『LOOPER/ルーパー』ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
今回紹介する注目俳優は、『LOOPER/ルーパー』のジョゼフ・ゴードン=レヴィット。とはいえ、同作のジョセフはいつもとはちょっと違う顔になっている。ブルース・ウィリスと2人1役という設定で、30年後の自分の姿を演じる大先輩に似せるため、毎回3時間かかるという特殊メイクで変貌しているのだ。
素顔が違いすぎる2人だけに、顔面を見ているだけでは正直な話、「よくがんばったね」レベルなのだが、仕草や話し方など一挙手一投足まで研究しつくし、“ブルース色”に染まったジョゼフの奮闘はお見事のひと言。2044年という近未来を舞台に、現代の自分(ジョゼフ)と未来の自分(ブルース)が対峙する場面の親和性の妙は何とも言えない面白さだ。
本来のジョゼフはさがり眉にたれ目。細身で少年っぽいしなやかな体型は筋肉系イケメンがもてはやされるハリウッドでは主流派とは言いがたい。『メタルヘッド』など変化球はあれど、『(500)日のサマー』や『50/50 フィフティ・フィフティ』といった主演作を中心に文系男子のイメージが基本だ。ところが、本作でも相変わらず無敵のダイハードぶりを見せるブルースの若き日を演じて違和感なし。それでいて、単なるモノマネに終わらず、主人公ジョーとしても存在してみせる。
さすが、5歳の頃から子役として活躍してきた若きベテラン。『インセプション』でクリストファー・ノーラン監督の大のお気に入り俳優となり、続いて『ダークナイト・ライジング』でも重要な役柄を託されているし、本年度オスカー最多12部門ノミネート作『リンカーン』にはダニエル・デイ・ルイス扮するリンカーン大統領の息子役で出演している。
25年以上の長いキャリアを誇るが、一時休業して名門コロンビア大学で学んだ秀才でもある。その地アタマの良さで、自分の魅力を最大限に引き出す術を心得ている。彼の武器の1つは、ストレッチの効く表情筋。ちょっと目元に力を入れるだけで、あら不思議。シャープでハードボイルドなイメージに。眉尻を下げてクシャッとした無防備な笑顔の愛らしさといったら……! と思えば、次は凍てつくような冷徹さ、誘うような艶めかしさ、と適材適所で表情を変えてくる。2月に32歳になるこの“カメレオン”は今後どう進化していくのだろう? 本気を出したら、すごい二枚目に化けそうだ。
ちなみに『LOOPER/ルーパー』出演者ではポール・ダノも要注目。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でデイ=ルイスと共演というジョゼフとの共通項もあり、現在主演作『ルビー・スパークス』が公開中。こちらもクセ者俳優として、将来が楽しみな有望株。(文:冨永由紀/映画ライター)
『LOOPER/ルーパー』は丸の内ルーブルほかにて全国公開中。
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