『レオン』リュック・ベッソン監督も強姦容疑で捜査
『燃ゆる女の肖像』などで知られるフランスの女優、アデル・エネルが映画界からの引退を表明した。今後は舞台を中心に活動する彼女は、フランス映画界の差別的な体質に失望し、自ら距離を置くことを選択したという。
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エネルはドイツの「FAQ」誌のインタビューで「私は映画女優ではありません。『燃ゆる女の肖像』の成功で、映画での仕事がより知られるようになりましたが、今の私は舞台の仕事だけ、映画はもうやりません」と語った。それは「政治的理由」だという。「映画産業はとんでもなく反動的で、人種差別的で、家父長制的だからです」とエネルは語る。
2002年、14歳で映画『クロエの棲む夢』でヒロインを演じてデビューしたエネルは、同作のクリストフ・ルッジア監督に3年間にわたってセクシャルハラスメントを受けていたことを2019年に明かし、告発の理由について「業界全体の意識を変えたいから」と語っていた。
エネルは今、「私は映画界で仕事をし、物事を変えようとしました。たとえば、映画における女性の視点です。内側から変えていこうとしました。MeToo運動や女性について、人種差別に関しては、映画業界は非常に問題があります。私はもう関わりたくないのです」と言う。
きっかけとなったのはブルーノ・デュモン監督の新作への出演依頼だった。SF映画で「最初は楽しそうだと思った」と言う。「問題は、その楽しげな表側の裏に性差別や人種差別の暗い世界があったことです。脚本にはキャンセル・カルチャーや性暴力についてのジョークが満載でした」。監督との対話も考えたが、被害者や立場の弱い人々を笑い物にするような内容は意図的なものだと感じた。
さらに「意図は、白人のみのキャストでSF映画を作ること、つまり人種差別的な物語を作ることでした。それを支持する気にはなれず、参加をやめました」
このまま映画界に残り続けたら「男性優位で家父長制的な業界に対するフェミニストの保証のような存在になったかもしれない」と言うエネルだが、完全に映画界から撤退するのではなく、差別的な業界と「同じような映画を作らないということ」だという。「ジゼル・ヴィエンヌ、セリーヌ・シアマ、あるいは他の闘う“女性”監督たちの作品に参加するか? もちろんです!」
フランスの映画界は、映画史上初の女性監督のアリス・ギイをはじめ、アニエス・ヴァルダやクレール・ドゥニ、『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ、『ベルイマン島』のミア・ハンセン=ラブや昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『TITANE/チタン』のジュリア・デュクルノーなど多くの才能ある女性監督を輩出し、女優たちも監督業に積極的に進出するなど、女性が活躍してきた歴史がある。
その一方で、年若い新進女優たちが男性監督から性的搾取や暴行を受けたとして、リュック・ベッソン、ジャン・クロード・ブリソー(『ひめごと』)といった監督が告発され、撮影時の常軌を逸したハラスメントを主演のレア・セドゥーに告発された『アデル ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督もいる。
「社会を構造的に動かすのは社会的闘争だけです。私の場合、(映画業界を)去ることが戦うことになるように思えます。ここから完全に離れることで、別の世界、別の映画に参加したいのです」とエネルは語る。彼女の決断にフランスの映画界はどう応えるのか。エネルと彼女の同志たちが切り拓く世界でどんな芸術が生まれるだろうか。
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