障害者施設が森の中にある理由は「隠されているのよ。誰も現実を見たくないから…」二階堂ふみの言葉から不穏な空気漂う『月』予告編
障害者施設の現実は、暴力と虐待…「いのち」をめぐる戦いが展開していく
主演に宮沢りえ、共演にオダギリジョー、磯村勇斗、二階堂ふみを迎え、石井裕也が脚本・監督を手がけた映画『月』。第28回釜山国際映画祭ジソク部門(Jiseok部門)への出品も決定した本作より、衝撃の予告編映像を紹介する。
・「宮沢りえの演技は私たちを見事に納得させた」重度障害者施設を舞台に描く『月』が釜山国際映画祭ジソク部門に選出!
原作は、実際の障害者殺傷事件をモチーフにした辺見庸による同名小説。事件を起こした個人を裁くのではなく、事件を生み出した社会的背景と人間存在の深部に切り込まなければならないと感じたという著者は、〈語られたくない事実〉の内部に潜ることに小説という形で挑戦した。
監督を務めたのは、コロナ禍を生きる親子を描いた『茜色に焼かれる』(21年)、新作『愛にイナズマ』(23年)など、常に新しい境地へ果敢に挑み続ける石井裕也。10代の頃から辺見の作品に魅せられてきた彼は、原作を独自に再構成し、渾身のパワーと生々しい血肉の通った破格の表現としてスクリーンに叩きつける。
深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢)は、“書けなくなった”元・有名作家だ。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリ)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。
施設職員の同僚には作家を目指す陽子(二階堂)や、絵の好きな青年さとくん(磯村)らがいた。そしてもうひとつの出会い──洋子と生年月日が一緒の入所者“きーちゃん”。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない“きーちゃん”のことを、洋子はどこか他人と思えず親身になっていく。
しかし、この職場は決して楽園ではない。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく。そして、その日はついにやってくる。
紹介する予告編は、重度障害者施設の日常から始まり、新たな命を宿した主人公・洋子(宮沢)と、「2人で頑張ろう!」と胸を張る夫の昌平(オダギリ)の姿が映し出される。そして新生活に向けて歩み出すところから一変し、「知ってる? 施設は森の中にあるの。隠されているのよ。本当は誰も現実を見たくないからでしょ」という陽子(二階堂)の言葉から、不穏な空気が漂い始める。
洋子が見た障害者施設の現実は、暴力と虐待。次第に疲弊していく洋子に声をかけたのはさとくん(磯村)だった。「変えたほうがよくないですか?」と真っ直ぐに洋子を見つめ、衝撃的な行動に出るさとくんと、取り乱しながらも「私はあなたを絶対に認めない」と人を傷つけることを否定する洋子。両者の「いのち」をめぐる戦いが展開していく。
「この映画の刃はあなたに向けられている」。目を背けたくなるが目が離せない衝撃の描写から、最後に語られる「生きててよかった」という一言。果たして洋子は、この現実から希望を見出していくのか?
『月』は10月13日より全国公開。
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