甘くて苦いリコリス風味の青春! 70年代の空気を伝えるポール・トーマス・アンダーソン監督最新作
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『マグノリア』の監督が描く1970年代前半の青春
【週末シネマ】今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされた『リコリス・ピザ』は、『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作だ。前作『ファントム・スレッド』はイギリスの物語だったが、本作はアンダーソンのホームであるカリフォルニア州ハリウッド近郊を舞台に、1970年代前半の青春を描く。
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主人公は、サンフェルナンドバレーでカメラマンのアシスタントとして働く25歳のアラナと高校生ゲイリーだ。撮影の仕事で高校を訪れたアラナに一目惚れをしたゲイリーは積極的にアプローチし、デートにこぎつける。15歳と思えないほど物馴れて自信満々なのは、子役として活躍してきたからだ。将来に何の不安もない様子のゲイリーに気後れしつつ、アラナは彼に勧められて女優のオーディションを受けるなど、世界を広げていく。子役から次のステップへ向かう年頃に差しかかったゲイリーも、ウォーターベッドの販売という新事業に取り組み、それぞれの道を歩む2人の関係は、流れるように変化していく。
ハイムの三女と名優の息子が主演、ともに本作で俳優デビュー
主人公2人、アラナを演じるアラナ・ハイムとゲイリーを演じるクーパー・ホフマンは共にこれが俳優デビュー作。ハイムはトリオのロックバンド“ハイム”のメンバーで、アンダーソンがバンドのMVを監督した縁で、彼女を念頭に脚本を執筆したという。ちなみにバンドメンバーである姉2人と両親も本作のアラナの家族として出演している。
ホフマンは、アンダーソン監督作の数々に出演し、『ザ・マスター』でアカデミー助演男優賞候補にもなった故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子だ。アンダーソンはゲイリー役のオーディションに来る子役たちが一様に老練すぎると感じ、家族ぐるみの付き合いがあったホフマンを起用したという。ホフマンの妹2人も、ゲイリーと番組で共演する子役の少女役で出演している。
ゲイリーのキャラクターは、子役出身で映画のプロデューサーでトム・ハンクス出演作を多く手がけるゲイリー・ゴーツマンがモデルだという。劇中でのゲイリーの出演作はゴーツマンのキャリアを模したもので、ウォーターベッドなどビジネスに手を染めたのも彼の実体験だという。
ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、あの人気俳優の父も出演
映画が描く1973年当時の記憶は、1970年生まれのアンダーソンには鮮明に残っていないというが、年長のきょうだいの思い出や『アメリカン・グラフィティ』、1982年の作品になるが『初体験/リッジモンド・ハイ』にインスパイアされたという。そして『リッジモンド・ハイ』に出演していたショーン・ペンが、アラナと知り合うハリウッド俳優のジャック・ホールデンを演じる。この役はウィリアム・ホールデンを思わせ、他にもゲイリーの出演作に主演する女優はコメディ女優のスター、ルシール・ボールがベースになっているのは明らかだ。
実在の著名人を実名で演じたのはブラッドリー・クーパーだ。バーブラ・ストライサンドの恋人だった映画プロデューサー、ジョン・ピーターズをエキセントリックに演じる。ゲイリーたちがピーターズ邸を訪れるエピソードは実話を脚色したものだ。
劇中にはアンダーソンのパートナー、マヤ・ルドルフをはじめ、親族や親しい友人たちが多数出演している。とある役で、存在感を放つのはレオナルド・ディカプリオの父親、ジョージ・ディカプリオだ。
アンダーソンの作品に欠かせないジョニー・グリーンウッドの音楽とともに、70年代の空気を伝える名曲の数々が効果的だ。型にはまらない、いい意味で未熟な主演2人の演技が、甘くて苦いリコリス風味の、自由で幸せな青春を体現している。(文:冨永由紀/映画ライター)
・どこか懐かしい青春! 『リコリス・ピザ』その他の写真はこちら
『リコリス・ピザ』は、2022 年7月1日より全国公開。
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