巨匠との再タッグが示す俳優としての真価
ジョシュ・ブローリン
役を離れたインタビューではとても気さくで、質問に対しての答えは丁寧、話も興味深い。リー監督のトレードマークであるドリー・ショット(移動撮影)は今回も登場するが、これはわざわざ頼み込んで撮ってもらったシーンだと嬉しそうに話す映像がネット上で公開されている。『グーニーズ』の思い出も楽しそうに語り、いろいろな作品や監督の名前が出てくる話しぶりから、本当に映画が好きなことが伝わってくる。
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コーエン兄弟とはその後『トゥルー・グリット』で、ストーン監督とは『ウォール・ストリート』でも再び組み、ウディ・アレン監督作にも『メリンダとメリンダ』『恋のロンドン狂騒曲』の2本に出演。同じ監督から再び声がかかることは俳優にとって最高の名誉の1つであり、数多(あまた)の名匠、巨匠に望まれる事実が彼の俳優としての真価を語っている。
そんな彼の唯一といってもいい欠点はアルコール依存の問題。08年、『ブッシュ』の撮影で滞在していたルイジアナ州のバーで乱闘騒ぎを起こして逮捕され、昨年元旦に公共の場で羽目を外しすぎて逮捕、11月にもパブの外での喧嘩など、泥酔状態での暴力沙汰や失態で何度も問題を起こしている。その結果、ダイアン・レインとも昨年離婚、彼は禁酒を誓ってリハビリ施設に入所した。
Nobody’s perfect(完ぺきな人間などいない)を体現するような人だ。10代の頃、ヘロインに手を出し、その頃の仲間が19人も命を落としたという事実、27歳の誕生日当日に母親が交通事故死した悲劇。そうした過去を積み重ねてきた彼が、内に悪魔を抱えているのは間違いない。それをさらけ出し、演技という表現を通して芸術にする。立派な人間ではないかもしれない。だが、人を感動させることと品行方正であることは何の関係もない。傷ついた魂の不完全な弱さに人々は共鳴し、かけがえのない美しさを見出すのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
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