息子が暴力を振るわれたのは誤解?安藤サクラが「誤解招いた」繰り返す教職員を問い糾す/話題作『怪物』の怒り心頭シーン
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永山瑛太の棒読み謝罪に安藤サクラがやり場のない怒り…
是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二が初タッグを組み、坂本龍一が音楽を手がけた映画『怪物』。第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作より、坂元節の効いた独特の会話劇を捉えた本編映像を紹介する。
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本作は、『万引き家族』(18年)の是枝裕和が監督、『花束みたいな恋をした』(21年)『大豆田とわ子と三人の元夫』の坂元裕二が脚本、そして『ラストエンペラー』(87年)で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、国内外を問わず第一線で活躍した坂本龍一が音楽を担当する奇跡のコラボレーション。
出演は安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら変幻自在な演技で観る者を圧倒する実力派と、2人の少年を瑞々しくかつ情感豊かに演じる黒川想矢と柊木陽太。さらに高畑充希、角田晃広、中村獅童など多彩な豪華キャストと、まさに怪物級の才能が一堂に集結した。
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先日開催された第76回カンヌ国際映画祭では、コンペティション部門の公式上映後に9分半ものスタンディングオベーションで称えられ、授賞式では坂元が脚本賞を受賞、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した。
本作の脚本を務めた坂元は、『東京ラブストーリー』でトレンディドラマの旗手として脚光を浴び、その後は作風を変化させながら、『Mother』『anone』といった社会派ヒューマンドラマや、『最高の離婚』『カルテット』といった笑って泣ける大人のラブコメなど、一つのジャンルに収まらない唯一無二の世界観を生み出してきた。カンヌ国際映画祭で自身初の脚本賞受賞に輝き、是枝演出のもとで綴られる物語にも注目を集める坂元だが、その独特な会話劇や数々の名セリフ、細部に遊びのあるやりとりを言葉巧みに描くスタイルは、本作においても確認できる。
紹介する本編映像は、息子の湊(黒川)が担任教師の保利(永山)から暴力を受けていることを疑ったシングルマザーの早織(安藤)が、学校へ説明を求めに行くシーン。校長室に案内された早織の前にぞろぞろと教師陣が入室。校長の伏見(田中)が担任教師の保利から謝罪をすると切り出すと、保利が座ったままか細い声で「え~…」と話し始める。すかさず、隣に座っていた教頭の正田(角田)がすかさず「立って」と指示する。
保利は立ち上がり、ボソボソとした小声で、かつ心のこもらない態度で謝罪を述べ始め、「誤解を生むこととなり申し訳ございませんでした」と早織に頭を下げる。すると周りの教師陣もタイミングを見計らったかのように一斉に立ち上がり、保利と共に頭を下げて謝罪する。あまりにその場しのぎの様子が見て取れる学校側の対応に、早織は不信感を露わにするも、校長は「指導が適切に伝わらなかったものと考えております」と回答。
早織は校長との対話を諦め、当事者の保利を問い詰めるが、目を見て真摯に問いかける早織に対し、保利は俯いたままティッシュを取り出し鼻をかみ始める。そんななか、校長は「誤解を招く点があったかと」とまるで心がこもっていない弁明を繰り返すのだった。シリアスな場面でありながら、役者陣の不自然な言動やしぐさが滑稽とさえ感じられる坂元ならではのエッセンスが散りばめられた一幕だ。
坂元の脚本執筆とキャスティングは平行して行われた。配役が決定することによって、坂元による脚本のキャラクターが膨らみ、物語がますますクリアになっていく過程を目の当たりにした是枝監督は、「こうやって坂元さんは本を固めていくんだな」と感心したと語る。
また、自身の脚本と坂元による脚本の違いについて、「今回は構造も含めて、非常にしっかりとした物語ですよね。僕が普段書くものは“スライス・オブ・ライフ”なんです。日常を切り取り、描写して、その前後を想像させるようなものが多いから、それはたぶん物語ではない。今回も描写の力で持たせているシーンは多少あるけど、基本的に言えば劇映画だと思います。物語のラインが非常に強くて、太いんじゃないでしょうか」と考えを明かしている。
映画『怪物』は6月2日より全国公開。
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