ピアニストで人気YouTuberのハラミちゃんが、12月31日に放送される第72回NHK紅白歌合戦(以下、紅白)へ初出演することが内定したと、スポニチアネックスが報じた。同ニュースが報じられるや、ハラミちゃんの紅白出演に対してネット上で賛否両論が巻き起こっている。
・2020年記事:AKB組が紅白落選、響いたコロナ禍? 時代の流れを考察する
大物と共演、武道館ワンマンライブ…大人気YouTuberハラミちゃん
ハラミちゃんは、OLから転身し、ピアニストYouTuberとして主にストリートでの即興ピアノの動画をアップ。YouTube公式チャンネルの登録者数が184万人以上、アップした動画の総再生数は4.1億回以上に達する(10月26日現在)。
絶大な人気を受け、10月22日に黒柳徹子の名物トーク番組『徹子の部屋』への出演をはたした他、10月26日夜にはX JAPANのYOSHIKIと対談。2022年1月には武道館ワンマンライブも決定している。
既報によれば、紅白でハラミちゃんは、紅組の出場者ではなく、大物ミュージシャンとの共演、視聴者のリクエストに即興で応えて演奏するなど、さまざまな出演が検討されているという。
しかし、大手ニュースポータルサイトやSNSでは賛否両論真っ二つ。「プロかどうかもわからない人を出すのはどうなんだろう」「(紅白に出場させるのを)なぜプロのピアニストにしないのか? 辻井伸行さんのピアノが聴きたい!」という反対意見がある一方、「ハラミちゃんが紅白出るなら見てみたい」という賛同の声、はたまた「日本ってつくづく嫉妬の文化」という意見も出ている。
紅白の価値、安くなった? CD文化衰退で人気歌手の査定困難?
紅白関係者は近年、出演者の選考は「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」の3つを中心に行っていると口酸っぱく説明する。しかしハラミちゃんの一件を受けて「紅白の基準があいまい過ぎる」「選考基準が迷走している」「選考が不透明」と批判が生じている。
音楽主体の紅白は、その年活躍した歌手が主役だ。人気歌手が一堂に会する年に一度の祭典だからこそ、高い視聴率を誇る。
だが近年はこの“人気”の定義・評価が難しくなってきている。平成中期頃までは、音楽コンテンツを視聴する媒体はCD販売が主流だった。CDの売上枚数が人気や実力のバロメーターになっていた。だが平成中期から令和にかけてデジタルコンテンツが主流になり、AKBグループに代表される握手会参加券付きCDなどが台頭。SpotifyやAmazon Music、Apple Music、YouTubeでの視聴も一般的になった。これにより“CDの売上枚数=人気・実力のバローメーター”というシンプルな図式が崩れ去り、万人に受ける流行が捉えづらくなった。
また、メディアの多様化により、紅白自体も視聴率が年々減少。平均視聴率(関東圏)は40%を切るようになっている。視聴率低迷と平行して、“応援演出”という形でその年人気を博したタレントやお笑い芸人の出演が増加。歌手たちの歌唱の意義が薄れつつある(同演出も長年是非が議論されている)。昨年はコロナ禍で応援演出枠が控え目になった印象があるが、感染者数が激減した現状が継続するなら、話題づくりでこの枠の出演者が増えると考えられる。
今回のハラミちゃんの一件は、奏でる音楽の評価以外に、長年続くこの応援演出への賛否両論の渦に巻き込まれた印象も受ける。
NHKは国民から受信料を徴収し、視聴率の心配をする必要はない公共放送局だが、話題づくりを敢行する。そんなNHKが主導し、過去にも様々なコラボレーションを実現してきた紅白は、一体どこへ向かうのか…?
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