学校、それは子どもたちの戦場。没入感すごすぎで緊迫感マックスに

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(C)2021 Dragons Films/ Lunanime
『Playground/校庭』
『Playground/校庭』

7歳の少女の葛藤、そして恐怖にも似た不安心理をあぶり出す

第94回アカデミー賞国際長編映画賞ショートリストへの選出を果たしたベルギーの新鋭ローラ・ワンデル監督の長編デビュー作『Playground/校庭』が公開されることが決定した。本作より特報とティザービジュアル2種を紹介する。

・日本の公立小学校は世界一!公立小学校の1年間を映し出した話題作の監督が思い語る

大勢の子どもたちが教室で学び、休み時間に校庭を元気よく駆け回る学校は、みずみずしい生命力に満ちあふれた場所だ。ところが小さな子どもの目を通してその日常を写し取ると、多くの大人たちが抱くイメージは打ち砕かれる。本作は、どこにでもありそうな小学校の敷地内に舞台を限定し、全編を主人公である7歳の少女の視点で紡ぎ上げた生粋の“学校”映画だ。その徹底された演出手法は、さながら没入型のスリラー映画のような並外れた緊迫感と臨場感を生み、子どもにとってあまりにも過酷な現実を生々しくあぶり出す。

7歳のノラが小学校に入学した。しかし人見知りしがちで、友だちがひとりもいないノラには校内に居場所がない。やがてノラは同じクラスのふたりの女の子と仲良しになるが、3つ年上の兄アベルが大柄なガキ大将にイジメられている現場を目の当たりにし、ショックを受けてしまう。優しい兄が大好きなノラは助けたいと願うが、なぜかアベルは「誰にも言うな」「そばに来るな」と命じてくる。

その後もイジメは繰り返され、一方的にやられっぱなしのアベルの気持ちが理解できないノラは、やり場のない寂しさと苦しみを募らせていく。そして唯一の理解者だった担任の先生が学校を去り、友だちにのけ者にされて再びひとりぼっちになったノラは、ある日、校庭で衝撃的な光景を目撃するのだった…。

『Playground/校庭』

1984年、ブリュッセル生まれのローラ・ワンデル監督が鮮烈な長編デビューを飾った本作は、第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、国際批評家連盟賞を受賞。さらに、ロンドン映画祭で新人監督賞に輝くなど、世界中で29の賞を獲得し(2024年11月時点)、第94回米アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストにも選出された。大人にはうかがい知れない子どもの世界を、斬新なスタイルで捉えたその映像世界は、驚くべき密度の映画体験を実現し、アーティスティックな完成度の高さにおいても傑出した出来ばえとなった。

本編わずか72分のミニマルな本作は、初登校の日を迎えた主人公ノラが兄のアベルに抱かれて泣きじゃくっているファースト・ショットから、見る者の目を釘付けにする。内気なノラにとって見知らぬ子どもたちがあちこちで叫び声を上げ、無闇に走り回っている学校は、まさにカオスそのものだ。その未知なる混乱のまっただ中に投げ出されたノラは、どうやって友だちを見つけ、集団生活に馴染んでいくのか。しかも他者との関係を育む過程においては、同級生に残酷なことを言われたり、ふとしたことで仲間外れにされることもある。

「この作品の目的は、イジメの原因を追及することではない。誰かを非難することでもない」。そう語るワンデル監督は、社会の縮図でもある学校をあたかも戦場のように描き、そこでサバイブするためにはもう純真無垢ではいられない子どもたちの葛藤と恐怖、そして幾多の苦難の果てに変化、成長を遂げていく姿を映し出した。

また、ドキュメンタリーと見まがうほどの迫真性に貫かれた本作は、ヴィジュアルも音響もすべてが緻密に構築されたフィクションである。ワンデル監督はあらゆるショットを子どもの目の高さに設定し、被写界深度が極端に浅く、視野の狭い映像によって、見る者にノラが見聞きすることを疑似体験させる。そうして100%ノラの視点で撮られたこの映画は、親や先生といった大人は子どもの目にどう映るかという描写も盛り込まれ、多くの発見をもたらすサスペンスフルな一作に仕上がった。

『Playground/校庭』

ちなみに、一切の無駄をそぎ落としたシャープな作風が印象的なワンデル監督は、ベルギーの偉大なる先達であるダルデンヌ兄弟はもちろん、アッバス・キアロスタミ、ブリュノ・デュモン、ミハエル・ハネケ、シャンタル・アケルマンの作品にインスピレーションを得たという。ダルデンヌ兄弟が製作を務める次回作『L’intérêt d’Adam』の完成も楽しみな才能である。

ノラに扮したマヤ・ヴァンダービークの演技にも驚嘆せずにいられない。キャスティングのセッションに参加した約100人の中から見出された小さな主演女優が、このうえなく繊細にして豊かな感情表現を披露する。そして『あさがくるまえに』(16年)『またヴィンセントは襲われる』(23年)のカリム・ルクルーがパパ役、『神様メール』(15年)『ハッピーエンド』(17年)のローラ・ファーリンデンが担任教師役で映画に奥行きを与えている。

今回紹介する特報では、7歳のノラが校内を歩く後ろ姿を、子ども目線の低い位置から追うシーンが連続して切り取られている。本作全体を貫く低い位置からのカメラワークにより、見る者を小学校の校内へと引き込み、ノラの経験を追体験させる。果たして小さなノラは何を目撃し、心に抱え、どう行動するのか? 「優しくも、残酷な<世界>」を生き抜く姿を垣間見せる特報が仕上がった。

あわせてティザービジュアル2種も解禁。ひとつは「あなたは再び、<あの世界>を体験するー」というキャッチコピーとともに、ノラがこちら振り向く姿を切り取ったもの。もうひとつは「世界にふれる」のキャッチコピーとともに、ノラが目隠しをして遊んでいる姿を捉えたもの。どちらもフランス語の原題『Un Monde(ある世界)』が表す、子どもたちにとって学校は初めて触れる広い世界であり、大人になるための入り口であるというメッセージが込められたビジュアルおよびキャッチコピーとなっている。

『Playground/校庭』は2025年3月7日より全国公開。

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