アラブ各国で愛され、数多くのミュージシャンがカバーする「我が祖国」を特別公開
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2・11公開『国境の夜想曲』劇中歌
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13年)と、『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(16年)でベルリン、ヴェネチアを2作連続でドキュメンタリー映画で初めて制した名匠ジャンフランコ・ロージ監督最新作『国境の夜想曲(原題:NOTTURNO)』が2月11日から、全国で公開される。
同作はロージ監督が3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影した。
ここでは2001年の9・11アメリカ同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、最近ではアメリカのアフガニスタンからの撤退と、今に至るまで侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている。
同作のエンドロールと本編の途中でも流れる印象的な曲「我が祖国(Mawtini)」。作詞を手掛けたイブラヒム・トゥーカンはパレスチナの著名な詩人で、作曲のムハンマド・フリーフィルはレバノンの作曲家であり、現在のシリア国歌の作曲も手掛けている。
・このたび公開サラ他『国境の夜想曲』劇中歌 アラブを横断して様々な国で愛される「我が祖国」特別映像はコチラ!
「我が祖国」はアラブでは広く知られた歌で、1934年にパレスチナで詩が書かれ、パレスチナ民族解放の象徴のように語られてきた。
パレスチナはその後いくつかの曲が国歌として制定されたが、人々は「我が祖国」を愛唱しつづけ、パレスチナの実質的国歌とも言われている。
また、イラクでも1924年にイギリス人将校が作曲した国歌に始まり、いくつもの曲が国歌とされてきたが、2004年のサダム・フセイン政権崩壊後に連合国暫定当局代表が「我が祖国」を国歌と定め、現在に至るが法的な根拠はないとされる。
サッカーのワールドカップなどではイラク国歌として選手たちが「我が祖国」を歌っている。またシリアとアルジェリアでも、パレスチナを支持するため国歌に準じるものとして扱われていた。
アラブ全域で高い人気を誇り、数多くのミュージシャンが本曲をカバーし、Youtubeで「Mawtini」の曲名で検索するとカバーアーティストの多さと再生回数に目を見張る。
同作ではヨルダンの歌唱コンテストで優勝したSaja Al-Maghasbaという女性ミュージシャンが2012年に発表したカバーバージョンを使用している。
「我が祖国よ 栄光と美しさ、崇高さと壮麗さ それがあなた(祖国)の丘にある 生命と解放、歓喜と希望 それがあなたの空にある」「私たちは決して望まない 永遠に続く屈辱も みすぼらしい人生も だから取り戻す」という歌詞が印象に残る。
冬季オリンピック開幕直前の今、「祖国」を考える契機に
同作の中でロージ監督は、政治風刺劇が演じられ、紛争で傷ついた人々が身を寄せる精神病院の場面で、紛争のニュース映像とそこに入院する患者たちのクローズアップとともにこの歌を流している。
それはどんな意味を持つのだろうか。紛争に明け暮れるアラブの悲しみと未来への希望をロージ監督はこの歌に託しているかのようだ。
まもなく冬季オリンピックが開幕する今、各国の国歌を聞く機会が増えるだろう。
平和の祭典でもあるオリンピックの中だからこそ、スポーツでの戦いではなく、内戦、紛争、テロが繰り返し行われている中東の地に、本当の平和が来る日を祈るのも一興ではないだろうか。
名匠ジャンフランコ・ロージ監督の最新作『国境の夜想曲』は、2月11日から全国で公開される。
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