岸井ゆきの主演、三宅唱監督の最新作『ケイコ 目を澄ませて』。聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子をモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱が新たに生み出した物語だ。
2月に開催されたベルリン国際映画祭でプレミア上映されると「すべての瞬間が心に響く」「間違いなく一見の価値あり」と熱い賛辞が次々に贈られ、その後も数多くの国際映画祭での上映が続いている。今回、紹介する予告編からも、静かで熱い感動が伝わってくるはずだ。
・三浦友和、聴覚障害のプロボクサーと向き合い、自分は視力を失っていく…実話ベースの物語
三浦友和の温かな言葉に涙が込み上げる
ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと“目を澄ませて”闘うケイコ。三宅監督は、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けた。
主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。そして、ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。ケイコの心の迷いやひたむきさ、そして美しさ。全てを内包した彼女の瞳を見つめているうちに、自然と涙が込み上げてくる——。
予告編で描かれるのは、主人公・ケイコの心のざわめきと、まなざし。噓がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムを拠り所にする彼女は、トレーナーに「痛いのはきらい」と伝え思わず「正直やな」とツッコまれる。
弟から気持ちを聞かれても、「どうせ人はひとりでしょ?」と突っぱねる。そんな不器用な彼女には悩みが尽きない。「一度お休みしたいです」そう、会長へしたためた手紙を渡すことができず、うまく伝えることのできない思いを心の中に溜めたまま、ある日、ジムが閉鎖されることになり…。
「逃げ出したい、でも諦めたくない」そんな矛盾した感情に葛藤しながら、ひたむきに生きるケイコと、彼女を案じて寄り添うまわりの人々を、三宅唱が16mmフィルムのあたたかな質感でやさしく切り取る。「才能はないけど、人間としての器量がある」誰よりもケイコの実直さを認めている会長とシャドーボクシングをするラストカットで、いまにも溢れ出しそうな涙をこらえながら拳を突き出す彼女の瞳は、見るものの心を掴んで離さない。
またポスタービジュアルは、リングのふちに座りこちらに視線を送るケイコの“目”が印象的な1枚。そのまなざしや佇まいから、彼女が置かれている環境や心の声が浮かび上がる、エモーショナルなビジュアルに仕上がっている。
不安や迷い、喜びや情熱など、様々な感情の間で揺れ動きながら一歩ずつ、でも確実に歩みを進めるケイコの姿を、“目を澄ませて”見て欲しい。
『ケイコ 目を澄ませて』は12月16日より全国公開。
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