パルムドールは拝金主義を痛烈に描く『Triangle of Sadness』

第75回カンヌ国際映画祭が28日(現地時間)に閉幕を迎え、リューベン・オストランド監督が拝金主義を痛烈な笑いで描いた『Triangle of Sadness(原題)』が、最高賞のパルムドールに輝いた。

オストランド監督は2017年の『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続く、2度目のパルムドール受賞となった。

最優秀男優賞は是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』のソン・ガンホが受賞し、「ある視点」部門に長編映画デビュー作『PLAN 75』を出品した早川千絵監督には新人監督賞にあたるカメラドールのスペシャル・メンションが贈られた。

コンペティション部門には21本が出品され、8つの賞が贈られた。

『ベイビー・ブローカー』ソン・ガンホが最優秀男優賞

是枝裕和監督が韓国で撮った『ベイビー・ブローカー』のソン・ガンホが最優秀男優賞として名前が呼ばれると、瞬間には会場にいた『Decision to leave(原題)』のパク・チャヌク監督とパク・ヘイルも駆け寄り、祝福する様子が見えた。

映画祭で最初に名前を呼ばれて登壇したのは、『PLAN 75』の早川千絵監督だった。コンペティション部門ではないが、新人監督賞に当たるカメラドールのスペシャル・メンションという栄誉に輝き、カメラドールは米国女優でエルヴィス・プレスリーの孫でもあるライリー・キーオが、『War Pony(原題)』で受賞した。

審査員賞を受賞したのは2作品。『Le otto montagne(原題)』のシャルロット・ファンデルメルシュとフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンはカンヌから自宅へ戻り、土曜の昼に子どもを入浴させていた時に連絡を受け、急きょ飛行機に乗ってカンヌに戻ってきたという。同じく受賞したイエジー・スコリモフスキー監督は、映画に出演した6頭のロバの名前を1つ1つ呼んで感謝を伝え、最後にロバのいななきでスピーチを終えた。

グランプリも2作の受賞となった。フランスのベテラン女性監督、クレール・ドゥニの『Stars at noon(原題)』、と、ベルギーの若手監督ルーカス・ドンの『Close(原題)』。ドンは2018年の長編デビュー作『Girl/ガール』でカメラドール、ある視点部門俳優賞、国際映画批評家連盟賞、クィアパルム賞を獲得した俊英だ。

是枝裕和監督はエキュメニカル審査員賞を受賞

クロージング・セレモニーに先駆けて是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』は独立賞の1つ、エキュメニカル審査員賞を受賞した。キリスト教系の映画団体が「私たちの存在の精神的側面に最も触れる作品」を選ぶもので、昨年の受賞作は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』だった。

映画祭の75周年を記念した特別賞が用意され、映画祭の常連であるベルギーのダルデンヌ兄弟の『Tori et Lokita(原題)』が受賞した。

最高賞を再び手にしたオストランド監督は、前回受賞時にも観客席に呼びかけた「幸せの雄叫び(primal scream of happiness)」を今回も要求。パンデミックが収束しつつあり、ほぼ通常モードで開催された映画祭を祝福するようにセレモニーは幕を閉じた。

コンペティション部門の授賞結果は以下の通り

パルムドール
『Triangle of Sadness(英題)』ルーベン・オストランド

グランプリ
『CLOSE(原題)』(ルーカス・ドン)
『Stars at noon(原題)』(クレール・ドゥニ)

監督賞
パク・チャヌク(『Decision to leave(原題)』

最優秀女優賞
ザール・アミール・エブラヒミ(『Holy Spider』

最優秀男優賞
ソン・ガンホ(『ベイビー・ブローカー』)

脚本賞
タリク・サレ(『Boys from Heaven(原題)』)

審査員賞
『Le otto montagne(原題)』(シャルロット・ファンデルメルシュとフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン)
『EO(原題)』(イエジー・スコリモフスキー)

75周年記念賞
『Tori et Lokita(原題)』(ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟)

カメラドール(新人監督賞)
ライリー・キーオ(『War Pony(原題)』
同スペシャル・メンション
早川千絵(『PLAN 75』)

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