『性の劇薬』を超えるメディアミックスで話題の野心作
R18+で描かれてBL界を震撼させたBLコミックスの実写化映画『性の劇薬』のフューチャーコミックスと、『百円の恋』『アンダードッグ』のスタジオブルーがタッグを組んだ『恋い焦れ歌え』が5月27日に公開される。
・BLに必要不可欠なエロにも力を入れたBL映像化作品はコレ!(『性の劇薬』ほか)
主人公を演じるのは長編映画初主演となる稲葉友。彼は『春待つ僕ら』や『ずっと独身でいるつもり?』などに出演し、BL系ではFODで人気BLコミックを実写ドラマ化した『ギヴン』で村田雨月役を演じている。また、約1000人のオーディションから抜擢された『ミスミソウ』『望み』の遠藤健慎、『窮鼠はチーズの夢を見る』のさとうほなみ、『東京リベンジャーズ』の髙橋里恩らが共演する。
男に襲われた過去を持つ臨時教員の前に謎の青年が現れ…
覆面の男に襲われたトラウマを抱える青年が這い上がろうとする姿を描いており、BLそのものではないがBL系ドラマとなっている。“新メディアミックスプロジェクト”を謳い、登場人物の視点を変えて描かれるBLコミックス『恋い焦れ歌え~R.I.P~』も発売。漫画版はBLコミックス『鵺の啼く夜に』『春の修羅』のmisoが手掛けている。
この『恋い焦れ歌え』は最近人気の高まっているBLドラマとは一線を画す、なかなかに攻めた闇系のドラマだ。主人公の桐谷仁は収入格差のある妻・仁美と二人で暮らしながら、正規雇用の道が開かれた清廉潔白な小学校臨時教員。覆面の男に襲われて身も心も凌辱されて深い傷を抱えながら変わらぬ日常を送っていた仁だが、謎の青年・KAIが現れて、再び彼の日常が崩れ始める。KAIは仁の心の傷を容赦なくえぐり、それをラップで表現するように執拗に挑発してゆく。
痛々しく重い役柄を熱演する稲葉の演技は一見の価値あり
目をそむけたくなるほど衝撃的で痛々しい場面もあり、一般的な萌えやキュンを求めて見ると、思っていたのと違う…となってしまうことだろう。仁が受ける性暴力のシーンは生々しさがあり、KAIからの挑発を受けるシーンも追い詰められる仁は見ていられなくなるほどしんどさが漂っている。そして、仁とKAIは独特の関係性で簡単に理解するのは難しいと言える。この世界観にどっぷりとハマることができれば、頭で理解するというよりも感覚でわかるようになるんじゃないだろうか。
それほど説得力のある力演を主演の稲葉友は見せてくれた。仁として心に受けた傷、そのトラウマと向き合おうとする壮絶な闘い、KAIとの葛藤と愛憎を文字通り体当たりで体現している。こういうと上から目線のようで申し訳ないが、役者として大きく成長したなと感じさせられた。
気軽におすすめするのは躊躇する重さがある内容だが、稲葉の力演と成長は一見の価値がある。今後の稲葉にも期待を込めて、注目して欲しい作品だ。闇BLが好きな方も見てみてはいかがだろうか。(文:牧島史佳/BLライター)
『恋い焦れ歌え』は、2022年5月27日より全国順次公開。
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