この美しいひまわり畑はロシア軍が侵攻するウクライナで撮影…悲恋の名作『ひまわり』緊急上映中
イタリアを代表する名優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが共演した第二次世界大戦と悲恋の物語『ひまわり』(70年)。今回のロシア軍によるウクライナ侵攻を受けて『ひまわり 50周年HDレストア版』が緊急上映されることが決定した。
問い合わせ殺到 当初の10倍超の劇場・自主上映が決定
本作は、『靴みがき』(46年)や『自転車泥棒』(48年)などを手がけた名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督による悲恋の物語。互いに思いながらも戦争によって引き裂かれた夫婦の姿を、ヘンリー・マンシーニによるあまりにも有名な甘く切ないテーマ曲に乗せて描き出す。
物語の舞台は第二次世界大戦下のイタリア。ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、美しいナポリの海岸で恋におち、結婚する。その後、アントニオは厳しいソ連の最前線に送られ行方不明になってしまうが、ジョバンナは何年経っても戻らない夫のことを生きていると信じて疑わない。終戦後、手がかりもないままアントニオを探しに単身ソ連へ渡るジョバンナ。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは、少女のように可憐なロシア人女性マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)と結婚し、子供にも恵まれた幸せなアントニオの姿だった。すべてを察したジョバンナは、よろめく足どりのまま1人イタリアへ帰る。心にぽっかり穴が空いてしまった日々を送るジョバンナ。そんな時、突然アントニオが彼女の元を訪れる。心揺れ動くなか、彼女は運命の決断を下す…。というストーリーが展開される。
有名なひまわり畑のシーンは、ウクライナの首都キエフから南へ500kmほど行ったヘルソン州で撮影されたものだと言われている。ひまわりはウクライナの国花でもあり、ロシアによる侵攻が始まるとSNS上ではひまわりの絵や写真をアップし、ウクライナの安全と平和を祈る投稿が相次いだ。
戦争に引き裂かれた夫婦を描いた本作中には「イタリア兵とロシア兵が埋まっています。ドイツ軍の命令で穴まで掘らされて。ご覧なさい、ひまわりやどの木の下にも麦畑にもイタリア兵やロシアの捕虜が埋まっています。そして無数のロシアの農民も老人、女、子供…」というセリフが。あたり一面に広がる美しいひまわり畑と、戦争の残酷さの対比が胸を苦しめる場面がある。
今、あらためて戦争の恐ろしさと悲しみを伝える本作のレストア版が、先日緊急上映決定されることが発表されるや、連日、全国の劇場ならびに自主上映主催団体やTV局から問い合わせが相次ぎ、当初の約10倍以上の劇場・自主上映が決定。「何かできることがあれば」と上映に寄せる思いが連鎖している。
3月12日より上映が始まったキネマ旬報シアターでは、連日多くの来場者が見え、3月15日は平日にも関わらず満席に。都内での上映も決定しており、3月18日からはkino cinéma 立川髙島屋 SC館、3月25日からは新宿武蔵野館にて上映が始まる。上映で得た収益の一部は、今回の戦禍における人道支援のため寄付に充てられる予定だ。
『ひまわり 50周年HDレストア版』は全国順次上映中。
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