武骨さのなかに繊細な優しさをのぞかせる
ジョシュ・ブローリン
いかつい顔つきの大男。つまり日本ではあまり女性から人気を得られない典型だが、武骨さのなかに繊細な優しさがあるジョシュ・ブローリン。日本のコミックが原作で2004年にカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した韓国映画のリメイク『オールド・ボーイ』の主人公が彼だと聞いたとき、納得できるようなできないような気分になった。
韓国版主演のチェ・ミンシクに較べると、武骨なイメージとはいえ、ちょっとスマートすぎやしないか。だが、不条理な監禁状態で20年も過ごした後に突然解放され、驚愕の真相にふれる男の彷徨というのは、どこか負け犬のような影を背負っている彼にはふさわしい役どころ。さらに、スパイク・リーが監督をつとめた完成作を見れば、この起用が正解だったと納得できる物語になっている。
今年46歳。『カプリコン・1』、『悪魔の棲む家』などに出演したジェームズ・ブローリンを父に持つ二世俳優で、デビュー作は1985年の『グーニーズ』。ショーン・アスティン演じる主人公の兄でバンダナを頭に巻いた筋トレ好きの少年といえば、記憶の片隅に残像がある方も多いのでは。20代から30代にかけてはテレビシリーズや映画に脇役で出演、バツイチ同士でダイアン・レインと再婚……と、知名度はそこそこだったが、キャリアが本格的に花開いたのはコーエン兄弟の『ノーカントリー』に主演した39歳、まさに不惑を迎えようという時期だった。
続けてガス・ヴァン・サント監督の『ミルク』でアカデミー助演男優賞候補となり、オリヴァー・ストーン監督の問題作『ブッシュ』では主役のジョージ・W・ブッシュ元大統領を演じた。ロバート・ロドリゲス監督の『プラネット・テラー in グラインドハウス』や仏頂面のトミー・リー・ジョーンズの若き日を演じた『メン・イン・ブラック3』など、話題作への出演が続いたのは、風貌と年齢がマッチしたうえに長年の研鑽が結実した演技力によるものだろう。派手に見せつけはしないが、演じる人物を全身にしみ込ませて、役を生きる。ケイト・ウィンスレットの相手役をつとめた『とらわれて夏』では、『ゴースト/ニューヨークの幻』のパロディかと思うようなピーチパイ作りの場面もきっちり決める。『オールド・ボーイ』でも拘禁状態の狂気、35人を相手にワンカットでの格闘シーン、父性愛、禁断の愛、と様々な感情を演じている。…後編へ続く。(文:冨永由紀/映画ライター)
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