ヴィスコンティ、パゾリーニ、フェリーニなど、多くの巨匠が名を連ねる、イタリア映画のクラシックはたくさんありますが、ラテン系のノリだけではない、意外と知らされていないリアルなイタリアの姿。長年イタリアに滞在して映画製作を続けてきた筆者が、近年日本で公開されているイタリア映画を紹介しつつ、『ゴッドファーザー』のロケ地やテーマなどから、イタリアの南北関係、メンタリティ、文化、社会背景などを読み解いていきます。
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イタリアの太陽が演出するアフリカの空気感
イタリアで映画といえば、撮影所のチネチッタがあるローマがまず思い浮かぶでしょう。ミラノやアマルフィなどは日本でも有名ですが、実はロケ地でよく選ばれているのは南の島シチリア。シチリア舞台の映画はたくさんありますが、それだけ魅了されるものが多いのでしょう。
本土から来るイタリア人でも別世界と感じてしまうという島の魅力。これはこの島ならではの人の優しさが引きつけているように感じます。困っていると案内役を買って出てくれたりする優しさはもちろんたっぷりとありますが、この島で一番感じるのが、『ニュー・シネマ・パラダイス』にも描かれている“厳しさのなかにある優しさ”。表面的な優しさだけではない温かさが、ここにはあるのです
そんな情の厚さと義理深さがシチリア人らしさであり、友のために闘うシチリアマフィアたちの姿でもあります。あるいは、マフィアの本家「コーザ・ノストラ」という組織をもとに描いたとされる『ゴッドファーザー』シリーズ。いまでこそシチリアのマフィアは衰退してきたと言われるようになりましたが、シチリアには『ゴッドファーザー』の主人公の故郷とされるコルレオーネ村があるのです。
そして何よりも大自然と青々とした海。イタリアの燦然と輝く海は、もしかしたらこの島の海のイメージが強いのかもしれません。それは太陽の光の強さに比例して青さを増すようで、正に映画のタイトルにもなった『グラン・ブルー』そのもの。舞台となったタオルミーナの海は、崖の上にある街まで足を運ぶと、息を飲む絶景をのぞむことができます。
シチリアは地理的にはアフリカに程近く、もう少しアフリカ寄りのランペドゥーザ島には、『海と大陸』という映画でも描かれているように主にチュニジアやリビアからの難民がボートなどで渡ってきます。ランペドゥーザほどではないにせよ、シチリアにも難民が漂着するようです。そして、その距離の近さゆえか、街を歩いていると、アフリカの空気を感じることがあります。太陽の光の感じと気候が似ているせいなのかもしれません。
いかにもイタリアらしい海の景色とアフリカの空気感。南イタリアの魅力が満載だからこそ、映画の舞台にも数多く登場するのでしょう。(文・写真:池田剛/イタリア滞在歴11年、映画製作者)
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