1999年生まれ。本作『Summer of 85』のオーディションでオゾン監督に「彼こそアレックスだ」と言わしめ、主役に大抜擢された期待の新星。本作の演技が高く評価され、ダヴィド役のバンジャマン・ヴォワザンと共に、第46回セザール賞で有望若手男優賞にノミネートされた。その他の出演作は、TVドラマシリーズ『ル・シャレー 離された13人』(18年)、『スクールズ・アウト』(18年)など。
『Summer of 85』フェリックス・ルフェーブル インタビュー
2人の少年が出会い、永遠に別れるまでの6週間
監督と役者の関係はもちろん、フランソワとは友情と信頼の関係も築けるんだ。
フランソワ・オゾン監督が、運命的に出会った少年同士の、刹那の恋を瑞々しく描いた映画『Summer of 85』が8月20日に公開される。
1985年、フランス・ノルマンディー。セーリングをしに一人沖に出た16歳のアレックスは、突然の嵐でヨットが転覆し、18歳のダヴィドに救助される。2人はすぐに惹かれ合い、友情を超えた感情で結ばれる。互いに深く想い合い「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる2人。しかし、ダヴィドの不慮の事故によってその日々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった──。
フランスの巨匠、オゾン監督が、自身が17歳の時に出会い深く影響を受けたエイダン・チェンバーズの小説「Dance on my Grave」(邦題:おれの墓で踊れ)を映画化。
オーディションでオゾン監督に「彼こそアレックスだ」と言わしめ、主役に大抜擢された期待の新星、フェリックス・ルフェーブルにインタビュー。
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ルフェーブル:まずキャスティングディレクターのオーディションに臨んで、その翌日また呼ばれて、フランソワに会った。オーディションの時に渡された2つのシーン以外に何も知らない僕に、フランソワがプロットの一部をその時教えてくれたんだ。アレックスが主役だなんて全く知らなかったよ!
フランソワに、主役をできると思うか、スクリーンでゲイを演じても問題はないか、と訊かれた。もし1年か2年前の、僕が高校生の頃だったら、ちょっと戸惑っただろうね。だけど僕ももう大人になっていたし「自分のやりたいことをやる、絶対に尻込みしない」とずっと前に決めていたので、問題はなかったよ。
ルフェーブル:よく練られた、美しいドラマだなと。出会った頃のぎこちなさ、歩み寄り、初恋、成長、自己の解放……アレックスは人生の大事なことを一夏で経験する。経験した喜びと悲しみから人生を前進させる力をもらい、成長していく。フランソワに薦められて読んだエイダン・チェンバーズの原作から、アレックスの人物像について正確な情報を得ることができたけれど、大方は脚本にあるキャラクターをベースにしたよ。
ルフェーブル:初対面の時は「この人、ダヴィドにはまったく見えないじゃないか! それに僕と似ているし、兄弟って間違われないかな?」と思った。あとになって見ればとても恥ずかしいよ。率直に言って、彼との芝居は楽しかったから。のっけからこれほどウマが合うなんて、そうそうあることじゃない。この相性の良さには本当に安心感があって、演技をしたいと思わせてくれる。バンジャマンは素晴らしい相手役で、フランソワが僕らの相性を見極めていたなんて脱帽だよ。
ルフェーブル:アレックスにもっと年下の幼さを出すようにして、違いを出したんだ。フランソワは、バンジャマンにはもっと筋肉をつけるように、僕には少し体重を落としてくれと言った――10代の成長期って、痩せたがる子もいるから。バンジャマンと対比させるため、髪の色を明るくしてくれと言われた。そのほうが夏向きだし、感じがいいとフランソワは思ったんだろう。
結果的に、そういう違いを出したことが効果的だったと思う。少年っぽさの残るアレックスがダヴィドを兄のような、モデルのような、将来自分もこうなりたいと思うような理想の人物とみるのはごく自然だよ。
ルフェーブル:まずJ.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読んだ。フランソワが監督コメントで、アレックスのキャラクターはこの小説の魅力的な主人公ホールデン・コールフィールドを参考にしたと書いていたから。この本は僕のお気に入りの一冊になったよ。
あとフランソワに観てみるよう薦められたのは、80年代の雰囲気のよく出ている映画や、アレックスが見そうな死についてのドキュメンタリーや、『グリース』、『スタンド・バイ・ミー』、フランス映画の『ラ・ブーム』といった当時流行った映画。不器用なティーンエージャーが性と愛を知っていく『おもいでの夏』はすごく参考になった。それから『マイ・プライベート・アイダホ』とか『君の名前で僕を呼んで』とか、男同士の愛のドラマも見てみたくなった。
それと、よく知らないから80年代のポップミュージックも聴いてみた。面白いのは僕の母が全曲知っていたことだね。若かりし頃に戻ったみたいだったよ。
ルフェーブル:彼の監督スタイルはクリアでまったく迷いがない。けれど、役者の意見もちゃんと聞いてくれて、役者が工夫する余地を与えてくれる。監督と役者の関係はもちろん、フランソワとは友情と信頼の関係も築けるんだ。フランソワには気軽に自分の意見を言えたし、フランソワのほうもそう。だから、お互い誤解なんてなかった。
計画的で意思の強いフランソワは、役者にとっては頼もしい存在。さてどうしたものかと考えこむことなんてなく、ただ演じてみればいいのさ。フランソワの仕事は早いけど、彼のペースに合わせるのは、毎日顔を合わせていても苦にならないよ。
ルフェーブル:演じるキャラクターを深く掘り下げて考えさせてくれる、とてもパワフルな経験だった。撮影全般を通して、僕もアレックスと同じくらい変わったんじゃないかな。こういう役を演じたら、もう「自分にできるだろうか」なんて考えず、ただ自分の演じる人物と、その人物の口から出る言葉に全神経を集中させるようになる。
この映画の一部になれてとても光栄だよ。分かち合うことの大切さを伝える映画でもあるから、観る人とも分かち合えるといいな。
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