75歳以上の高齢者が自死を選ぶ権利を保障・支援する社会を描く、倍賞千恵子主演の映画『PLAN 75』が第75回カンヌ国際映画祭で5月20日に公式上映された。現地からは「表面上は穏やかに見えるが、不必要と見なされた人々を見捨てる社会に対してしっかりとメッセージを伝え、観る者の心をざわつかせる」、「倍賞千恵子の演技は、間違いなく見る人の琴線に触れるだろう」、「繊細な脚本と、それを見事に体現したすばらしい演技で、日本映画として今年のカンヌ映画祭に立派な足跡を残した」、「今年のカメラ・ドールの最有力候補の一つ!」「カンヌの隠れた名品」など絶賛の声が相次いでおり、5月27日に発表される「ある視点」部門受賞への期待も高まっている。日本人監督の作品が「ある視点」部門に出品されるのは、黒沢清監督『散歩する侵略者』(17年)以来5年ぶり。日本人女性監督としては『あん』(15年)の河瀬直美監督以来2人目となる。
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磯村勇斗「とても感無量です」カンヌ上映に感慨
上映後には日本メディア向けの記者会見が開催され、多くの記者たちが集まった。早川千絵監督は「今回上映していただいたドビュッシー劇場は音の環境が良いと聞いていたのですが、初めて大きなスクリーンで素晴らしい音響の中で上映していただき、それに立ち会うことができてとても感無量です」と感慨深げに振り返る。
磯村も「世界の人たちと一緒に映画を見ることが初めてだったのですごく光栄でした。観客の反応を見ながら、映画を観ていたので少し緊張もしましたが、非常に良い経験をさせてもらえたと思います」と感謝の言葉を述べた。
フィリピン人の女優、ステファニー・アリアンも「多くの方々が心を込めて作った作品でカンヌ国際映画祭に参加できたことに大変感謝しています」と思いの丈を伝えた。今回は残念ながら参加できなかった倍賞への思いを尋ねられた早川監督は「すぐにでも電話をして声を聞きたいですね。上映中も、撮影時の倍賞さんのことを思い出しながら見ていました。ミチを演じていただき、ありがとうございますという思いでいっぱいです」と語った。
磯村は「倍賞さんとの共演シーンは少なかったのですが、目が魅力的でした。役を超えて、倍賞さんが今まで生きてこられた全てがミチという役に投影されているように感じるほど、とても自然体で、醸し出す空気が人生を物語っていました」と倍賞への尊敬の念を語った。共演シーンはなかったが、同じ撮影現場に立ち会えたステファニーは「一緒にお昼ご飯を食べたり、写真を撮っていただきました」と思い出を語った。
本作が長編映画デビューとなる早川監督の印象について、磯村は「演出が丁寧で俳優に寄り添ってくれる方。俳優のアクティングスペースに入って、監督自身が実際に動作を見せてくれ、時にはディスカッションを交わしながらの撮影でした。安心して信頼できる現場だったと思います」と振り返る。
ステファニーも「監督が何を求めているのかをはっきりと言ってくれ、私の意見もしっかりと聞いてくださったので、とてもやりやすかったです。また、私の母国であるフィリピンの文化に対して、リスペクトを持って描いてくれたことにも感謝しています」と述べた。
カンヌ国際映画祭に参加したいと長年思い描いていた夢が叶った磯村は「カンヌに来て、映画を愛している人たちが世界にはこんなにもたくさんいるんだなと改めて感じることができました。そういう方々を見て、もっと自分も頑張れると思えましたし、これからも映画に対して愛を持って取り組んでいきたいと思いました」と今後の俳優人生への決意をにじませた。
『PLAN 75』は6月17日より全国公開。
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