別のグループを「人食いだ」と怖れる…山岳民族の実態
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ドキュメンタリー映画『森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民』
6ヵ国語を自由に話し文字のないムラブリ語の語彙を収集する言語学者・伊藤雄馬と共にムラブリ族を追ったドキュメンタリー映画『森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民』が3月19日より公開される。このたび、予告編と新場面写真が届いた。
・人食い伝説で憎しみ合う密林の部族を和解に導く日本人学者がいた!
また、森に縁のある各界著名人がコメントを寄せた。
歌手でアーティストのコムアイは、「文化人類学/言語学のフィールドワークについていっているような感覚で見る映画でした。ムラブリの人たちのシャイな感じに見ているこちらも照れてしまう。けれど夜闇で火を囲むと、とたんに饒舌になり物語を語ってくれる姿が印象的でした。プロジェクトはまだまだ続きそう。どんな続編が出てくるのでしょうか!」と早くも続編に期待する。
文化人類学者の奥野克巳は、自身もマレーシア・ボルネオ島の同じく森の民プナンの調査を2006年から行っているという。「彼らもまた、平地では敗者のように見えるが、森に入ればグレート・ハンターとして、神々しく感じられることを思い出した。暑いのに涼しいし、ダラダラ過ごせて、なんとなく生きていける安心の森。森を愛してやまないムラブリの気持ちは、私には実によく分かる」と実感を語る。
映画誌・比較文学研究の四方田犬彦は、「国境を自在に横断するはずの幸福な民・ゾミアは、どこへ行ったのか。長きにわたってタイとラオスに分断され、お互いを知らず生きる山岳民族。かつてユーゴ内紛時に現地へ向かった金子遊は、ここでも政治による大地の分断、民族の国家への帰属強要に批判的な眼差しを向けている」とコメント。
ドキュメンタリー映画監督の北村皆雄は、「村へ行っても、なぜ森を思うのか? 森の生活とは何か? 僕はボルネオで、町に移住して結局森に逃げ帰って暮らす人たちがいたことを思い出した。森を捨てても豊かにはならないのだ」と体験も交えて語る。
火起こし世界チャンピオンの関根秀樹は、「古今東西の2万5千冊の本と1万冊以上の漫画を読んできたぼくだが、まだまだ見たことも聞いたこともない暮らしや道具や技術は無数にある。民族映像にはそうした未知の世界との出会いがあるからおもしろい。この映画でも、いくつもの”初めて”に出会えたし、他の民族や古代文化との共通点も見えた。何より、『黄色い葉の精霊』は40数年前、高校を出て初めて読んだ民族誌・地誌だった。民族文化が生み出されるのは長い時間がかかるが、消え去るのはあっという間だ。古代技術、民族技術の復原を研究するぼくにとって、定住化政策で失われつつある遊動民族のいまをとらえたこの映画は、知的好奇心を触発する知的放射能に満ちている」とコメントした。
文明社会に問いかける、密林の民のノマド生活
本作品は、伊藤と共にカメラが世界で初めて平地民から姿を見られずに森のなかを遊動する「黄色い葉の精霊」と呼ばれるムラブリ族の謎めいた生活を捉えた映像作品。ムラブリ族が言語学的に3種に分けられることをつきとめ、互いに伝聞でしか聞いたことのない他のムラブリ族同士に、初めて会う機会を創出。また、今は村に住んでいるタイのムラブリ族の1人に、以前の森での生活を再現してもらうなど、消滅の危機にある貴重な姿を映し出す。
タイ北部ナーン県のフワイヤク村は、300人のムラブリ族が暮らす最大のコミュニティ。男たちはモン族の畑に日雇い労働にでて、女たちは子育てや編み細工の内職をする。
無文字社会に生きるムラブリ族には、森のなかで出くわす妖怪や幽霊などのフォークロアも豊富だ。しかし、言語学者の伊藤雄馬が話を聞いて歩くと、ムラブリ族はラオスに住む別のグループを「人食いだ」と怖れている様子。
そこで、伊藤とカメラは国境を超えて、ラオスの密林で昔ながらのノマド生活を送るムラブリを探す。
するとある村で、ムラブリ族が山奥の野営地から下りてきて、村人と物々交換している現場に出くわす。それは少女ナンノイと少年ルンだった。地元民の助けを得て、密林の奥へとわけ入る──。
はたして、今も狩猟採集を続けるムラブリ族に会えるのか? 21世紀の森の民が抱える問題とはいったい何なのか?
『森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民』は、3月19日より公開される。
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