3月27日(現地時間)に米ロサンゼルスで実施された第94回アカデミー賞にて、国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』の原作を収録する村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」が重版を決定し、単行本・文庫をあわせた累計部数で100万部を突破したことが分かった。発行元の文藝春秋が公表した。
・『ドライブ・マイ・カー』濱口監督、喜び爆発! アカデミー賞国際長編映画賞を受賞
映画『おくりびと』(08年)以来、13年ぶりに国際長編映画賞を獲得した『ドライブ・マイ・カー』は、濱口竜介監督が短編小説集「女のいない男たち」を読み込み、脚色して実写化した一作。
過去に濱口監督は「同短編集に入っている『シェエラザード』や『木野』といった話も参考にしました。他にも、村上春樹さんの長編は全部読んでいるので、そのときに受け取ったもの、自分の中に蓄積されていたものは反映されていると思います。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は村上春樹さんの小説の見取り図というかエッセンスの詰まった作品だと思っていて、今回もすごく意識をしていました。結果、家福がいろんな人に会って最終的にたどり着く場所がある、という巡礼にも似た形ができあがったのかなと。その他にも『翻訳夜話』、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』などヒントになりそうなものは読むようにしていますし、とても参考になりました。原作ファンも数多くいらっしゃる方ですので、村上春樹作品の世界観を踏襲したいという思いがありました」と語っていた。
また、変更や脚色はどこまで許容されるかという問いに対して「原作から受け取ったものや原作の核だと思っている部分には絶対に沿わなくちゃいけないし、反対にその核の部分に沿ってであれば変えて良いと思っています。ただ、大前提として原作者の許諾の範囲で。今回の場合は、映画化のお願いをするときに方向性を提示した上で、ここから変えるかもしれない、ということも含めて許諾をいただいていました。その分、信頼をしていただいたからには踏み外してはいけないと思っていました」と述べていた。
村上春樹は、1949年、京都市生まれの小説家。早稲田大学文学部演劇科卒業。1979年に「風の歌を聴け」(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に「羊をめぐる冒険」(野間文芸新人賞)、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(谷崎潤一郎賞)、「ノルウェイの森」、「ねじまき鳥クロニクル」(読売文学賞)、「海辺のカフカ」、「1Q84」(毎日出版文化賞)、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」、「騎士団長殺し」など。他に「一人称単数」などの短篇集やエッセイ集など多くの著作や翻訳書がある。
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