山崎樹一郎監督の新作映画『やまぶき』が11月5日より全国順次公開される。予告編の解禁に合わせて、国際映画祭での4つの受賞の報告が行われた。
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陽の当たらない場所に咲く「山吹」から着想
本作は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、山間で映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第三作。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに資本主義と家父長制社会の歪みに潜む悲劇と希望を描きだす群像劇にして、地方に生きる人々のつつましい抵抗を国際的な視座で描く。
また、フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(16年)でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。
かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める…、というストーリーが展開される。
本作は、政治的な主題を声高ではなく繊細に描く作風が評価され、今年5月に行われたカンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初めて選出される快挙を果たしたほか、多数の海外映画祭に招待されている。
長編デビュー作『ひかりのおと』(11年)では、故郷・岡山に戻り酪農を継ぐ若者の苦悩と葛藤を描き、『新しき民』(15年)では江戸時代の農民一揆を題材とし時代劇に挑戦した。『やまぶき』は、再び地元でロケをし初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。
チャンス役を演じるのは、イギリスで演劇を学び、今回初めての日本映画出演となる韓国人俳優のカン・ユンス。山吹役は、『サマーフィルムにのって』(21年)やNHKの『セイコグラム~転生したら戦時中の女学生だった件~』など話題作への出演が相次ぐ演技派俳優・祷キララ。その他に川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、松浦祐也、青木崇高らの実力派俳優たちが集結し、田舎町に暮らす人々のほとばしる生を体現している。
今回は予想外に展開する物語が垣間見える予告編が解禁。主人公の韓国人チャンスが岡山へ流れ着き、新しい家族と過ごす様子と、もう一人の主人公・山吹がサイレントスタンディングする様子から始まる。その後、オリヴィエ・ドゥパリの手がけたトイピアノの音色が流れる中、二人の人生が交錯し、予想外に展開していく物語の断片が映し出され、期待感の高まる予告編に仕上がった。
さらに9月は、第27回スプリト国際映画祭グランプリ、第19回ウラジオストク国際映画祭審査員賞、第18回ルッカ国際映画祭グランプリ、第8回ブラジリア国際映画祭最優秀男優賞(カン・ユンス)の4つの賞を相次いで受賞する快挙を果たした。10月は、14日から16日開催のロッテルダム国際映画祭(1〜2月にオンライン開催)のリアル上映に合わせて、山崎監督がオランダへ渡航する予定。
『やまぶき』は11月5日より全国順次公開。
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