1972年12月3日生まれ、神奈川県出身。1988年にデビューし、女優として映画、TV、舞台で長きにわたり活躍。主な映画出演作に『バタアシ金魚』(90年)、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(94年)、『モンスター』(13年)、『雪の華』(19年)、『ファーストラヴ』(21年)。ドラマは今年、『桜の塔』、連続テレビ小説『おかえりモネ』に出演。近年は歌手活動も再開し、5月に初エッセイ集「魔性ですか?」を発表した。
『リカ〜自称28歳の純愛モンスター〜』高岡早紀インタビュー
純粋すぎて怖すぎ!美魔女女優が、 演じるのに勇気が要る強烈役柄への共感と戸惑い語る
リカほどの純粋は怖すぎます。「私を邪魔する人は要らない」なんて
純愛を求め続ける“自称28歳”の女性の暴走を描いたドラマ『リカ』(19)そして、2021年春の『リカ〜リバース〜』。2019年のドラマ最終回のその後の物語が『リカ〜自称28歳の純愛モンスター〜』として映画化された。
温かい家族の愛に恵まれずに育ち、幸せな家庭への憧れが異様にふくれあがり、理想を共に実現してくれる相手を求めるリカの行動はさらにエスカレートする。新たに“出会った”運命の男性との距離を詰めていく行動の1つ1つ、その恋愛セオリーに意表を突かれまくり、常識を超えたリカのパワーに観客も振り回される。
純度高すぎの思い込みは滑稽で、恐ろしく、哀しい。狂い咲く花のようなリカを迷いなく演じ続けてきた高岡早紀は、女性としてリカをどう思うのか。リカを演じたうえで考える母と娘という関係、幸福などについて語ってもらった。
・高岡早紀の冷徹な美魔女っぷり炸裂「この女、怖すぎてヤバい!」
高岡:ドラマ1作目をやらせていただき、さらに2作目をやるっていうだけでも大変嬉しいことでしたが、それがさらに映画になると聞いて、驚いたんです。この「リカ」が映画になっていいんでしょうか?って(笑)。リカというキャラクター自体がすごい振り幅だし、称賛される人柄ではないし、そういう「リカ」を映画に?と本当に驚きました。ただ、皆さんに喜んでいただいたからこそのことだと思います。
高岡:「リカが飛ぶ」って書いてあったんですよ(笑)。あれ?と思って。それまでは、そこまで驚くこともなく読んでいたんですけど、「飛ぶ」とあって、その後「壁を這う」と書いてあるんです。もともとドラマに出演させていただく時点で、かなり勇気がいる作品だったので、さらにリカが飛ぶとなってしまうと、どう理解していいのか全く分からなくなり、映画版『リカ』を受け入れるまでにはちょっと時間を要しました(笑)。
リカはいわゆる“普通の人”ではないかもしれないけれども、生身の人間として演じてきました。でも、そうじゃなく、もともとリカは超人で、今までそのスキルを見せるところがなかっただけなんだと考えれば、全然おかしくないこと。普通の作品ではないし、特に今回は映画なので、さらにドラマよりもスケールアップして、より皆さんに楽しんでいただけるエンターテインメントを追求したら、このようになりました。
高岡:私も驚きました(笑)。
高岡:真実の愛を追い求めるところ。リカほど突き抜けることはできませんけれども、誰かを愛する真っすぐな気持ちは、ある意味、憧れだったりします。リカほどピュアに、真剣に自分の信じた、愛する人を求める気持ちを突き詰めるのは難しいと思うんです。そういう意味では、憧れというか、そんなふうにできたらいいなと思えるんじゃないでしょうか。
高岡:私はあんなに思い込まない、思いつめない。もうこの人じゃなきゃ駄目とか、全てに対して、そこまで執着することがないです。
彼女はああいうふうにしか生きられない。それは育ってきた環境もあると思うんですけど、リカは他を見ない。周りを見ることはしないです。
高岡:そうですね……。でも、思い込んで決めちゃったら、私もちょっと頑固なところがあるので(笑)。決めてしまったら、なかなか別の考えにならないかもしれないです。そこに行き着くまでには、いい意味で優柔不断に、いろいろと思いますけど。
高岡:リカほどの純粋は怖すぎますよね。何も周りが見えなくなっちゃっているし。「私を邪魔する人は要らない」なんて。怖いですよ。私たちは、ドラマや映画でリカと接しているから、みんな面白がっていますけど。
ドラマの最初のシリーズのときは共演の方々と結構笑いながら作り上げていったんです。1つ1つのカットがかかると「リカ怖い!」って、リカいじりをしていましたが、回が進むごとにどんどん登場人物がいなくなって、一人の世界になってしまって。リカについてみんなと話すこともなくなっちゃいました。本当に怖いですよね、あんな女性がいたら。なかなかいないと思いますけど。
高岡:そうなんです。リカはとにかくぶれていないんです。自分の中でしか通用しない常識だけど、それに絶対的な確固たるものを持っているから、そのぶれない考えをスパっと言われると、意外と間違ったことを言っているわけでもない。自分の中だけしか通用しないことだけど、他人に向けてみると、意外と通用していて、逆に諭されてしまうみたいな。その「ぶれなさ」に圧倒されるんじゃないでしょうか。
高岡:リカをもっとおどろおどろしく、見るからにサイコな人間に作り上げることもできたと思うんです。私が作り上げたリカはそういうことではなくて。もちろんサイコな役ですけれども、普通の人間と何ら変わりないというところ、あとは嘘がないというのを一番に考えていました。
結果それがよかったのだと思います。本当にピュアに見えるところ、めちゃめちゃ怖いところとか、いろいろなものが相まって、深みを増していると思うんです。とにかく嘘のないように、リカの気持ちが真っすぐに伝わるように、というところを大事にしていました。
いつも女優然としていると思われがち、でも全然そんなことはなく…
高岡:上に2人息子がいますけど、息子を育てていた頃よりも、同性だからこその難しさっていうものがあるんだな、というのを近頃感じてきていて。今年11歳になるんです。もうちょっと小さい頃は単純に、同性だから楽しみしかなかった。一緒に過ごしていても、将来のことを考えても、一緒にいろんなことできるなって楽しみでしかなかったんですけど、だんだん大人になってくる段階に差しかかると、つい男の子たちには求めなかった別のものを求めてしまったり。
それこそ今、ふと思い出したんですけど、リカのお母さん、麗美を演じていたときのせりふとまさに同じようなことを今、自分で言おうとして、びっくりしたんです。
「完璧じゃないと駄目なのよ」というせりふがあったんですが、今まさにそれを言おうとしちゃいました。いやだ、怖い(笑)。
話が飛んで、すみません。自分の娘が、もし自分の思う完璧により近づいたら嬉しいじゃないですか。私もつい求めてしまうけど、そこまで求めちゃいけない。そのバランス加減は難しいなと思い始めているところです。
高岡:最初のドラマシリーズのときに1話だけ見せました。ちらっと「今こんな仕事やっているのよ」って。この映画のチラシも冷蔵庫に貼ってあるので、知っています。「またママこんなのやってんの」って(笑)。ドラマはチラ見なんです。それが「雨宮リカ、28歳です」と言うせりふを聞いて、二度見していました。28歳? 何言っちゃってんの?みたいな(笑)。私の仕事については、きちんと見なくても、ママは楽しそうだし、OKみたいな感じです。
高岡:自分で発信している以上、それに対して誰かに何かを言われたりしたときに自分で責任持とうと思っています。ただ、誹謗中傷ということになってくると、それはまた全然違う問題になってきてしまいますが。
SNSは上手に付き合わないと、すごく怖いものだということは認識してやっていこうと思っています。
高岡:女優だから、と言われたりしますが、逆に女優って、それこそドラマの中でパジャマ姿にもなりますし、ほぼすっぴんだったりすることもあるし。だから、「すっぴんは見せられません」というのはおかしな話なんです。
汚い姿をわざわざ見せなくてもいいと思うし、あえて「すっぴんです」とやっているわけではなくて。楽しくて撮ったときが「たまたま、すっぴんだったわ。でも、これくらいだったらOKラインかな?」というものを選んでいます。
高岡:お会いしたことのない方からは、いつも女優然としているんだろうと思われがちなんですけれど、全然そんなことはなくて。逆にもっと女優然としていないといけないのかなと思ったりすることが私は多いんです。
高岡:だったらうれしいです。本当にそういうふうに思っていただけるのが一番うれしいですね。
高岡:コロナがまん延し始めて、一瞬、仕事がどうなるのかと危機感を持ったときもありました。私の仕事だけじゃなく、子どもたちも学校がオンラインになって、家にいることになって。こんなに長い時間を家族で過ごすのはどれくらいぶりだろう? こんなに密に過ごす時間は、もしかしたら今までなかったんじゃないかというくらいで。言い方が恥ずかしいけど、家族との絆というか、家族を思いやる気持ちだったり、みんなの知らなかった面を見たり、すごくいい時間を過ごせました。
うちの中もきれいになったし(笑)。お掃除をいっぱいする中で、足りないものや要らないものも分かったり。意外と、私たち家族にとってはいい時間を持てました。その時期に新しい犬も1匹来たし。世の中は大変でしたが、家族にとっては本当にいい時間でした。
高岡:そうですね。私も映画を撮影しながら、本当にずっとそう思っていました。家族、子どもがいて、大きな庭と大きな犬を飼って、みたいなせりふがあるんです。切なくて、切なくて。もう本当にごめんなさいって思っていました。私がリカを演じてごめんなさいって。でも、私でよかったね、とも思いました。それがどんなに幸せなことか、わかっていますから。
(text:冨永由紀/photo:谷岡康則)
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