“学校崩壊”を目の当たりにし「絶対に教師にはなりたくないと誓いたくなる」白石和彌監督らが『ありふれた教室』を絶賛
わずか数日間で学校の秩序が崩壊…教育現場を舞台に描くサスペンススリラーの予告編が公開
本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たしたドイツの新鋭イルケル・チャタク監督最新作『ありふれた教室』より、日本版予告編、本ビジュアル、場面写真が公開された。
・わずか数日で学校の秩序は崩壊した モンペ? 生徒の反抗? 対立? 若手教師が絶望するまで…
“学園もの”の映画について誰もが連想するのは、教師と生徒の心温まる交流を綴った感動作、少年少女の友情や成長を描いた青春ドラマなどだろう。ドイツから新たに届いた『ありふれた教室』は、まさしく現代の中学校を舞台にした学園ものだが、このジャンルのポジティブなイメージを根こそぎ覆す破格の問題作だ。
・[動画]職員室を隠し撮りした新任女性教師が窮地に追い込まれていく/映画『ありふれた教室』日本版予告編
ある新任女性教師の視点で進行する物語は、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊してしまう異常な事態へと突き進んでいく…。
第73回(2023年)ベルリン国際映画祭パノラマ部門でワールドプレミアされW受賞を果たしたのを皮切りに、ドイツ映画賞主要5部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞)の受賞を達成、米辛口映画レビューサイト「ロッテン・トマト」では96%FRESHという高得点を獲得しており、世界の映画祭を席巻。
さらには本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たした本作は、これが日本劇場初公開となるドイツの新鋭イルケル・チャタクの長編4作目にあたる最新作だ。
チャタク監督は教育分野で働くさまざまな人々へのリサーチを行い、自らの子ども時代の実体験も織り交ぜてオリジナル脚本を執筆した。誰にとっても馴染み深い学校という場所を“現代社会の縮図”に見立て、正義や真実の曖昧さをサスペンスフルに描ききったその試みは、ミヒャエル・ハネケやアスガー・ファルハディといった名匠の作風を彷彿とさせる。
主演のレオニー・ベネシュはハネケ監督の代表作『白いリボン』で注目され、『THE SWARM/ザ・スウォーム』『80日間世界一周』などのTVシリーズで活躍する実力派女優。次々と重大な選択や決断を迫られるカーラの葛藤を生々しく体現した本作でドイツ映画賞主演女優賞の受賞を果たし、ヨーロッパ映画賞女優賞にもノミネートされた。
『ありふれた教室』が追求した多様なテーマは、教員のなり手不足や過酷な長時間労働、モンスター・ペアレンツなどの問題がしばしば報じられる日本社会とも無縁ではない。
教育現場のリアルな現実に根ざし、世界中の学校やあらゆるコミュニティーでいつ暴発しても不思議ではない“今そこにある脅威”を見事にあぶり出す、極限のサスペンス・スリラーが誕生した。
解禁となった本ビジュアルは、真っすぐこちらを見つめる若手教師カーラの意味深な眼差しを捉えたもので、違和感を覚える表情と併せて「先生(わたし)、おかしい?」というキャッチコピーが添えられている。一体何がおかしいのか、学校に潜む“光”と“闇”とは何か、果たしてカーラはどうなってしまうのか。謎めいた不気味さが漂うビジュアルとなっている。
併せて場面写真も到着。教室で叫ぶカーラの姿や中指を立てる生徒等、張り詰めた空気の中、様々な姿が切り取られている。予告編では、ただならぬ緊張感を漂わせながらカーラが次第に窮地に追い込まれていく様子が描かれる。
彼女は、盗難が相次ぐ校内で生徒を守るために職員室で隠し撮りを仕掛けたのだ。それをきっかけに生徒の反乱や同僚教師との対立が起こり、保護者からも猛烈な批判を浴びるカーラ。目にアザをつけた様子も垣間見える…。緊迫感とともに引き込まれていく予告編が完成した。
また、いち早く本作を鑑賞した著名人たちよりコメントも到着。映画監督の白石和彌は「感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ。」と絶賛。ドイツ文学翻訳家の池田香代子は「とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!」と、映画の中で描かれる教室と我々が生きる現代社会の相似性に焦点をあてた。
他、小島秀夫、森達也、瀬々敬久らから賞賛のコメントが届いた。見る者の倫理観が試される驚愕のラストは、スクリーンで確かめたい。
■白石和彌(映画監督)
恐ろしい。目まぐるしく起こる出来事の連鎖に翻弄され、見ているこちらもすり減っていく。教育現場での地獄めぐりを体感させられ、絶対に教師にはなりたくないと誓いたくなる。しかし、本当に恐ろしいのはラスト数分、いや数秒で全てがひっくり返る瞬間だ。感じたことのない凄まじい余韻。今年の間違いなく必見の一作だ。
■小島秀夫(ゲームクリエイター)
こんなにも息苦しくなる映画はない。最後の最後まで、これでもかと胸や胃を締めつけられ、ラストでは絶望の淵に落とされる。些細な事から、ありふれた学校が憎しみの場所へ、制御の効かない無法地帯へと変貌する。この何処にでもある“教室の崩壊”の経緯を目撃してしまうと、「現実世界からもはや紛争や争いは未来永劫になくならないのでは?」と結論づけざるをえない。鑑賞後の後味の悪さは、“ありふれた映画”のものではない。ご注意を。
■森達也(映画監督/作家)
あまりにも凝縮された99分。最後まで目を離せない。音楽の使いかた、言葉の一つひとつ、教室と職員室を行き来するカメラワーク、子どもたちのちょっとした仕草、映画を構成するすべての要素が、ありえないほどの完成度に達している。
■池田香代子(ドイツ文学翻訳家)
些細なミスの重なりが、収拾不能の事態を招く。いったいどうすればよかったのか。とほうに暮れて見回すと、あの教室と相似の社会が私たちを取り巻いている。こんなミステリーがあったのか!
■瀬々敬久(映画監督)
学校だけで民族差別や貧困格差と監視社会の危機を描き切っている。
冷徹に見守りながら至るラストの衝撃。決して問題は解決してない。だが、少しだけ前へ進んだのだろうか。自分たち世界の向き合い方が示された気がした。
『ありふれた教室』は5月17日より全国公開。
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