくれた。即座に僕は「やります!」と言っていたよ(笑)。あの時代のロンドンでは、パンクロックや革命が起こっていた。文化のクロスロードだったんだ。キングスロードにはヴィヴィアン・ウエストウッドがいて、ストリートファッションが台頭し始めていた。そこに飛び込んでいくのは楽しいし、クルエラのキャラクターにぴったりでもある。彼女は権力に反抗していくようになっていくんだから、この設定はふさわしいんだよ。僕は衣装のジェニー・ビーヴァンとファッションについてたっぷりリサーチをした。
監督:そう、その設定に僕はとても魅力を感じた。そこに自由も感じた。原作本では1956年となっているが、クルエラのバックストーリーはほとんど書かれていない。僕らはほぼまっさらなところから始めることができたんだ。時代も僕らが決めることができた。あの時代は彼女が経験していくことに本当にぴったり。僕はヴィヴィアン・ウエストウッドやアレクサンダー・マックイーンなどを参考にした。反権力な彼のファッションには反抗的なところがある。彼は90年代の人だが、クルエラのストーリーに共通する。彼の持つそんな精神も70年代の設定に持ち込み、そこから発展させていったんだ。それは複雑だったけれど、ジェニー・ビーヴァンはすばらしい仕事をしてくれたよ。
数百着の衣装を作らないといけないのに加え、彼女はクルエラとバロネス(エマ・トンプソン)のファッションラインを作らないといけなかったんだ。美しいファッションであるはずのものをちゃんとやらないと、観客にしらけられてしまう。そのファッションは、あの時代らしくもあり、コンテンポラリーなテイストもないといけない。今作は彼女がこれまでにやった中でも最も多くのデザインが必要とされた作品だと思うよ。二人のファッションデザイナーのためにブランドを作ったんだから。
監督:もちろん過去の作品に登場するけれど、彼女についての情報はほとんどないよね。それに原作本でも彼女はファッション業界にいて、ダルメシアンが好きということくらいしか書かれていない。だから自由はたっぷりあったよ。これはオリジナルストーリーで、ある時点に来たところで(『101』『102』でクルエラを演じた)グレン・クローズに引き継がれる。僕が監督に決まる前に、脚本はできていて、ストーリーも大体決まっていた。そこに、僕が別のプロジェクトで組んでいたトニー・マクナマラが参加して、脚本をより良いものにしてくれたんだ。すばらしいセリフや、エマ・ストーンとエマ・トンプソン二人のシーンを入れてくれたり。彼のおかげで、二人の強い女性が対抗する、優れたシーンが生まれたんだ。
監督:二人が一緒のシーンは、僕の最高のお気に入りだよ。クルエラのようなキャラクターの難しいところは、大げさな演技が要求されること。やりすぎにならないバランスを見つけるのは簡単ではないし、その奥に「この人はどんな人なのか」ということが感じられなければいけない。それがないとマンガっぽくなってしまう。クルエラは反抗的で、堂々と発言する、強いキャラクター。逆にエマ・トンプソンのキャラクターは抑制されていて細かなニュアンスがある。この二人の間には面白いエネルギーの対比があるんだ。それをセリフのやりとりにも反映させていくのは楽しかったよ。
さらに、エマ・ストーンは事実上、二人のキャラクターを演じている。彼女はクルエラになっていくんだから。エマ・トンプソンと一緒のシーンの多くで、彼女はまだクルエラではない。すでにクルエラになっていても、バロネスの前では隠している。そういう「騙し」が行われているんだ。それがまたシーンを美味しくする。
監督:バロネスは65のフォーマットで撮影している。こちらはチップが大きい。彼女は上流階級の人で、すべてが大規模だから。エステラには35を使い、手持ちカメラも使っている。同じ場所でも、二人がいる世界は違うんだ。クルエラになっていく過程では、とても細かなニュアンスの演技が要求される。彼女は突然にしてクルエラになるのではない。そこまでの間に、感情ポイントがいくつもある。エマ(・ストーン)は、その中で、いくつも違うクルエラを演じているんだ。まだ学んでいる段階のクルエラもあれば、すごく暗いクルエラもある。「このシーンのクルエラはどんなクルエラなのか」という会話がたっぷりあったよ。シーンによっては、もっとアグレッシブで意地悪にならないといけないし、別のシーンではもっと感情的にならなければいけない。エマはそんな細かな演技を見事にやってくれた。
監督:『アイ,トーニャ』同様、僕はこの映画にたっぷりと音楽を入れたかった。あの時代だから。あの時代の音楽は本当に豊かだ。ドアーズ、クイーン、クラッシュからドリス・ディまで、幅広い音楽を50曲ほど使っている。彼女とニック・ブリテルはすばらしい仕事をしてくれたよ。彼も設定があの時代だということをすごく喜んだ。僕らはアビーロードに行って、古いギターなどを使って、70年代のようにレコーディングをしたんだ。
監督:ウィンク、バディなどはそうだよ。それができたのは良かったと思う。ウィンクは特にトレーニングで優秀だった。ウィンクとバディは主に、盗む役。スリをするようなシーンをやってもらっている。CGの犬もたくさんいるが、ひとつのシーンに本物の犬とCGの犬が共存していても、どちらがどちらか僕にもわからないよ。僕らはいつも本物の犬で始めるが、正確に特定のことをやらないといけないので、(CGに)交代することもある。この映画にはどちらも出てくる。
監督:ヘアとメイクは『女王陛下のお気に入り』のナディア・ステイシーが手掛けてくれている。彼女は最高だ。エマ(・ストーン)の「クルエラはひとつのルックスではない」という意見にナディアも賛成していた。どういう状況なのかによってクルエラのルックスは変わる。髪型やかつらのバラエティの豊富さには本当に驚かされた。ジェニーがファッションにすごく時間と労力を費やしてくれて、そこにヘアとメイクが加わって。そのコンビネーションは感動ものだった。
監督:ああ、大変だったよ。でも僕は実際のロケーションが好きなんだ。肌で感じられるから。こういう大規模な映画は、たいていスタジオで撮影される。でも僕はできる限りロンドンの街中で撮影しようとした。僕らはロンドン周辺の32箇所で撮影をしている。初日の撮影もリバティの外だったんだよ。キャラクターが走って2階建てのバスに乗り込むんだ。それによって全体のトーンが固まった感じがしたよ。
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