東京都高円寺出身。フォークデュオ“HONEBONE(ホネボーン)”のヴォーカル担当。日本語にこだわったリアルな歌詞を歌い、これまでにアルバム5枚、ベストアルバム1枚をリリース。笑いあり涙ありのライブは全国で完売続出、歌のみならずEMILYのキレのあるMCも特徴的。個人のInstagramフォロワーは3万人を超え、中国・Weiboアカウントは開設わずか3日で2.6万人からフォローを受けるなど、SNS上でも話題を呼ぶ。キャラを生かしたメディア出演、New Balance、TOYOTA、BOSE等のWeb広告モデルなどマルチに活躍の場を広げる。バラエティ番組『家、ついて行ってイイですか?』の出演をきっかけに品川ヒロシ監督に見出され、演技未経験ながら、本作でスクリーンデビュー・初主演を飾っている。
『リスタート』品川ヒロシ監督×EMILYインタビュー
「この子しかいない!」熱烈オファーした監督と演技初挑戦のシンガーが号泣した理由とは?
『家、ついて行ってイイですか?』でEMILYを見てオファー/品川
お笑いコンビ・品川庄司として活躍する一方で、映画監督としても才能を発揮し、『ドロップ』『漫才ギャング』など数々の話題作を送り出してきた品川ヒロシ監督。最新作となる映画『リスタート』は自身初となる、女性主人公の物語。夢破れて故郷の北海道下川町に戻ってきた28歳の未央が、どん底からゆっくりと“リスタート”していくさまを描き出す物語だ。
主演の未央役にに抜てきされたのは、男女フォークデュオHONEBONEのボーカルを務めるEMILY。テレビ出演した際に、偶然目にした品川監督が「この子しかいない!」と熱烈オファー。初挑戦となった映画出演で、自然体の芝居と圧巻の歌声を響かせている。そこで今回は、この熱量高い作品をともに作りあげた品川監督とEMILYに話を聞いた。
・心が折れそうな貴方に贈りたい! 挫折した主人公の思いの丈を歌い上げたフォークソングに涙が…
品川:僕は結構ついていて「ドロップ」という小説がたまたま売れて、映画を撮ることができた。最初っから予算も潤沢にあったから、もちろん楽しかったし、しんどかったんですけど、全部が無邪気にできたんですよね。その調子でずっと映画を撮ってきた。でも今回の映画って、無名の役者さんも多くて。ほとんどインディーズ映画のようなものなので、予算も少ない、時間もないという条件の中で、結構ボロボロになりながら撮っていたんです。普通だったらスタッフさんとかから文句が出そうなものなのに、逆にスタッフさんや演者さんたちが「面白い映画をやりましょうよ」と言ってくれて。クラウドファンディングにも参加して、支援してくれた。そんなこともあって、この映画と実際の映画作りが結構リンクしてしまったんです。自分自身、特別な一本になりましたね。
EMILY:実はわたしも一緒に泣いていて……というよりも全員が泣いていたんですけどね(笑)。実は最近、品川さんの奥さまから、品川さんが泣いている時の写真を持っていないかと聞かれたんですけど、わたしも泣いていたから持っていなくて。他の演者に聞いたら、みんなも泣いてたから持ってなかったという。
私はその日のうちに帰らなくちゃいけなかったんですが、空港まで送ってもらった途中の夕焼けの景色がきれいすぎて。夕焼けを見ながら、1時間半ほどずっと泣いていました。まだみんなと一緒に現場にいたかったなと思って、熱いものがこみ上げてきたんです。
品川:僕は歌の映画を見るのがすごく好きなんですよね。だから今回も歌の映画にならないかなと思っていて。それから女性ボーカリストも好きなんで、最初は歌のうまい女優さんがいいかな、誰かいないかなと考えていた時にたまたま『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)に出ているEMILYを見て。いいなと思って連絡したんです。
EMILY:わたしは信じてなかったですね。この話は実現しないだろうなと。品川さんがそう思ってくれていても、会社的には起用するのは難しいかもしれないなとか。結構、現実的なことは考えました。でも音楽の面とか、何かしらの形でお手伝いできないか、というつもりでいたんで。だからまさか主演という形だとは思わなかった。それはちょっと想像を絶していました。
EMILY:ずっと照れてましたね。足を出したくない、とかも言っていましたし。役をもらえてありがたいという話だから、普通、俳優さんはそんなこと言わないじゃないですか。でもわたしはやっぱり生意気だし、何も知らないから。足を出すなんて嫌ですよとか、こんなんだったら死んだ方がましですよ、なんて言っていました。でも品川さんは何も怒ったりしないで、じゃこうしようか、とか、いろいろと柔軟に対応してくださって。本当に最初から最後まで、わたしがやりやすいようにやってくださったなと感じてます。
一歩ずつでもいいからどん底より上に、という思いで見ていただけたら/EMILY
EMILY:もう何が正解なのか分からないですね。でも監督がいいって言うんだから、もうそれを信じるしかないというか。わたしには役者さんみたいに感情をコントロールするとかはできないなと。今回はわたしに当て書きしてもらったんで。口調とかも自分っぽかったのでなんとかできましたけど、そういう面で役者さんってすごいなと思いましたたし、尊敬もありますね。
品川:特に何もやらなかった、というとあれですけど、「もっとこうやってくれる?」というよりは「こういう気持ちだよ」と言うようにしたということですかね。彼女は歌い手さんなんで。
EMILY:でも品川さんのおっしゃってることが本当に分かりやすいんですよ。全部が具体的で、確かにそうだなと思えたんで。それが本当に助かりましたね。
品川:たぶん、今までEMILYがパフォーマンスをする時も、歌う時も、お芝居をしていると思うんですよね。こういう表情でとか、この歌詞はこういう内容だから、こういう風に歌うっていうのをやっているわけだから。それを歌じゃなくてセリフにするだけなんだよ、という理解があれば、多分わかりやすいだろうなと思ったんで。今はこういう気持ちなんだよ、と伝える。そういう演出でした。言い方がどうというところは何ヵ所かありましたけど、そもそもがEMILYの言い方をイメージしてセリフを書いているから。そこにずれはない。あとは感情の問題で、ここがこういう気持ちだということを伝えれば良かったんです。
品川:KAWAGUCHIくんですか? まったくないですね。俺も何回か聞いたんですよ。二人の間に恋愛感情はないのとか、なんやかんやと。いろいろ聞いたりとかしたんですけど、全然ない。二人は仲はいいですけど、大輝みたいな感じでもない。
EMILY:大輝とはかけ離れていますけどね(笑)。
EMILY:確かにKAWAGUCHIは、大輝ほど分かりやすく背中を押してくれることはないけど、存在としては太陽のような、勇気をくれる存在なので。確か撮影が終わったあと、KAWAGUCHIに対して、私にとっては大輝だなとか言ったような記憶があります。
品川:僕は全く意識してなかったですけどね(笑)。
品川:映画を撮ってる時は、もちろんコロナのことも考えずに撮っていたんですけど、やっぱり今ってみんな生きにくい世の中じゃないですか。2年たって、たまたまなんですけど、そういう時期だからこそ刺さる部分もあると思うんです。自分自身も主人公が感じる最低のどん底という気分は常に刺さる部分があるので。でもそこからリスタートをして、また明日から元気になってもらえるような映画になったんじゃないかなと思います。
EMILY:本当は2年前、すぐに出したかったんですけど、延期となり悔しい思いもしました。でも2年たって、この間、試写で初めて見たときに、これは今、見てもらうべき映画だとはっきり思えて。今だからこそ響きやすいんじゃないかと思うんです。曲の歌詞にも「ただ、一歩ずつ」というフレーズがあるんですけど、本当に一歩ずつでもいいから、どん底よりは上に行きたいよね、という思いで見ていただけたらなと思っています。
(text:壬生智裕/photo:中村好伸)
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