『神々の山嶺』スケッチ画&カラースクリプト公開
第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞、フランスで大ヒットした本のアニメ化『神々の山嶺』が7月8日より全国公開される。このたび、貴重なスケッチ画やカラースクリプトが公開された。
本作品の完成を願いながら惜しくも17年にこの世を去った、谷口ジロー。「孤独のグルメ」など数々の傑作漫画を世に送り出した彼が、夢枕獏の人気小説「神々の山嶺」を00年から03年にかけて全5巻で発行した漫画が本作品の元となっている。
フランスでは翻訳版が累計38万部を売り上げ、05年にはアングレーム国際漫画祭にて最優秀デッサン賞を受賞した。谷口自身も、11年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されるほどフランスでも絶大な人気を誇る。
この伝説の漫画に魅了されたプロデューサー、ジャン=シャルル・オストレロ、監督のパトリック・インバート、大ヒットアニメーション映画『ウルフウォーカー』の製作チーム、そして谷口ジロー自身も参加し、7年の歳月をかけ映画化した。
日本人・谷口ジローをフランス制作陣がリスペクト
谷口は生前、「全身全霊を込めて描き上げた作品だからアニメーションで映画化されるのはとても嬉しい」と喜んだそうで、その反応が製作陣にとって大きな原動力となった。彼は同国の製作チームのもとを2度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていた。惜しくも完成版を目にすることは叶わなかったが、第74回カンヌ国際映画祭でプレミア上映された。
フランス300以上の劇場で公開され、大ヒットを記録。同国のアカデミー賞にあたるセザール賞では、長編アニメーション映画賞を受賞した。
アニメーション化にあたり、プロデューサーのステファン・ローランツは、「誰もが谷口ジローの作品に敬意を抱いていて、彼をがっかりさせたくない、という強い思いがありました」と語り、緻密な谷口の画力を受け継いだ写実的な表現を追求し、その真に迫ったリアルさをキャラクター造形にも取り入れていった。
谷口が描く漫画版「神々の山嶺」には、視覚以外の感覚にまで訴えようとしていた画力に読者は時が止まったように感じることもあれば、読者の脳の中で壮大なパノラマが映し出されることもある。読者はその雄大さに圧倒され、めまいすら覚えるのだ。
しかし監督は、漫画の原作は大きな指針としながらも距離を置き、エベレスト登頂に成功した人らの協力を仰ぎ、寒さの感覚、テントの中で寝たときの風の轟音、ロープの結び方、息切れなど、「リアル」を見極めるための生の情報を集めアニメーション化した。
下絵の段階から、監督パトリック・インバートにはキャラクター造形のビジョンが見えていた。
「漫画の原作はあらゆる創作の拠り所にはなったが、漫画を再現するのとは違う作業が待っていました。谷口の絵には細かいディテールが描き込まれていて、それをそのままなぞるつもりはありませんでし た。線の数を減らしたことで、かえってアニメーターは顔の表情に集中することができました。2Dでリアルな顔を描くには、目の位置などの細かい精度が要求されます。片目が少しずれているだけで観客に違和感を与えてしまいますから」
さらに、谷口とは別の構図を編み出すことにも挑戦。葛飾北斎、小津安二郎、今敏、高畑勲、宮崎駿など日本の偉大なアーティストからも大きな影響を受けならがらも、逆光や構図のバリエーションなどあらゆるテクニックを使って、自分たちの方法でスクリーンに没入できるように試行錯誤を重ね、たくさんのアイディアを試したという。
そして谷口が亡くなる直前の16年に脚本と下絵を見せることができ、「とても好意的な感想でした。そもそも彼の作品も小説の漫画化なので、翻案という作業を尊重してくれていることが伝わってきました」とプロデューサーで脚本も担当したジャン=シャルル・オストレロは胸を打たれたという。
未解決のナゾを突き止めようとする男たちの物語
本作品は、「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎を突き止めようとする男たちの物語。
その謎が解明されれば歴史が変わる──。カメラマンの深町誠はネパールで何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生の軌跡を追い始める。やがて2人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる──。
『神々の山嶺』は、7月8日より全国公開される。
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