都内で開催中の「TBS ドキュメンタリー映画祭 2022」で3月20日、ドキュメンタリー映画「池袋母子死亡事故『約束』から3年」が上映され、被害者遺族の松永拓也さんが「命を絶とうかとすごく迷った」と当時の胸中を告白した。
・世間に衝撃与えた池袋暴走母子死亡事故、遺族と上級国民の壮絶な3年間に迫る『池袋母子死亡事故「約束」から3年』
被害者遺族と上級国民の3年間を取材した迫真のドキュメンタリー
2019年4月、東京・池袋で高齢ドライバーが運転する車が暴走し、母子がはねられ死亡、9人が重軽傷を負った事故が起こった。“上級国民”への誹謗中傷、遺族の再発防止への願い、すれ違い続ける両者…。本作は、社会に衝撃を与えた暴走事故を3年にわたり追い続けたドキュメンタリーとなる。
守田哲監督は、普段は社会部で働く記者。ドキュメンタリーを撮ろうと思ったのは「交通事故の歴史の中にしっかりと刻み込まねばならない事案であると感じた。私の仕事は遺族の悲しみを伝えて社会に同情させることではない。松永さんは特別休暇制度など、具体的に社会をより良くしようとする仕組みづくりを提案していた。その姿を見て、取材せざるをえなかった」と話した。
松永さんは守田監督と接触した際「メディアスクラムの問題もあり、記者の方が怖かった。最初は警戒していた」という。その後「カメラに映っていない部分も熱心に取材してくれて、信頼関係ができていった。もちろん関係性が壊れそうになることもあったけど、身を粉にしてよく3年間も熱心に取材してくれた。感謝しています」と守田監督に思いを伝えた。
事故発生直後、妻の真菜さんと娘の莉子ちゃんの棺を前にして「命を絶とうかとすごく迷った」と松永さん。そこから思い直し、「2人の命を無駄にしない。この現実を多くの人に見てもらって、知ってもらい、1つでも事故を防げたら、胸を張って2人に会える。その思いが多くの方に伝わって、誰しもが被害者にも遺族にも、加害者にも加害者家族にもならない社会に、少しずつでもいいからつながってほしい」と訴える。
続けて「刑事裁判では“車の不具合か”、“ブレーキとアクセルの踏み間違いか“どうかが争点だった。民事裁判では加害者の病気と事故の因果関係が争点になってきている。ただこれは加害者を追い詰めるのではなく、どうやったら事故を防げるシステムを作れるか、そういう議論に進んでほしい。この3年間、交通事故を防ぐ活動をして参りましたがこれからも変わらずやっていく。それは2人と最初にした約束ですから。それはブレない」と語った。
松永さんは現在、関東交通犯罪遺族の会(通称、あいの会)の副代表理事を務める。今後も「あいの会のみんなと活動していくので応援していただければ」と述べた。また、同会の代表理事である小沢樹里は「交通事故では、加害者になるのも被害者になるのも一瞬です。もし当事者になってしまったら、覚えていてほしいのは1人ではないということ。支援者が必ずいて、届けられることがある。より早く支援を受けられる社会の仕組み作りを続けていきたい」と語った。
「TBSドキュメンタリー映画祭2022」はヒューマントラストシネマ渋谷にて3月24日まで開催中。他、全国順次開催。
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