家族とは何か? 移民政策の“すき間”に落とされた家族のドラマから見えてくるもの

#ジャスティン・チョン#ブルー・バイユー#社会派#移民問題

ブルー・バイユー
(C)2021 Focus Features, LLC

2021年カンヌ国際映画祭に出品され、8分間におよぶスタンディングオベーションで喝采を浴びた愛と感動の物語『ブルー・バイユー』。ムビコレでは、ジャスティン・チョン監督のインタビューを掲載中だ。

・『ブルー・バイユー』ジャスティン・チョン監督インタビュー

「これは韓国だけの問題じゃない」

韓国で生まれ、わずか3歳で遠くアメリカに養子に出された青年が、自身は知る由もない30年以上前の書類不備で国外追放命令を受け、2度と戻れない危機に瀕する。アメリカの移民政策で生じた法律の“すき間”に落とされてしまった彼は、愛する家族との暮らしを守ることができるのか? 不器用な生き方しかできない男、大きな愛で支えようとする女、義父を失う不安を抱える少女。突然の不幸に揺れ動く家族を美しい映像と共に力強く描く。

この作品のテーマについて、「家族とは自らの意思で選ぶもの」ということを描きたかったと答えるチョン監督。劇中のセリフ「僕たちは見た目も違うし血縁もない、それでも君を選んだ」を引用しながら、「つまり家族の絆においては、血縁よりも選択という行為の方が強いということ。それは私から観客への問いでもあり、全編を通して投げかけている問題なんだ」と続けた。

また彼は、本作がアメリカの移民政策の問題を扱った映画である一方、「私はただ、一家族の物語を伝えるだけなんだ」と話す。「強制送還にも賛否両論ある。とりわけ今回のように、国外からの養子縁組で金銭が絡んだ場合はなおさらだよ。養子縁組後に国のサポートが受けられず、米移民・関税執行局に国外追放される事例すらある。現実的に多くの事が起きているけど、観客の考えを誘導する気はない」。

現実に起こり得るこの映画のような出来事について、「本当に心が痛むよ。アイデンティティに悩みながら育ち、祖国だと思っていた国に追い出され、挙句の果てに自分は米国人ではないと宣告される。想像すらつかない心揺さぶられる出来事だ」と話すチョン監督。「今回、私はこの問題と出会って学び始め、広く人々にも知ってもらうために映画を作ろうと思ったんだ」。

チョン監督自身も、主人公と同じ韓国系アメリカ人である。「韓国系米国人の養子を私は深く思ってる──まるで兄弟姉妹と同じようにね。でも、これは韓国だけの問題じゃない。インドや中国、アフリカ、メキシコなど世界中から養子縁組される子どもたちがいるんだ。だから本作が問題提起のきっかけとなることを願ってる。そうなれば、本当に素晴らしいことだよ。この映画にその力があれば、人々にアートという枠を超えて大いに前向きなものをもたらすと思ってる」。本作を通じて世間の人々に気づきを促し、養子となった人たちの声を代弁できたら、と話してくれた。ジャスティン・チョン監督のインタビュー全文はこちらから。