ハンカチで口を抑える春画の鑑賞マナーも…どこか艶っぽい?
内野聖陽が主演し、塩田明彦が原作・脚本・監督を手掛ける映画『春画先生』より、内野、北香那、柄本佑、安達祐実が春画を真剣に凝視する、過激なのに思わず笑ってしまう特別映像を紹介する。
・[動画]安達祐実、妖しい含み笑い!?放送禁止音だらけの春画鑑賞会/映画『春画先生』特別映像
江戸文化の裏の華である春画の奥深い魅力を真面目に説く変わり者の春画研究者と、しっかり者の弟子が繰り広げる春画愛をコミカルに描く本作。主演に内野聖陽、ヒロインに北香那、共演に柄本佑、白川和子、安達祐実を迎え、『さよならくちびる』(19年)『月光の囁き』(99年)の塩田明彦が監督・脚本を手掛ける。
“春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎(内野)は、妻に先立たれ世捨て人のように、1人研究に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子(北)は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村俊介(柄本)や、芳賀の亡き妻の姉・一葉(安達)の登場で大きな波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった──。
春画は江戸幕府から禁制品で表に出なかったからこそ、自由な創作が可能となり、とどまることを知らぬ芸術の域に達し、真の江戸時代のエンターテイメントとして庶民から大名までを虜にした。これまでその取扱いは日本映画でもタブーとされ、性器部分の描写は映倫審査でボカし加工が必要だった。しかし、本作は、映倫審査で区分「R15+」として指定を受け、商業映画として全国公開される作品としては、日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写が実現した。
今回紹介するのは、葛飾北斎の春画代表作として有名であり、本作でも重要なシーンで登場する「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」“蛸と海女”鑑賞シーンの特別映像。薄暗い部屋で語り部が「喜能会之故真通」“蛸と海女”に書かれている詞書(ことばがき)を読み上げ、芳賀一行(内野、北、柄本)が回転して流れてくる春画“蛸と海女”を、春画の鑑賞マナーに習い、ハンカチで口を抑えながら真剣に鑑賞する。その姿もどこか艶っぽい。
詞書は主に、絵の主題や物語を説明するもの。葛飾北斎は絵師として天才であることは周知の事実だが、同時にオノマトペの天才でもあった。北斎自身が書いたこの詞書は、「ちゅ、ちゅちゅ」「アアァ」「ズウッ」といった聞いている側が恥ずかしくなるようなオノマトペに溢れ、より春画を楽しく鑑賞できる内容となっている。本映像では、あまりに過激な内容のために放送禁止音が挿入されているが、本編では放送禁止音なしの映像を見ることができる。
春画を鑑賞している途中、弓子(北)が何かに気づき、遅れて芳賀(内野)と辻村(柄本)もそれに気づいた目線の先には、亡くなったはずの芳賀の妻・伊都と瓜二つの顔が。その正体は、伊都の双子の姉・一葉(安達)であった。一葉と相対した芳賀一行は…。
とても公には公開できない「喜能会之故真通」“蛸と海女”の詞書全文は以下となる。
■葛飾北斎“蛸と海女” 詞書(背景文字)・全文
「いつぞは いつぞはと ねらいすましていた かいがあって きょうというきょう、とうとう とらまえたあ
ても むっくりとした いいぼぼだ。
いも(芋)よりもお こうぶつだ。
サアサア、すってすって
すいつくして
たんのうさせてから いっそりゅうぐうへ つれていって かこって おこうす」 「くちニテ、ズウツ、ズフズフ、チュッ、チュチュッ、 ズウッズウッ フフフフウ。 「アレ、にくいタコだのう、フフフフ、いっそ アアアアア おくのつら子つぼのくちを吸われるので、 息がはずんで、アア エエエ モ、イック。 それなアいぼでエエ、フウフウ、いぼでエエ、フウフウ、 そら、われをいらいらと、オオオオ、アレアレ、
こりゃア どうするのだアア」
「ヨウ、オオオオオオ。
ホオオ アアレエ、オオオオ、いいいい、オオいいいいいい、 ハアアアア、いいいい、ハアいい、フフフフウ、
フフフフウ、
まただ ヨウヨウ ヨウヨウ、いままでわたしをバ、 人がアアフフフウ アアフフフウ
たこだ たこだといったのが オオ、フフウフフウ」 ズウズウズウズウ、ひちゃひちゃ、ぐちゃぐちゃ、 じゅうちゅう、ちゅちゅちゅ、ぐうぐう、ズウズウ、
なんと 八ぽんのあしのからみ あんばいは どうだ どうだ。 あれあれ、仲がふくれあがって、アア アア」
『春画先生』は現在公開中。
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