ニュートン作品が表現した「#KuToo」問題
シャーロット・ランプリング、イザベラ・ロッセリーニらが語る“20世紀を最も騒がせた写真家”の知られざる素顔と、撮影の舞台裏『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』。 ニュートン作品が表現した「#KuToo」問題!今こそ問われる、表現におけるポリティカル・コレクトネス。
長年にわたって一流ファッション誌で女性を撮り続けたファッション・フォトグラファーの世界的巨匠ヘルムート・ニュートン。2004年にロサンゼルスで自動車事故により不慮の死を遂げた後も、長く人々の記憶に残り続けている写真家のひとりだ。今年はニュートンの生誕100年にあたる。本作は、彼の作品世界を、シャーロット・ランプリング、イザベラ・ロッセリーニ、アナ・ウィンターといったニュートンにインスピレーションを与えた女性たちの目線から再評価するドキュメンタリーである。
50年代半ばからファッション誌にユニークかつ衝撃的な作品を次々と発表したヘルムート・ニュートン。フェティシズムとデカダンスを特徴としたニュートンの強烈な作風は、ときに「ポルノまがい」「女性嫌悪主義」との議論も巻き起こすこととなった。
この度、公開された映像では、今ならば「炎上」と言われたであろう、95年に発表されたニュートン作品とその反響について、写真のモデルを務めた90年代のスーパーモデルの一人であり、<最も足の長いモデル>としてギネスブックにも登録されたドイツ人モデル、ナジャ・アウアマンが語っている。
「女性がハイヒールを履けば、速く走れないし、逃げる事もできない。脚はヨロヨロ。彼はそれを写真で表現した」と語る内容からは、昨今話題となっている「#KuToo」を彷彿とさせる。ファッション写真でそれを表現するためにニュートンが用いたのは、車椅子や医療用コルセットであった。しかし、その写真が米国版VOGUEの誌面で発表されると、「足が不自由な人に対して失礼だ」という批判が殺到したという。アウアマン自身は「素晴らしい写真で、ニュートンはとてもいい仕事をした。でも馬鹿らしいことに、今風に言うと“炎上”した」のだと振り返る。
これは近年アートにおいても何が正しいかが重視される「ポリティカル・コレクトネス」に通じる問題であり、またニュートンがいかに女性の身体について意識的だったかを示すエピソードだろう。ぜひこの機会に、本作を通じてヘルムート・ニュートンの作品を見直してみてほしい。
『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』は2020年12月11日公開
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