「肌を重ねるときは、体がぶつかり合う音や声のイメージが大きい」…失恋バーのMIYAMUが指摘
枝優花監督&WEB小説家MIYAMU登壇『パリ13区』特別試写会
ミレニアル世代の男女4人の孤独や不安、愛やセックスにまつわる人間模様を描き、2021年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、ジャック・オディアール監督×セリーヌ・シアマ脚本の話題作『パリ13区』が4月22日に公開される。4月9日の特別試写会では、『少女邂逅』で知られる映画監督で写真家の枝優花と、WEB小説家・占い師で「失恋バー」では多くの恋愛相談に応じてきたMIYAMUがゲスト登壇し、観客を巻き込んだ熱い“恋愛相談会”となった。
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大きな拍手に包まれ登壇した枝監督とMIYAMUは、まず本作品について語った。
枝監督は、本作品が70歳になるジャック・オディアール監督、43歳のセリーヌ・シアマ、さらに一回り下のレア・ミシウス共同脚本という世代を超えたタッグの効果を実感した様子。
「私(94年生まれ)は主人公たちの世代に近いので共感できました。今っぽい部分もあれば、普遍的な恋愛の部分も押さえている。年の差で組んだことによって幅広い世代の方が共感できる作品になっているのではないかと思いました」
そんな作品の普遍性についてMIYAMUも同調しながら、次のように本作品への共感を示した。
「フランス映画というと構えて見てしまうのですが、本作品に関しては、分かる! どの国でも一緒なのかもしれないと思えました。映し出される情景もいい意味でパリ感がないので、物語がすんなり入ってきて消化しやすい。あまり接点がない人でも、見てみると「分かる!」という波が広がっていくのではないかと思いました。女性から見たら『なんやこいつ』と思われそうな男性キャラのカミーユも、彼なりの“好き”が分からないまま様々な出会いがあって、『一人でいるとき誰を思い返すんだっ け』ということに立ち返ったんですよね」
枝監督は、『燃ゆる女の肖像』監督として注目を集め、本作品の共同脚本を務めたセリーヌ・シアマのファンだという。
「今後も映画を撮っていく中で変わらないであろう、彼女の作家としての眼差しが好きです。人に対し ての“枠組み”みたいなものには興味がなく、一人一人の“人間”をちゃんと描く。なので、今回の映画も楽しみにしていたのですが、その眼差しが若者を描く中にしっかり入っていました。信用できるし心地よかった。それを巨匠が演出するという面白さもありましたね」
本作品がモノクロの映像で描かれている点について話題が及ぶと、枝監督は、映画の作り手の視点で興味深い効果を明かした。
「様々な人種がいるパリの若者たちを撮るのは少し難しい。カラーであれば、肌の色の違いで、 照明やグレーディングなどの調整が必要になるが、モノクロで撮ることによって、その情報が削ぎ落とせる。人種の枠組みを取っ払い、一人の人間として見るようにできるのだと思います」
さらにMIYAMUも興味深い分析を加えた。
「(ベッドシーンでは)モノクロがゆえのリアルさが伝わってきました。現実で肌を重ねるときは、私たちは視覚以外の情報が多い。だから映画の中でも、肉体がぶつかり合う音や声など、自分たちの中にある知見が映画の物語と繋がりやすいんじゃないかと思いました」
「もう恋なんてしない」という相談者に「いずれ絶対天から降ってきたりする」
トークイベントの後半では、事前にお客さんから募った恋愛エピソードを取り上げた。
「元彼が忘れられず、もう誰も好きになれない気がして不安になる」と悩みについては、次のように答えた。
MIYAMUは、「一生忘れられない恋ができたなんてうらやましいほど。いずれ絶対天から降ってきたりするから、閉じこもらないことが大切」とアドバイス。
すると枝監督は、「私は逆に、『もう恋愛したくない、人を信じられない』と心を閉じてしまうタイプかも……」と意外な一面を見せた。
「SNSでの出会いを肯定しづらい」という悩みに対しては、MIYAMUが「人となかなか会えないコロナ禍、実際に顔を合わせる時間よりもSNSを見る時間の方が長くなってきている状況。SNSの方が現実よりリアルということは起き得るというか、起きてきているのかなと思います」と、日常的に恋愛相談に乗っている実感を語った。
最後に、観客の皆さんに対して MIYAMUは次のように本作品をアピールした。
「僕は、映画の中で描かれる、(大切な人が)部屋に“いた時”と“いなくなった今”の対比が自分の体験にも通じていて、そこから共感が生まれました。今日見に来た皆さんはぜひ、こういうところが良かったよ、こういうことを思ったよというのをつけて口コミで広げていただけたらなと思います」
一方、枝監督は、「監督や脚本家の作家性が良い感じに化学反応を生んでいました。この作品をきっかけに監督たちに興味を持ってもらい、過去作を掘っていくことでさらに広がっていけばいいなと思いました」と映画愛溢れるコメントを残した。
70歳・鬼才ジャック・オディアールが洗練されたモノクロで魅せる!
本作品は、今年70歳を迎える鬼才ジャック・オディアール監督が、『燃ゆる女の肖像』で一躍世界のトップ監督となった現在43歳のセリーヌ・シアマと共同で脚本を手がけた“新しいパリ”の愛の物語。
舞台となるパリ13区は、高層住宅が連なり多文化で活気に満ちた現代のパリを象徴するエリア。コールセンターで働くエミリーと高校教師のカミーユ、32歳で大学に復学したノラ、そしてポルノ女優のアンバー・スウィートという若者たちが織りなす不器用で愛おしい恋愛模様が描かれる。
原作は、今最注目の北米のグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネの3つの短編。『モード家の一夜』や『マンハッタン』にオマージュを捧げながら、洗練されたモノクロームで映し出す、誰も見たことのなかったパリがここにある。
『パリ13区』は、4月22日に公開される。
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