オリンピックに奪われた生きる場所『東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート』予告編

#オリンピック #ドキュメンタリー #五輪 #大友良英 #東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート #青山真也 2021.07.12

自分たちがどいたから、オリンピックができてる。だから我慢した

東京ドキュメンタリー特別賞受賞作品『東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート』が2021年8月13日より公開される。オリンピックに翻弄されたアパートの住民と、五輪によって繰り返される排除の歴史を追ったドキュメンタリー作品だ。本作より、予告編が届いた。

・ああ無観客！ 8万人収容するための国立競技場建設で立ち退きを迫られた住民たちの悲哀

公開された映像では、悲痛な思いを語る住民の後に「1964年のオリンピックの時に建てられたアパートは東京2020オリンピックのために壊された」という文字が浮かび上がり、スタートする。平和に暮らす住民の元に一方的に移転の通達が届く。立ち退きを強いられた住民たちのアパートでの最後の生活の記録。

「先のオリンピックのとき、１回だけ見に行きました。自分たちがどいたからここまでオリンピックできてるんだ。協力したつもりで我慢しようという事でした」。1964年東京オリンピックで1度目の立ち退き、そして人生で2度目の転居を余儀なくなれた男性が訴える姿も映し出されている。オリンピックはいつまで彼らの生活を奪い続けるのだろうか。オリンピックが迫る今、本ドキュメンタリーとしっかり向き合い、考えたい。

監督・撮影・編集は、本作が劇場作品初監督となる青山真也。音楽は、人気ドラマ『あまちゃん』（2013年）の音楽でレコード大賞作曲賞を受賞した大友良英が務めた。

オリンピックに振り回される人生を映し出す

明治神宮外苑にある国立競技場に隣接した都営霞ヶ丘アパートは、10棟からなる都営住宅。1964年のオリンピック開発の一環で建てられ、東京2020オリンピックに伴う再開発により取り壊された。平均年齢が65歳以上の高齢者団地であるこの住宅には、パートナーに先立たれて単身で暮らす人や身体障害を持つ人など様々な人たちが生活していた。団地内には小さな商店があり、足の悪い住民の部屋まで食料を届けるなど、何十年ものあいだ助け合いながら共生してきた。しかし2012年7月、このアパートに東京都から一方的に「移転のお願い」が届く。

2014 年から 2017 年の住民たちを追った本作には、移転住民有志による東京都や五輪担当大臣への要望書提出や記者会見の様子も記録されている。