「もう、百瀬役は早見あかりしかいない!」
ももいろクローバーの元メンバーである早見あかりをヒロインに迎えて、中田永一原作による恋愛小説を映画化した『百瀬、こっちを向いて。』。
プロデューサーの明石直弓氏はノボルという主人公よりも百瀬というヒロインに着目。好きな人と一緒にいる為ならば傷つくことさえいとわない、という一途な想いを持つヒロインの恋愛物語を作りたいと考えた。。企画書には先方がイメージしやすいキーワードを盛り込むことにしているという明石氏は、「往年の角川映画のように旬の美少女を主演にし、それでいて大人も楽しめるしっかりとした物語を作りたい」と提案。見事に企画は通り、映画化が本格的にスタートした。
まずはそのヒロインをつとめる“旬の美少女”に誰を起用するか、である。当然というべきか、出資者からは実績のある女優の名前が挙がる。しかし、みずみずしい恋愛物語において、ヒロインには透明感を求めたいところ。ここは、これから活躍が期待されるフレッシュな人物でいくべきではないか、と思案していた。そんなとき、耶雲哉治監督から『早見あかり』の名前が挙がった。明石氏は「聡明な美少女」という印象を持っていたが、資料として探し出した映像の数々を見れば見るほどに早見あかりに興味がわいていった。
小説のなかの百瀬は活発な女の子。明石氏はそこがアイドル時代の早見あかりとの共通項ととらえていたが、監督は早見の時折見せる寂しげな表情に魅力を感じていた。次第に明石氏も早見の多面性に気づいていく。明石氏のなかで早見の存在はどんどん大きくなり、「もう、百瀬役は早見あかりしかいない!」となったのだとか。
明石氏は自己分析して、原作に惹かれたときもそうであったように、仕事においても「とにかく好き!」という気持ちが大前提になっているという。好きだから映画化したい、好きだからキャスティングしたい、という個人的な思いの強さは、ともすると大きなプロジェクトも左右する動力となっているのかもしれない。
筆者は原作の百瀬に“したたかな女子っぽいかわいらしさ”を感じたが、明石氏は“一途で凛とした強さ”を大きく感じており、その点も早見と重ね見ている。早見あかりでなければ百瀬は作り上げられなかったというほど早見の出演に大満足しているという。…後編へ続く(文:入江奈々/ライター)
『百瀬、こっちを向いて。』は全国公開中。
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